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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 海外進出のリスクマネジメント(その1)(中村裕昭/経営リスクマネジメント)

海外進出のリスクマネジメント(その1)(中村裕昭/経営リスクマネジメント)

11/10/10

今日は、日本企業が海外に進出する際のリスクマネジメントについてお話します。
昨今の(1)急激な円高、(2)新興国での需要の拡大、(3)電力供給の不安、(4)
震災時のサプライチェーン分断のリスクなど、様々な理由から、現在、日本企業
の海外進出が増加傾向にあります。震災によって、生産拠点を分散化させる必要
があると考えた企業が、海外に工場などを移転させる動きがあるという面はあり
ますが、さらに高付加価値製品を製造している企業は海外移転を検討していると
いう情報もあります。また、昨今の急激な円高で、輸出企業が海外に工場移転す
るという動きも出ています。

昨今の環境変化によって、空洞化という言葉がまた再燃してきましたが、トヨタ
のトップが昨年11月に、五重苦という言葉で表しているように、日本はこれまで
「円高」、「税金」、「貿易自由協定問題」、「労働関連規制」、「環境対応」という
5つの苦難を背負って来ているといわれています。このまま国内で生産をして
いれば立ち行かなくなるということで、海外移転を検討する企業もありますが、
海外に進出するためには短期的な採算性の問題だけで右往左往するのでは
なく、中長期的なリスク判断が必要になってくると思います。そのため、以前から
の五重苦に「電力供給問題」が加わって、六重苦となったといわれていますが、
それでも日本にとどまる企業は多く、「雪崩をうって海外移転が起こる」という
状況にはありません。勿論これから政府の政策対応などが遅れて六重苦の
度合いが一定限度を超えると、雪崩をうって海外進出することが起きないとも
限りませんが、日本の企業経営者から話を伺っていると、中長期的なリスクと
いうものを念頭に入れ、拙速を避けた判断をされているようです。

やはり海外に行くとなると相当な覚悟が必要だというのは当然あると思います。
企業が海外進出を決めるためにはどういうリスクを検討するべきかが今回の
テーマですが、海外進出のリスクは限りなく存在します。マーケティング面、
財務面、人事面、製造面、経営のプロセス全体にリスクが存在するといっても
過言ではないので、今回から4回にわたって代表的な海外進出リスクを勉強
していきましょう。

最初は、進出国での製造において「重要な生産要素が欠如するというリスク」を
ご紹介いたします。例えば、大きな工場を設置して生産を開始したが、しばらく
して「一部の原材料が調達できなくなった」、あるいは「生産に必要な部材につ
いて十分な質と量を確保できなくなった」というケースです。工場を円滑に稼動
させるためには様々な経営資源が必要です。人材、資材、運転資金、ITシステム、
エネルギーなどですが、そのひとつでも不足すると生産全体に影響してきます。
日本で生産する場合には調達に全く困らなかった経営資源が、進出国では不足
することに直面するというリスクです。

このような問題は、発展途上国における生産インフラの不備の問題とも限りませ
ん。例えば、日本企業が進出した段階では、原材料、資材、部材、部品は潤沢に
確保できる状態だったが、その後外国企業が参入してきて、「原材料、資材、部
品の争奪戦が始まったために日本の企業への供給が少なくなったというケース」
もあります。そうした場合は、原材料の価格も上昇し、当初見込んだ通りに収益
を確保できなくなる場合もあります。

リスクマネジメントという学問においては、リスクに対応することを「リスク処理」
といいます。しかし、問題が起きてからどうするかが「リスク処理」ではなく、
「リスク要因があるとすれば、そのリスクにどのように立ち向かうか、事前に考えて
おくこと」がリスク処理の本来の意味です。

先程あげた例で、海外進出前から考えておくべきリスク処理は数多くありますが、
まず重要な原材料については調達先を複数用意しておくことです。進出先の国で
は複数確保できない場合は、近隣諸国からの調達も確保することを考えておかな
くてはいけないでしょう。複数の調達先となると物流コストが二重にかかり費用が
嵩みます。また原材料が調達できないために製品の納入が遅れた場合の違約金
などを考慮することも必要になるので、結構コストが嵩みます。そうしたことが
ないように進出前に十分な調査費用を使って現地の市場を調査することも必要に
なります。そうすると、やはり費用が嵩むことは避けられません。

コストを下げるために海外進出を考えているのに、コストが逆に上がることに
なったら、進出しないという方法もあります。最初に申し上げた通り、円高だから、
あるいはサプライチェーンの問題がありそうだから、すぐに海外生産ということ
にはならない理由の一端がお分かりいただけるでしょう。日本企業は賢明にこの
辺のリスクを理解していると思います。

分野: 中村裕昭教授 |スピーカー:

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