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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 第4回「日本の科学技術政策(2)」(科学技術・イノベーション政策/永田晃也)

第4回「日本の科学技術政策(2)」(科学技術・イノベーション政策/永田晃也)

11/06/07

前回は、科学技術基本計画のトピックに即して、
近年の日本における科学技術政策の動向を俯瞰してみました。
今回は、そこでみられた日本の政策が、
どのように特徴づけられるのかという点から話し始めてみたいと思います。

 Henry Ergasという研究者は、1987年に発表された論文の中で、
先進諸国における科学技術政策システムの多様性を分析した上、
多様なシステムを2つのグループに分類しています。
 ひとつは、Mission-Oriented Countriesと呼ばれるグループです。
特に民間企業が着手しない先端的な科学技術の研究開発プロジェクトを
政府が推進し、その技術的成果を産業部門にスピンオフさせるという
政策志向を持った国が、ここに分類されています。
アメリカ、フランス、イギリスなどです。
 もうひとつは、Diffusion-Oriented Countriesというグループです。
こちらは、技術の普及に重点をおき、工業標準化、
中小企業の技術基盤を形成するための補助金や職業教育、
あるいは共同研究といった政策を重視する志向性を持った国々です。
ここには、ドイツ、スイス、スウェーデンなどが含まれました。

 このような分類方法の妥当性そのものを検討してみる必要もあるでしょうが、
いま仮にErgasの分類を前提に考えるとすれば、
日本の科学技術政策は、どちらに属することになるでしょうか。
 私は、両方の性格を併せ持ったハイブリッド型の政策システムであることが、
日本の特徴ではないかと思っています。
 前に、民間部門の研究開発が過小になる場合と、
過大になる場合の各々について、科学技術政策の手段を整理してみました。
ここでは、そのカテゴリーに沿って、日本の政策を具体的にみておきます。

 ます、民間部門の研究開発投資が過小になる状況に対する施策としては、
「政府投資による大学、公的研究機関での研究開発の促進」、
「民間部門の研究開発を促進するための施策」などを挙げておきました。
 このうち、政府投資による研究開発の促進は、Mission-Oriented型の政策です。
前にも触れたように、日本の研究開発費総額に占める政府負担割合は、
他の先進諸国に比して低いレベルにあります。
おおまかな数値で示せば、アメリカ、イギリス、ドイツなどは3割前後、
フランスは4割に近い水準にあるのに対して、
日本では2割程度といったところです。
ただ、このような日本の政府負担割合の低さは、
軍事技術関係の研究開発がほとんど行われていないという点にも
理由の一端があります。軍事に直接関連する分野以外の先端領域において、
日本の科学技術のレベルが低いわけではなく、
例えば大型放射光施設など、
世界有数の研究設備を保有している領域も少なくありません。
 民間部門の研究開発を促進するための施策は多様ですが、
そのうち研究開発優遇税制、研究開発に対する補助金や低利融資などは、
どちらかと言えばDiffusion-Oriented型の政策です。
 日本の研究開発優遇税制として代表的なものは、
1967年に導入された増加試験研究費税額控除制度でしょう。
この制度は、研究開発費が増加した場合に、
その一定割合を税額控除するというものですが、2003年には、
「試験研究費の総額に係る税額控除制度」という補完的な制度が
導入されています。研究開発優遇税制は、複雑な変遷を辿っていますので、
いずれ回を改めてお話したいと思います。
 補助金制度の代表例としては、
1966年に発足した大型工業技術研究開発制度(大プロ)が挙げられます。
これは、1993年に産業科学技術研究開発制度に統合されました。
低利融資制度の例としては、日本政策投資銀行による
産業技術振興融資などが挙げられます。
 一方、民間部門の研究開発を促進するための施策の中でも、
委託研究開発は、どちらかと言えばMission-Orientedな性格を持つものです。
この方式は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や
科学技術振興機構(JST)によって推進されてきました。

 民間部門の研究開発投資が
企業間競争を通じて過大になる状況に対する施策としては、
「政府主導による共同研究プロジェクトの推進」と
「技術ライセンスの促進を挙げておいたと思います。
こちらは、Diffusion-Oriented型の政策といって良いでしょう。
 日本において政府主導による共同研究プロジェクトを
推進するための制度的環境を整備したものは、
1961年に制定された鉱工業技術研究組合法です。
この法律の制定以降、様々な技術研究組合が組織され、
先に述べた研究開発補助金の受け皿となりました。
その中には、「超LSI技術研究組合」のように諸外国の
注目を集めたプロジェクトもありました。

 以上のように、日本ではMission-Oriented型の施策も、
Diffusion-Oriented型の施策も多様な制度に基づいて展開されてきました。
ただ、特にDiffusion-Oriented型の施策は、比較的早い時期、
すなわち60年代の高度経済成長期の頃に導入が進展したとみられます。
 次回以降では、こうした政策の効果をどうみるかという点について、お話したいと思います。

分野: 永田晃也教授 |スピーカー:

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