QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > <災後>の広告(マーケティング/出頭 則行)

<災後>の広告(マーケティング/出頭 則行)

11/06/15

■コーポレートブランドと商品ブランド 

今日は震災後の広告についてお話をします。はじめに、日本の歴史を振り返ります。この一世紀半、ポストxxx(xxx後)といわれるような、時代の屈折点となるような様々な出来事・事件・現象がありました。150年前はちょうど明治維新があって、<維新後>と言われました。65年前に太平洋戦争での敗戦があり、<戦後>と言われました。此のたびの東日本大震災は、150年前の明治維新、65年前の敗戦に匹敵するインパクトを日本に与え、後世は<災後>という捉え方をするのではないでしょうか。
戦後から65年経っていますが、マーケティングコミュニケーションの主流は広告です。日本では一貫して、特徴的なことですが、企業ブランドをベースとする商品広告、すなわち企業名をベースにしての訴求が主流でした。トヨタ・プリウス(Prius)、ホンダ・フィット(Fit)とは言いますが、ゼネラルモーターズ・シボレーやゼネラルモーターズ・キャデラックとは言いません。要するに、企業名と商品名を一緒になって出すということです。むしろ企業名の方が勝っている感じです。ソニー・バイオ(SONY VAIO)と言いますが、アップル・アイパッド(iPad)やアップル・アイフォン(iPhone)とは言いません。日本では大方の傾向として企業ブランドベースの商品広告というのが主流だということです。企業広告と言われるものも、商品広告主流の欧米に比べて、日本は際立って多いといわれています。
しかしながら、日本でも、最近は企業名を出さずに商品名だけ独立して訴えるというものが随分出てきました。例えばサントリーの伊右衛門の広告では企業名は外されています。マキアージュ(MAQuillAGE)という資生堂の商品もマキアージュだけです。花王は、従来は花王メリット、花王ビオレというように言っていましたが、今はメリット、ビオレだけで、企業名を外しています。

■各広告のメリットとデメリット 

商品ブランド名のみをベースにした広告のメリットについてお話します。先ず何より、企業イメージとは独自に商品イメージの世界を作れるということがあります。例えば車でも、キャデラックだったらキャデラックだけの世界が、ビュイック(Buick)だけだったらビュイックだけの世界が作れるわけです。これが日本のように、トヨタ・プリウスだったりトヨタ・ヴィッツだったりすると、トヨタのイメージに引っ張られます。トヨタというと、通常はコストパフォーマンスがいいといったことを思い浮かべますが、そのイメージが商品にも影響を与えてしまうので、トヨタの場合はレクサスを別ブランドにしたということがあります。
独自に商品だけの世界を作るのには、マーケティング費用をはじめとして非常に手間がかかります。コーポレートは、トヨタにしてもソニーにしても認知度は100%に近いわけですから、その名前を冠することによってアウェアネス(認知度awareness)を作るのは簡単です。しかし、その親会社の影響も引きずってしまいます。日本の広告がカンヌ広告祭など国際的な舞台でなかなか賞をとれない理由に企業ベースの商品広告が多いからという見方もあります。100年以上歴史のあるような企業イメージを引きずっていると、暖簾が重たくて、商品広告の表現で冒険ができないということです。そのため、表現面でもあまり斬新な試みができないわけです。独自性を主張する商品広告も企業ベースの商品広告もそれぞれ良し悪しがあって、日本の場合はどちらかというと暖簾重視型の広告が主だったということです。

■<災後>の広告 

最後の話になります。今回の震災後、ACの広告が氾濫して、一時期は80%を占めるまでになりましたが、5月にはほぼ平常の姿に戻りつつあり、現在ではTVスポットのトップ10は商品広告にはなっています。ただ、やはり商品広告も少しメッセージの流し方が変わってきているように感じます。記憶にのこるところでは、サントリーの広告、キリンの広告、あるいはエステーの消臭力の広告です。商品広告にしても、再び企業というのをしっかり出すようになってきていて、企業と社会との関わりというようなことを伝えることなしには、商品がなかなか語れないというような時代が現在であると思います。
震災後にこのような傾向が顕著になっていきた背景としては、商品を作っている企業、作っている製造元と社会との関わりということが、やはり大事なメッセージになってきているからだと思います。それが一過性のものかどうかは予断を許しませんが、私自身は、<災後>の日本のでは、企業ブランドをベースとした商品広告に回帰していくのではないかと感じています。今回の震災は激烈なインパクトを日本人の心情に与えているので、企業の社会へのスタンスということを語ることなしには商品も語れないという時代が相当長く続くだろうと思っています。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ