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フェイスブックの影響(その2)(産学連携マネジメント/高田 仁)

11/07/08

今回は、前回に続いてフェイスブックが社会に与える影響について、とくにビジネスという観点から考えていきたい。
ザッカーバーグは、「世界中がより透明性高く繋がること」の価値を重視し、フェイスブックを成長させてきた。その間、さまざまなビジネス上で有利なオファーが、たとえば投資を望むベンチャーキャピタルや広告を打ちたい企業から提示されてきたが、ザッカーバーグはフェイスブックの価値観やユーザーの利便性を損ねるものは徹底的に排除してきた。すでに数億人規模のユーザーを抱えていると、そこでの企業の広告効果は絶大なものとなるにも関わらず、だ。たとえば、前回紹介したデビッド・カークパトリック著『The Facebook Effect』によると、2006年に、スプライトがフェイスブックを通じたキャンペーンを張りたいので、1日だけフェイスブックのホームページを緑色に変えてくれれば100万ドルの広告費を支払う、というオファーがあったにも関わらず、ザッカーバーグはそれを拒否している。
また、ベンチャーキャピタルから投資を受ける際も、当時の社長だったショーン・パーカー(彼は音楽ファイルのダウンロードサービスを提供するナップスターの設立者だが、投資家との間で折り合いが悪く、結果的に同社を追い出されていた)からのアドバイスもあり、株式公開や収益性の追求を強いられて会社が望まない方向に進むことを極度に警戒し、投資家の選定にも大きな注意を払っていた。
更に、通常のベンチャー企業であれば、成長した所で株式上場を果たして更に会社を成長させるのか、それとも大手企業に買収されるのかといった“出口戦略”を考えるのが普通だが、2005年にザッカーバーグがフェイスブックの出口戦略を周囲から尋ねられたときに、「ぼくはこのサービスをどうつくっていくかを考えている。出ていくことなんか考えていない。出口戦略なんか考えたこともない。」と言い切っている。CNBCの報告によると、2011年3月の段階で、既にフェイスブックは650億ドル(5,000億円)の評価額だという。一方で、フェイスブックの取締役会は常に少人数で、ザッカーバーグが支配し続けている。彼は、「人々は我々に対して驚くほど高いレベルの不安を抱いている。史上最高の成功例になるか、それとも最悪のスパイラルに陥って行くのか」。フェイスブックの2010年度売上は約20億ドル(1,600億円)と報道されているが、これは抑制的な利益追求行動の結果に過ぎない。
このザッカーバーグの考え方とフェイスブックの成長を見ていると、従来のビジネスモデルとはまったく異なる手法によって新しい社会インフラが形成される可能性があることが示唆される。つまり、経済的な収益性を主たる目標とし、会社が提供する製品やサービスが社会の需要を満たせば満たすほど、会社も高い収益を得るというのが株式会社のカラクリだが、フェイスブックはそうではない。利益を追求しようとすれば簡単に手に入れることができるにもかかわらず、より望ましい社会とはどうあるべきかという観点を第一義に掲げて事業を成長させている。
このような動きはフェイスブックに限らず、ツイッターも同様だ。2億人のユーザーを持つ同社の2010年の売上はたがだか4,500万ドル(36億円)にすぎない。広告収入などでもっと高収益を目指そうと思えば可能だが、どん欲な利益追求に走っていないのだ。
フェイスブックは、今年7月から「フェイスブック・クレジット」という仮想通貨の利用を増やす考えがあることを表明している。この仮想通貨は、専らフェイスブック上のソーシャルゲームで使用されるものだが、その使用範囲がどこまで拡大されるか、注目に値する。フェイスブック利用人口はもはや6億人と、世界で3番目の国家規模に相当することは前回述べたが、そのフェイスブックが独自の通貨を持つことによる影響は計り知れない。既に存在する各国通貨との間にどんな為替の仕組みを構築するのか、マネーロンダリングや通貨偽造など悪用される恐れはないのか、ヘタをすると各国の徴税権が及ばない独自の経済国家を形成するかもしれない。そう考えると、この地球上に、従来の仕組みや価値感では量ることのできない社会が誕生してしまうのかもしれない。
株式会社を中心とする資本主義が、20世紀を通じて我々に経済的な豊かさをもたらしたことは疑いの余地もないが、新しい世紀に入って、経済とは異なる価値軸へと少しずつ変化し始めているように見える。
このメモを作成している僅か数時間の間にも、3名からフェイスブック上でのメッセージが届き、2人から「友達になりましょう」というお知らせが届いた。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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