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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 第3回「日本の科学技術政策(1)」(科学技術・イノベーション政策/永田晃也)

第3回「日本の科学技術政策(1)」(科学技術・イノベーション政策/永田晃也)

11/06/06

 最近2回の話の中では、まず科学技術・イノベーション政策の歴史を
簡単に振り返り、その定義、対象範囲などを明らかにしておきました。
その上で、そもそも何故、科学技術やイノベーションに対する政府の介入が
必要とされるのかという論点について、
科学技術の本質である知識の特質から考えてみました。
知識を生産するための活動は、市場メカニズムによる資源配分に委ねておくと
過小になったり、過大になったりするというため、
そのような市場の失敗を補完するためのコーディネーションが
政府の役割として期待されるわけです。
 以上のような理解を踏まえた上で、今回から2回に亘って、
日本の科学技術政策の特徴を概観してみたいと想います。

 日本の行政システムは、しばしば「縦割り行政」という言葉で
特徴づけられてきました。ネガティブな印象を与える言葉ですが、
要するに行政機関が機能別に組織されているということです。
科学技術を対象とする政策機能も、府省別に分割されている側面があります。
例えば、学術的な研究に関する政策は文部科学省、
産業技術に関する政策は経済産業省、
特に医療・保険に関する政策は厚生労働省という具合に、
科学技術の領域ごとに主に所管する府省が異なるわけです。
しかし、科学技術に関する活動、特にイノベーション・プロセスとして
認識される活動は、多様な領域にまたがることが少なくありませんから、
それを対象とする政策にも機能横断的、府省横断的な視点が求められる。
 日本では、2001年度の省庁再編によって、
内閣府に「総合科学技術会議」が設置され、
科学技術政策に関する府省横断的な総合調整機能の役割を
果たすことになりました。それ以前から科学技術会議という
政策立案機関はあったのですが、総合科学技術会議では
調整機能が強化されたのです。
 それより前、1995年には科学技術基本法という法律が制定され、
1996年度(平成8年度)から5年ごとに「科学技術基本計画」が
策定されることになりました。総合科学技術会議が発足してからは、
基本計画の策定は総合科学技術会議が中心となって進められています。

 ここで、これまでの科学技術基本計画のトピックを振り返ることによって、
近年の日本の科学技術政策の主要なイシューを俯瞰しておきたいと思います。
 第1期基本計画は、平成8年度から12年度を対象期間として施行されました。
そこで提示された政策の基本的な方向は、
「社会的・経済的ニーズに対応した研究開発の推進と基礎研究の振興」
という多面的なものでした。
この基本的な方向が象徴的に示しているように、
第1期計画の政策は総花的でしたが、
政策の大枠を明確に提示したという点に意義があったと思います。
例えば、日本の研究開発費総額に占める政府負担割合が
他の先進諸国に比して低いということが従来から問題視されていたのですが、
第1期計画では、この点を踏まえて、
計画期間中の科学技術関係経費の総額を17兆円とするという
数値目標が掲げられました。
この政策目標は実績17.6兆円で達成されたとされています。
この他、若手研究者の養成・確保といった政策などについても、
具体的な政策目標が示されました。
 次いで、平成13年度から17年度を計画期間として
第2期計画が策定されました。
第2期計画の特徴は、「科学技術の戦略的重点化」を掲げた点にみられます。
そこでは、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテク・材料が
重点4分野とされました。一方、第2期計画では、
計画期間中の科学技術関係経費の総額を23兆円とする
目標が掲げられましたが、その実績は21兆円程度に
止まったとされています。
 第3期計画は、平成18年度から22年度、昨年度までを
計画期間として策定されました。
この第3期計画の特徴は、初めて「イノベーション」という表現を使い、
「イノベーションの絶えざる創出」等のスローガンを掲げた点にみられます。
厳しい財政状況の中で科学技術関係経費を獲得するためには、
学術政策的な色合いが濃かった従来の政策スキームから、
イノベーション政策の領域に明確に踏み込む必要が
あったとみることができるでしょう。
 なお、第4期計画は本年度から5年間を計画期間として策定される筈ですが、
東日本大震災の影響を受けて見直されることとなり、
この収録が行われている6月3日の時点ではまだ閣議決定に至っていません。
4月に発表された経団連の提言などが考慮されるならば、
従来から政策の柱とされることが計画されていた「グリーン・イノベーション」と
「ライフ・イノベーション」に加えて、
おそらく「安全・安心な国づくり」に資するイノベーション政策が
強調されることになると思われます。

 さて、今回は近年の日本の科学技術政策を俯瞰してきましたが、
科学技術政策の重点的な目標などは国ごとに異なります。
次回は、他の先進諸国と比べてみた場合の日本の特徴についてお話した上で、
前回整理した政策カテゴリーごとに、
日本の具体的な施策についてみたいと思います。

分野: 永田晃也教授 |スピーカー:

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