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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > IFRSの会計基本思考① (財務会計/岩崎 勇)

IFRSの会計基本思考① (財務会計/岩崎 勇)

11/12/14

日本における会計の思考的な背景は、どちらかといえば、伝統的に製造業をベースとした産業資本主義的な思考(すなわち、産業の発展によって経済を豊かにしていこうとする思考)をベースとしたものです。これに対してIFRSにおける会計の思考的な背景は、金融資本主義的な思考(すなわち金融資本の増殖によって経済を豊かにしていこうという思考)を基礎とするものです。金融資本主義的な思考をとる米国等では、CEO等の経営者報酬が従業員の数百人分であるということがよくあります。また、金融資本主義的な思考の下では、公正価値会計が会計の中心的な考え方になってきます。IFRSは、このような金融資本主義的な思考を前提にするので、日本の思考と大きく異なることとなります。

また、IFRSの特徴の一つとして、信頼性をあまり重視していないということがあります。市場取引がある金融商品であれば、その時価評価は客観的に決まり、あまり問題はありません。しかし、市場がない金融商品は客観的にその金額を決定することができません。IFRSにおいても、従来においては、信頼性をもって測定できない金融商品は、時価ではなく、原価で評価してよいという例外規定がありました。しかし、新しい会計基準では、この例外規定を削除してしまいました。したがって今では、信頼性をもって測定できないものであっても時価で評価するという(信頼性を無視した)規定になっています。このように、IFRSは金融資本主義的な思考に基づいた公正価値会計をその中心的な考え方にしているわけですが、そこでは必ずしも信頼性を重視していないものとなっているわけです。

他方、日本の従来の会計の基本思考は、伝統的に発生主義会計や原価主義会計です。一方、IFRSの会計の基本思考は、モデルとしては全面時価会計を考えているようです。日本では、伝統的に原価主義に基づき取得した時の価格をベースにして会計処理をしていますが、IFRSでは金融商品のみならず非金融商品の代表格である事業用資産についても再評価モデルの選択適用を認めており、全面時価会計を意識しています。

利益観についても、日本とIFRSは非常に対立的です。日本では、伝統的にフローで利益計算をすることを重視しています。ここでフローとは、個々の取引のことであり、この個々の取引をベースにして、その取引を積み重ねたものを利益計算のベースとすることを重視しています。より具体的には、例えば商品を売った場合、その売り上げ(収益)から売り上げにかかった売り上げ原価部分(費用)を引いて利益を計算する(損益法)というもので、収益費用中心観に立っており、当期純利益を重視しています。一方、IFRSでは、期末の資産と負債の差額(期末の純資産)から、期首の資産と負債の差額(期首の純資産)を差し引くことで利益計算をし(財産法)、資産負債中心観に立脚して包括利益を重視しています。すなわち、増えた資本分が利益という経済学的な考え方による利益計算をベースに、会計を全部組み立てているわけです。ただし、日本は国際化の観点から、従来は純利益だけを計算・表示していましたが、今では包括利益までを計算・表示しています。

すなわち、日本の会計では、従来から収益、費用を重視していますので、実現利益という純利益を計算・表示することを重視していました。他方、IFRSでは、全面時価的な考え方で期末の評価を重視しますので、未実現利益も含めた包括利益を中心的な利益と考えています。なお、この包括利益の内訳に、純利益は入ります。日本では純利益をベースとして、それに未実現損益部分を加減して包括利益を考えますが、IFRSは包括利益を中心として、その内訳として純利益を考えます。このように、表面上は純利益や包括利益という同じ概念を同じように使いますが、基本的な考え方が全く逆になっています。

分野: 岩崎勇教授 |スピーカー:

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