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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ギリシャ債務問題(1)(平松拓/ファイナンシャルマネジメント)

ギリシャ債務問題(1)(平松拓/ファイナンシャルマネジメント)

11/07/25

今回のテーマは、欧州の政府債務問題についてです。

ちょうど1年くらい前に、一応の手当てがされたギリシャの政府債務問題が、
また注目を集めています。

6月には、前年合意されたEU及びIMFの支援の条件である、財政赤字の
削減法案の審議を巡って、全国的なストライキや暴動が頻発し、その
行方が注目されていました。この法案自身は野党議員の協力もあって
無事成立しました。しかし、この1年、ギリシャなど問題国をとりまく
経済環境は、前回の支援策合意で前提としていたよりも厳しく、EUに
よる更なる追加支援なしには乗り切れないとの見方が強まっていました。
そのため、7月にはその追加支援を巡って、EUメンバー国や中央銀行で
あるECB、IMFも含めて侃々諤々の議論が行われました。結局、こちらの
方も民間投資家に対する債務の一部繰延といった内容を含む形で、何とか
方向性で合意に至りました。

この結果、ギリシャについては当分の間、危機は回避される見通しですが、
広がりを見せてきたEUの政府債務問題についての根本的な解決が図られた
訳ではなく、問題が先送りされただけという見方もできます。

ギリシャの債務問題をおさらいすると、2009年10月に総選挙が行われ、
政権が交替したことで、前政権が隠していた政府債務の大きさが発覚
しました。具体的には「デリバティブズ」の利用によって政府債務を
簿外化して少なく見せており、実際の財政赤字の水準は危機的状況に
あったことが判明しました。

リーマンショック後、EU加盟国では全般的に財政赤字の水準が拡大し、
EUメンバー国の合意事項である安定成長協定で規定された水準
(財政赤字はGDP3%、政府債務残高は同60%まで)を守れない加盟国
が続出しました。その中で、ギリシャの財政赤字は2008年には従来5%
とされていたものが実際は7.7%であったことが判明、3.7%と見込まれて
いた2009年については、実際は15.4%まで拡大しました。政府債務残高の
対GDP比は2010年には142.8%まで増加しています。

ギリシャの財政赤字が大きい背景には、経済の民営化が進まずに公務員
比率が高い一方、税の補足率が低く、また、社会保障負担等が大きいこと
があります。現パパンドレウ政権は緊縮財政政策の採用により財政再建
する姿勢を明確にして、関係国やEU、IMFなどとこれまで交渉を行い、
支援取り付けに当たってきました。

しかし、ギリシャがユーロを採用していることで、海外からの資本流入が
細った段階で為替相場が下落して輸出を中心に経済が活性化するという、
他の国に通常見られる回復メカニズムが働かないこと、さらに、金融政策
の裁量性もないことから、公務員削減や給与引き下げといった直接的な
政策手段に依らざるを得ないこともあって、国内的にも強い抵抗に遭って
いるのが現状です。

ギリシャで火を噴いた政府債務問題は、アイルランドや他の南欧諸国、即ち、
イタリア、ポルトガル、スペインなど、PIIGSと言われる諸国への波及が
懸念されたことから、EUやIMFはギリシャの支援に乗り出しました。昨年
5月には5年間で財政赤字をGDP対比で13%削減する内容の赤字削減法案の
成立と引き換えに、IMFとユーロ圏諸国で総額1,100億ユーロに及ぶ支援策が
まとめられました。また、別途、PIIGSへの波及に備えて、EU国際ファシリティ、
ユーロ構成国特別目的基金及びIMF補完からなる、計7,500億ユーロの欧州
安定化メカニズムが創設されました。

その後、実際にアイルランド、ポルトガルが支援を要請するなど、欧州の
債務危機は広がりを見せました。また、ギリシャについてはこうした救済策が
手当てされたにも関わらず信用状態は回復せず、国債の金利が嵩んだため、
一段の強力な支援の枠組みが求められる状況にありました。

今回の緊縮財政法案の可決で、ギリシャによる財政赤字削減の取り組みが
継続され、また、EU等による追加支援も合意されたことで、ギリシャ政府の
ファイナンスについては、一応の見通しが立ったことになります。しかし、
これでもギリシャの債務問題がそのまま解決に向かうと見る向きは必ずしも
多くはありません。市場におけるユーロの為替相場が引き続き軟調なことも、
そうした見方を物語っているということができます。

成長が新興国に偏る中で、欧州で火を吹いた形の政府債務の問題は、アメリカ
や日本にとっても対岸の火事ということでは済まされません。震災の影響から
の立ち直りが期待される我が国経済への波及も大きいことから、注意深く見て
いく必要がありまる。また、日本自身の政府債務の水準も、現在、復興問題で
やや議論が見えにくくなっている面はありますが、欧州やアメリカを大きく
上回ります。こちらも正面から見据えて行く必要があります。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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