QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 科学技術と芸術の共通点(産学連携マネジメント/高田 仁)

科学技術と芸術の共通点(産学連携マネジメント/高田 仁)

11/09/21

先日、たまたま知人の誘いで銀座の画廊を訪れる機会があった。そこでひとしきり画廊の方と話す中で、科学技術と芸術には結構共通点も多いという話題になった。大きくは3点に整理されるので、その話をしていきたい。

まず一つ目は、「目利き」が必要、つまり専門性が問われるということ。画廊が取り扱う美術品は大きく「現代アート」「洋画」「日本画」「古美術」の4つに分けられる。このいずれを取り扱うかで、画廊のカラーが決まる。そして、画廊の世界では、洋画団体や日本画団体などカテゴリー毎にいろんな美術団体が組織され、その団体を中心に商習慣が確立されているとのこと。
このことは、科学の世界で専門分野毎に学会が組織化されていることに似ている。また、産業分野別にみても、例えばバイオや製薬業界、IT業界、資源エネルギー業界など、それぞれで商習慣は全く異なる。その業界の中で、産学連携のコーディネーターが有望な研究成果を「目利き」するためには、その領域の科学についてある程度の知識を持っておかなければならない。同時に、その研究成果を活用可能な産業領域の商習慣(広い意味でバリューチェーンや価格決定メカニズム、等)についても理解しておく必要がある。
画商も産学連携のコーディネーターも、全般的な知識のみならず、ある領域に深い専門性を持つことが必要なのだ。

次に、科学者や芸術家の育成にはパトロンが必要だと言うこと。
画商の仕事には、無名の画家を発掘し、生活力が不十分な彼らをサポートし、積極的にプロモートし、売れっ子に育てていくという醍醐味があるとのこと。これは、それなりの資金力がなければ成立しない。昔から芸術家の後ろにはパトロンがいて、芸術家の活動を支え続けてきた。画商自らがパトロン的役割を果たすこともあるようだし、顧客の一部がパトロンとなる場合もあるが、いずれにせよ、価値が定まらない芸術を息長く伸ばしていくためには、パトロンの存在は不可欠だ。
例えばドイツ銀行は、世界に支店を置く場合、必ずその地域の若い芸術家の作品を買い集めたそうだ。それは、その時々で地域の芸術活動を育成するとともに、後に芸術家が著名になるとドイツ銀行の保有資産を大きくするという役割もあった。
これは科学も同様で、何の役に立つかわからない科学を支えるパトロンは不可欠だ。19世紀までは一部の大金持ちが科学者や大学の研究を支えていたが、20世紀に入って国家の力がある程度確立されてくると、国家予算から特に基礎的な科学に対して資金が提供されるようになった。現在でもその流れは続いているが、同時に、多様なパトロンが登場しつつある。リスクをとってアーリーな研究成果に投資するベンチャーキャピタルもそうだし、ビルゲイツ財団のような民間財団も、今日ではそれなりの力を持つようになった。

最後に、こと日本に関しては国際的な発進力や展開力が弱いということ。近年の芸術の世界では、特に中国の存在感や発言力が強くなっている一方で、日本の芸術家は実力もあるし、人物としても良い人が多いが、国際的な競争環境の中で自らの芸術価値を強くアピールする力が十分ではない。また、画商もどうしても国内だけの狭い世界を基準にビジネスを組み立てているので、国際的なマーケティングや交渉の面で諸外国に負けてしまっているという。
科学も同じで、著名なジャーナルに掲載されたり、ノーベル賞など著名な賞を受賞したりといった面では日本の科学者も世界に伍して競争する実力が十分にあると言えるが、その科学の持つ力をビジネスに活用するという面で、国際的な技術移転や産学連携はまだ活発とはいえない状況だ。

芸術も科学も、国内に狭く閉じているのではなく、その価値を広く国際的にアピールすることによって、国のプレゼンスを向上させることができるのではないだろうか。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ