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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 国際企業経営の大転換②(永池克明/国際企業戦略論)

国際企業経営の大転換②(永池克明/国際企業戦略論)

11/11/04

10月上旬に『国際企業経営の大転換-激動するグローバル経済と日本企業の挑戦』
(九大出版会)という本を出版して、前回は世界の経済環境の7つの変化を挙げま
した。今日は、これからどうすべきかをお話しします。

企業、それを支える国家、そして地域や個人の順番でお話をしていきます。最初は
ビジネスの担い手である企業です。日本の企業は、これまでは全ての機能を企業内、
あるいは自社グループ企業内で完結させる、いわゆる垂直統合型のビジネスモデル
が中心でした。たとえば、1台の車を作るのにはだいたい3万点から3万5千点の
部品が必要ですが、それらを全て自社内あるいは自社系列企業内で調達して完成車
までを手がけるという形態です。しかし、今、世界の流れは欧米企業を中心に集中
から分散へという大きなトレンドがあります。すなわち、何でも全て自社でやると
コストが高くなり、世界の競争に勝てません。これに対して、各国がそれぞれの得
意分野を活かし、それぞれが車の必要部品や半製品、さらに最終組立て担当し、そ
れをグローバルなサプライチェーン(供給網)で結んで、よりローコストで作り上
げる新しいビジネスモデルが主流となってきました。

こうした動きに沿って、企業は新しい水平統合型、あるいは垂直分業型のビジネス
モデルを創っていく必要があります。かといって日本企業としては単に欧米企業の
モデルを真似るのではなく、日本の強みを活かしながらビジネスモデルを変革する
ためには、大きく3つのイノベーションが必要でしょう。

第一はバリューイノベーションです。従来の考え方では価格が高いか低いか、また
は品質がいいか悪いかという2つに分け、この2つの要素はトレード・オフ(こち
らを立てれば、こちらが立たないという関係)、すなわち白か黒かという二者択一
の選択でしたが、これからは高品質で低価格という両方を兼ね備えた商品開発が必
要です。ただ、先進国企業にとっては収益の面で厳しいのですが、できるだけ途上
国企業とアライアンス(提携)を組み、現地化し、工程を分散することで両方の価
値を最大限に発揮すれば、コストも下がり品質も維持して強い商品を作ることがで
きるでしょう。

第2はオープンイノベーションです。例えばアップルやノキアのような形で、技術
を少しずつ公開しながら一緒に行動するチーム(企業グループ)を作り、そこで世
界の中で多数派を占め、世界標準、業界標準を形成することです。業界標準になれ
ば、敵対するグループもその方式に追随せざるを得ません。

第3は、各途上国地域でのローコストオペレーション活用で、新しいビジネス商品
を作っていくことです。これは途上国の力を活用して現地の設計で現地のコンセプ
トに、現地の部品材料を出来るだけ多く使って低コストを実現するというものです。
日本企業としては、その上に日本企業の強みを加味して高品質な競争優位ある商品
を作るというイノベーションで、リバースイノベーションと言われます。

この3つのイノベーションに加え、新規ビジネスのチャンスがあります。これまで
は自動車、電気、精密機械産業など貿易財が中心となって外貨を稼ぎ、その外貨で
エネルギー資源、天然資源、食料資源など色々な資源を買うという循環で国をまわ
してきましたが、これからはこれら3業種にいつまでも依存せず、環境、エネルギー、
ツーリズム、メディカル、バイオ、光学、健康、サービス、アニメなどポップカルチャー
などの文化産業など今後新しい需要や日本が強い競争力を持つ新しいビジネスを
開拓して、新興国などの旺盛な需要を満たしていくことです。新興国では経済の
高度成長を支える、インフラ設備やエネルギー源、環境汚染防止技術などが決定
的に不足しています。

次に、国家はどうすべきかという話です。日本は資源が少なく、今後も貿易立国で
やっていくしかありません。そのためには鎖国はありえず、やはり国を世界に開い
ていかないと日本の企業は自由に活動できませんし、同時に国もまわっていけない
と思います。つまり開国するということです。 今、FTA、EPA、TPPという地域自由
貿易協定の議論が盛んです。この面では、韓国と比べて日本は国の開国度
(自由化度)で周回遅れになっています。国がまず率先してスピーディーにやる
べきだと思います。韓国はアメリカ、EUとFTAの締結を果たしましたから、
日本は欧米向け輸出でハンディキャップを負うことになります。

国家としてもう1つやるべきことを挙げると、日本はこれまで全就業者のたった10%
である自動車、電気産業、精密機械業界という3つの機械産業が主として外貨を稼
いできたわけですが、昨今は中進国や途上国の追い上げも激しく、いつまでもこれ
に頼っていられません。外貨を獲得できる新しい産業をどうやって育成していくか
が、きわめて重要です。政府は少し長期的な国家ビジョンを策定し、新しい産業を
育てていく政策をとると同時に、今外貨を稼いでいる3つの産業を強化して、両方
の産業構造の高度化を図る、つまり、第2、第3、第4の柱を作ることが必要です。

最後に地域や個人ですが、これが最も直接私たちに関係してくるわけです。国や企
業がグローバル化しているので、個人もグローバル化する必要があります。世界と
競争して、その中で何か違った特徴を持った競争優位性を持つことが必要です。そ
れがあって初めて地域も、世界にあり余っている人、モノ、金を統合し吸収できま
すし、発展ができるのです。また、優れた製品や農産物があれば、それを積極的に
世界に売り込んでいくことも必要です。それを実現するのは人材です。人材がいる
から、それが可能になるので、地域間でハブを取り合う競争などがありますが、九
州も含めてそこで勝たなければなりません。そのためには、それを推進する人材、
もっと力を持っている人たちを地域全体の産官学一体となって質量共に増やすこと
が重要です。個々の人材のスキルを上げていくことがグローバル化につながり、そ
れで初めて地域が活性化していくのです。

国際企業として、どうグローバル化を進めればいいのかということで迷っていらっ
しゃる方は、『国際企業経営の大転換-激動するグローバル経済と日本企業の挑戦』
(九大出版会)を是非手にとっていただけたらと思います。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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