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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 海外進出のリスクマネジメント(その3)(中村裕昭/経営リスクマネジメント)

海外進出のリスクマネジメント(その3)(中村裕昭/経営リスクマネジメント)

11/10/12

海外進出リスクマネジメントに関連して、これまで2つの海外進出リスクのケースを
お話しました。今回は、進出国における現地企業との「関係性リスク」です。具体的には、
日本企業が海外に進出する際には、単独で進出する場合と現地の有力企業などと
一緒に「合弁企業」を設立して事業を行う場合があります。今回の事例は後者の事例で、
「関係性リスク」とは日本の企業と現地企業との関係に関するリスクをいいます。
いわゆるジョイントベンチャーといわれる形態のリスクです。

日本語では「合弁企業」とか「合弁会社」などと呼ばれています。日本企業が単独で
進出するよりも、現地の企業と一緒に事業を行うことによって、現地の文化的な理解
も進みますし、現地独特の経営形態や労働環境にたやすく順応することができます。
例えば、現地での新規採用者の雇用について、日本企業が単独で進出する際には、
現地のルールとか教育制度などの理解が十分でないことも多く、良質な人材をどの
ように雇用するかに大変苦労しますが、現地のパートナー企業との合弁企業では、
日本から派遣された職員と、現地企業の職員が一緒に採用活動にあたることもあって、
スムーズに雇用を進めることが出来るメリットがあるともいわれています。合弁企業
形態には、現地の企業にとっても、日本企業の技術や製造プロセスなどについて
実践的に現地で学ぶことが出来ますし、日本のマーケットへの足がかりを作ることが
出来るなど、多くの利点があります。

一方、全てがうまく運べば「ウィン・ウィン」となりますが、様々なリスクが存在します。
第一に、現地で共同事業を行う相手企業の「信用リスク」です。現地で「有名」という
だけでは、どのような相手であるか分かりません。信用力を調査する必要があります。
信用力とは、単に儲かっているかだけではなく、相手の企業が「道徳的な企業か?」
「経営方針や戦略は適切なものか?」「現地の社会において悪い噂はないか?」
「経営目標や事業運営は着実に行われているか?」など、経営全般にわたって調査
する必要があります。調査には色々なやり方がありますが、一般情報を集める方法
としては、「JETRO」など現地に事務所を置いていて、経済活動や現地の産業など
に詳しい日本の公的機関に聞いてみるのが第一ステップです。ただ、それでだけでは
十分ではないので、専門の「調査会社」に調査料を支払って調査してもらうのが一般
的です。世界的なネットワークを持つ企業調査会社で調べてもらうと、「財務面」
「過去の問題」「経営者の問題」「悪い噂」「現地での評判」など、かなりの情報が
入ってきます。その上で日本から現地に赴いて、日本の商社や銀行などの支店など
へのヒアリングもよく行われていますが、商社や銀行などは守秘義務がありますので、
直接取引のある企業のことは公開されている情報以外、話してくれません。また
現地の非上場企業の場合は、情報はかなり限られてきます。従って、調査会社に
調査をしてもらうのが現実的ですが、これにもかなり手間とお金がかかりそうです。

その他のリスクとしては、合弁の相手企業からの「商材使用の強要リスク」があります。
これは現地の相手企業から、「日本企業との合弁会社で、自分の子会社の部品を
使ってほしい」とか「自社取引先のセメントを使ってほしい」など、様々な形で合弁企業
の業務に横槍が入るリスクです。合弁企業の日本企業持ち分が、現地パートナー
企業の持ち分より少ない場合などは、こうした強要とも思える圧力が強くなり、結局
受け入れざるを得なくなる可能性があります。そういう強要によって使いたくない
部品を使うことになると、現地の合弁会社の製造する製品の質が落ちる可能性が
あります。現地パートナー企業の関係企業が使っている原材料の質が高ければ良い
のですが、そうでない場合は質の低い原材料を使わざるを得なくなり、完成品の
信頼度が揺らぐことになります。

そうしたリスクを防ぐためのリスク処理として、まずは合弁契約を行う場合に
「原材料の技術スペック」、つまり原材料の質について詳細を定めておくことです。
また、原材料の調達先として、信頼できる先が明示できれば、そうした会社のリスト
やスペックリストを提示して契約に盛り込んでおくと、なお確実性が増します。
転ばぬ先の杖ですが、とにかくリスクマネジメントは、早めに問題の芽を摘んで
おくことが重要です。その他にも、合弁においては、できるだけ「マジョリティ」の
持ち分を持っておくことが重要です。「マイノリティ」になると結局発言力もなくなり、
何かというと現地企業の言いなりにならざるを得ません。しかし進出国の産業政策
などにより、外資がマジョリティをとることを許されない場合もあります。その
場合でも、現地企業のパートナーを2社選んで、その内の1社を日本企業の仲間と
することによって、実質的にマジョリティをとるという戦略をとる企業などもあり
ます。どのような場合でもそのような「現地の仲間」が都合よく現れるわけでは
ありませんが、こうして様々な戦略や戦術を用いてリスクを少なくしていく必要が
あります。

分野: 中村裕昭教授 |スピーカー:

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