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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > この夏のイギリス研修(3)(異文化コミュニケーション/鈴木 右文)

この夏のイギリス研修(3)(異文化コミュニケーション/鈴木 右文)

11/11/01

8月から9月に学生を連れてイギリスの研修に行ったという話をしていますが、今回もその続きです。
前回、イギリスに行った時に消えゆくものがあるという話をしました。例えば、伝統的なティールーム、そしてパブです。

■消えゆくイギリスの病院 

今日も、その消えゆくものを1つご紹介しますが、こちらは少し深刻なお話です。向こうで食事中に新聞を読んだりすることがありますが、一面のトップで、NHSと呼ばれる病院の閉鎖の話題がありました。NHSというのは National Health Service の略で、イギリスの公的な医療サービス事業です。国民は無料で診療が受けられます。そちらが運営している病院があちこちで昔から少しずつ閉鎖されてきて、統合されているようなことがありましたが、今回はロンドンの中心部で大きな病院が閉鎖されるというので、大きく取り上げられていました。NHSというのは第二次世界大戦の直後、1948年に発足しました。当時は戦争で嫌気がさした人達が福祉政策を掲げた労働党に期待をして、労働党の政権が発足し、それの目玉の政策の1つとして行われたものです。税金から医療費が出ていて、その代わり国民であれば医療費は無料ということになっています。さすがにそういう状態だと、どこかで行き詰るだろうというのは想像できると思いますが、残念ながらご多分に漏れずに医療費が膨らんできて大変なことになったわけです。サッチャー政権でも随分とテコ入れ策を図ってきましたが、残念ながら医療サービスの低下なども招きました。有名な話ですが、救急車などで担ぎ込まれる緊急外来でも、診療を受けるまで平均して3、4時間待つといわれるくらい大変です。これは人命に関わります。また、大きな手術は1年半待つという話も良く聞きます。そうするとお金持ちの人はNHSと関係のない民間の病院ですぐに手術をしてもらいます。ただし、こちらは全額自己負担になります。でも、お金で自分の時間と命を買うようなところがあるわけです。ですから、両極端に分かれているといえます。なんとか保守党政権の時代に立て直そうとして色々とやったようですが、なかなかうまくいきませんでした。労働党政権に移ってからもそうでした。そして、今の政権下でもこの流れを結局押しとどめることができず、とうとうロンドンの中の大きな病院まで閉鎖されるという事態になってきました。そうなると、ますます待ち時間は長くなりますし、無料できちんと診てもらえる体制が弱くなるということを意味しますので、ロンドンの人たちも、大変なことになったと思っていると思います。どこが落としどころになるのか分からず、時代が進行しているというところだと思います。

■イギリスの医療の構造的な問題 

先程、イギリスではお金があれば民間のところに行けるといいましたが、お金がない人にとっては医療の選択の余地がないというところも構造的な問題です。NHSの病院というのは大病院ですが、そこへいく前に掛かり付けの医者の登録制度というのがイギリスにはあります。General Practitioner、俗にGPと略しますが、日本でいえば自分の地域の診療所のようなものですね。1番近いお医者さんがあって、目が悪かろうと足が悪かろうとまずはそこに行って診てもらって、そこで治るものだったらそこで治療します。そして、そこでは対応できないという場合に初めて専門の病院を紹介してもらいます。紹介してもらうのも、掛かり付けのお医者さんの判断なので、どこそこへ行けというのは絶対の命令みたいなものです。そういう、無料であるかわりに色々と不便な点があるというのが、イギリスの今の医療の現状です。日本も福祉政策というのは上手くいっていない部分もあったりしますが、イギリスも大変な問題になりそうです。いずれどっかでばっさりやるという時代がくるかもしれません。

■増えてきているもの 

逆に現れてきているという話をします。イギリスにはよくコンビニがないとよくいわれていました。確かにセブンイレブンのようなものは見たことがないわけですが、その代わりにコンビニにあたるような店が最近増えてきています。特にスーパーマーケットチェーンがあります。セインズベリー(Sainsbury’s)やマークス&スペンサー(Marks & Spencer)などが開いている、扱う品目を圧縮したコンビニくらいの大きさの店舗が流行っています。しかも、朝は早くから開いていて、夜は遅くまで開いています。24時間というところはさすがに少ないようです。向こうで一般の方々に聞いてきた話なので、裏付けのある話とは必すしもいえないのですが、これには面白い背景があります。いわゆるロンドンのオリンピックで世界から集まって来た人たちの便を図るために、政府が朝早くから夜遅くまで開いている店を作ろうとしているというわけです。

ロンドンオリンピックを機に、大きくロンドンの街が変わるというのは他にもあります。聞いた話では、オリンピックの Official caterer という、食べ物をオフィシャルに出す業者に、先程のセインズベリーとマクドナルドが選ばれているという話を聞いています。そのため、元々ロンドンはマクドナルドが展開している場所ではありますが、ますます増えてくるのではないかと思います。こんなふうに、オリンピックも街の様子を変えているという1つの例です。やはりロンドンオリンピックを機に旅行に行ってみたいという方もいらっしゃると思いますが、伝統的なティールームとかパブがなくなっていっているという話を聞くと、ちょっと残念だとは思いますね。色々なことを知っている方に情報をうかがって、ここに行ったらいいというところに是非行ってみてください。

分野: 鈴木右文准教授 |スピーカー:

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