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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日本企業の海外企業買収活発化 (久留米大学・国際企業戦略論/永池 克明)

日本企業の海外企業買収活発化 (久留米大学・国際企業戦略論/永池 克明)

11/10/17

前回は、国際企業間の提携の活発化と合従連衡という話をしましたが、今回は、日本企業が海外の企業を買収する動きが活発になっているという話をします。

■日本企業の海外企業買収の活性化 

日本の企業はこれまではどちらかというと、全部自力でやりたい、海外生産するのであれば、土地を買って建屋を建てて、そして人を採用してという形でやっていました。しかし、それだと大体1年半くらいかかってしまいます。今はそんなにゆっくりしていられないので、手っ取り早く即戦力を得るために、肉食動物的な戦略のM&Aがかなり本格化しつつあるということが特徴です。更には今の超円高で買収には有利な環境になっているということも拍車をかけています。輸出には不利ですが、買収とか輸入にはよいので、それをうまく利用しているということです。

日本企業が関わっているM&Aは、ここ最近は非常に増えています。今年の1〜6月で945億ドル(約7兆5,600億円)と前年同期比で79%、つまり約8割増えたことになります。これは世界の平均よりもはるかに高く、日本企業が積極的であるということがいえます。その内の海外企業の買収が、上半期で388億ドルになります。これは昨年1年間の343億円を既に上回ってしまっているということで、本格的にやっていることがうかがえます。

■背景 

背景について説明します。買収は震災後が特に多いのです。上位10件の内6件が震災後ということで、1つは震災以降、国内市場がますます縮小傾向にあるということがあります。また、震災によって企業環境が激変していて円高が更に進んでいることもあり、企業の立ち上がりがますます悪くなっているということがあります。それから、投資に有利な条件、例えば手元預金がかなり豊富である、あるいは超円高である、そういったことが追い風になっていることがあります。

■狙い 

日本企業が海外の企業を買収の狙いについてです。日本国内だけで事業を継続していても、先行き成長がなくなるというリスクがこれから大きくなるので、収益源をもっと分散化、多様化させようということが1つ挙げられます。それから海外でのシェアを上げ、売上高を上げて、成長戦略をますます加速させるべきだという意見が強いということがあります。その結果、企業規模が拡大して、国際競争力が高まる、スピードが上がる、そのような狙いを持っているということです。

■大型事例 

いくつかM&Aの事例を挙げていきます。最近大きなものとしては、武田薬品がナイコメッドというスイスの製薬会社を買収しました。最近は買収金額も非常に大きくなってきていますが、これは製薬会社としては至上最高といっていいくらいの136億8200万ドルという巨額を投じて買収しました。もう1つ、テルモという会社がカリディアンBCTというアメリカの医療機器メーカーを買収しました。これも26億2500万ドルという巨額の買収です。それから、東芝が最近、ランディスギアというスイスの電力計メーカーを買収しまして、これも23億円と大きいです。あとは、伊藤忠商事がアメリカの石炭事業を買収しました。これは電力不足と原子力が大変厳しいということもあり、エネルギー源を多様化しよういうわけです。それから、エルピーダメモリが、台湾の力晶半導体という企業をDRAM事業で買収というのもあり、買収が続々と進行しています。

■内需産業による海外企業買収 

ここ最近のM&Aをみると、今まで国内中心でやってきた「内需型」といわれた企業が海外展開を加速しています。たとえば、食品や日用品メーカーなども、国内縮小ということで海外展開を加速しています。特にアジアやオセアニア、オーストラリアやニュージーランドなどの優良企業に対してM&Aをかけています。海外事業を広げないと将来業績不振になるという危機感が皆背中を押しています。特にビール業界は軒並み買収をかけており、数年前からこういう動きが始まっています。

それから、アメリカのプロクター&ギャンブル(P&G)に代表されるような日用品メーカーですが、そのような会社も海外買収による海外展開を加速しています。食品というのは国ごとに好みが違うので、なかなか日本流だけ一方的に持っていこうとしても通用しないので、その点では多国籍で活躍できるような人材、あるいは現地人材というのが重要になってきます。

■今後について 

今後について少し考えていきます。海外企業の買収、M&Aというのは続いていきそうと考えます。海外事業を一気に進めようとすると、M&Aの方が、自社だけで土地の取得からやっていく(Green Field といいます)よりも、かなり早く立ち上げることができます。そのため、これからも海外事業を開拓するために買収というのは増えていくだろうと思います。そういう意味でも、買収に対して、今までは日本は消極的でしたが、否応なしにやらざるを得なくなっているということです。

一方で、国内が空洞化するといわれています。海外に工場を移すと国内の工場がいらなくなってしまい、雇用が激減という意見です。しかし、色々な事例を見ますと、国内も十分な重要な製品開発や親工場の機能を持ちつつ、海外生産を広げていくことによって、例えば中小企業だと、日本の親企業だけとの注文取引だけでなく、現地の企業との取引も始め、世界中の企業と取引が始まっていて、むしろ売上がどんどん上がっているケースもあります。それが日本市場に還元されるということで、むしろプラスのサイクルになっていくという企業も結構増えています。必ずしも海外に投資したから国内は先細りになり衰弱していくということではないと思います。

国内の拠点を残しながらしっかり守って、技術も残しながら開発力を保持しながら生産を広げ、現地でも親企業や系列企業だけでなく、外部の企業との取引を増やしていくことによってプラスのサイクルに転じることができると思います。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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