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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日本企業における株式の持ち合い状況の変化とガバナンスについて(1)(ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

日本企業における株式の持ち合い状況の変化とガバナンスについて(1)(ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

11/08/15

■日本企業のガバナンスの特徴

今回と次回は、日本企業における株式の持ち合い状況の変化とガバナンスについてお話します。

日本企業のガバナンスの特徴に経営者が株主をあまり重視して来なかったということがあります。このことの善悪はともかくとして、経営者が株主をあまり重視しなくても済んできた背景には、いくつかの要因が挙げられています。例えばメインバンクが存在したことです。企業はファイナンスについては、メインバンクの意向に沿った経営を行っていれば、融資の形で資金の借入が可能で、その点では株主のことをそれ程気にする必要はありませんでした。また、同様に、株式の持ち合いも株主軽視の要因として挙げられています。

株式の持ち合いというのは、企業間で相互に株主を持ち合うことなのですが、双方とも相手の経営には基本的には文句を言いませんという暗黙の了解があるため、企業の経営者にとってみると、他の株主と対峙するような状況になった時に自分の味方としてカウントできるというわけです。持ち合い株主も経営について文句を言わないわけですから、経営者は株主のことをあまり気にせずに、思うような経営ができるということです。

ところが最近、こうした日本企業による株式の持ち合い比率が低下傾向にあること、それと同時に、日本企業の中で株主重視の姿勢に転じるところが増えているということが報じられています。この2つの問題と相互の関連を少し考えてみたいと思います。今回はまず、日本における株式の持ち合いの展開をみてみましょう。

■株式の持ち合いの変化

株式の持ち合いは戦前にもなかったわけではないのですが、戦前の産業界は財閥といわれる企業グループが産業の大宗を支配していました。そこでは財閥一族が株式を所有する持ち株会社が、グループの事業会社の株式を保有するという形で企業グループの経営をコントロールしていました。そういう意味では、財閥家族という投資家が垂直的な株式所有によって企業経営を支配していた、すなわち株主が経営を支配していたということがいえます。
これに対して、戦後広がった株式の持ち合いの下では、水平的な株式所有を通じて、経営者によって企業支配が行われてきたといえます。この戦後の持ち合いというのは3回または4回の波で拡大し、1990年代以降、トレンドとしては減少に転じました。

■1回目の波

第一の波は、戦後、GHQにより財閥解体が指令されたことがきっかけです。指令により大株主の持ち株が没収され、それが従業員や一般投資家に配付されました。これは、日本における財閥の存在が民主化を阻害し、その結果、健全な中産階級が育成されずに、戦争をもたらした社会構造につながったというGHQの認識が背景にありました。これによって、一時的に個人株主数が増加しましたが、戦後のハイパーインフレの対策としてとられた緊縮政策と企業による設備投資のための増資の活発化の下で株式市場が低迷したため、多くの個人はあまり得をすることなく株を手放してしまいました。

そうした中、財閥企業中心に従業員に株を持たせる、あるいは財閥系企業自身が自社株を購入する、メイン銀行に買ってもらう、あるいは持ち合いの相手となる企業に買ってもらうなどという形で、個人株主が手放す株式を買い集めていきました。その結果、持ち合いが進んでいったのですが、同時に財閥解体にかからなかった企業グループも取引銀行を核とした持ち合いを進めました。この時期、企業による株式の持ち合いが進んだ背景には、株の買い占めや企業の乗っ取りに対する対抗策の意味合いがあったとされています。

■第2の波

第2の波は、1960年代の半ばに日本がOECDに正式加盟し、またIMF8条国への移行に伴って資本取引規制が緩和されたことを背景として生じました。即ち、日本企業は外資による買収の危険性が大きくなったことに備え、安定株主を強化すべく株式の持ち合いを進めました。

■第3の波

第3の波は、80年代の後半のバブルの時期でした。この時期は、転換社債やワラント付き社債など、株式がらみの社債による非常に低利な資金調達が可能であったため、グループ会社など持ち合いの相手に社債を買ってもらうことで持ち合い傾向が強まりました。

■持ち合いの強化から解消への動き

しかし、バブルの崩壊によって株式持ち合いを取り巻く環境は大きく変わりました。即ち、株式保有のリスクが高まったこと、同時に企業がROE(Return On Equity)重視の姿勢を強めたこと、さらには金融市場の自由化が進み、従来のようにメインバンクと特別な取引関係を維持する必要性が低下したこともあり、90年代に入ると持ち合いは逆に減少傾向へ転じました。

■最近の状況

その後は株式持ち合いの解消が順調に進んだかといえば、必ずしもそうではありません。5年ほど前、海外からの要求で、親会社を持つ企業が我が国の企業を買収する場合、吸収される会社の株主に親会社の株式を交付する、即ち、三角合併が認められるという規制緩和がありました。これによってまた、日本企業が外資による買収の標的となると警戒されたことから、減少傾向にあった株式の持ち合いがしばし増加しました。しかし、その後リーマンショックがあり、日本の株式市場が大きく下落、その後も低迷を続けていることに加え、企業の会計基準においても時価額評価の傾向が強まっていることもあり、持ち合いの回復は比較的短期にとどまり、寧ろ以前にも増して解消傾向が強まっています。

こうして見ると、株式の持ち合いは企業が企業買収も含めた株式の買い占めを防ぐために取ってきた対抗策という面が見てとれます。つまり、企業の経営者が、自社の株主ではないものの、株主や投資家による経営支配を避けようと、リスクが増す度に対抗策として採用してきた方策と言えます。

しかし、その流れが変化し始めています、その背景については、次回採り上げたいと思います。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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