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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > JALのその後 (財務戦略/村藤 功)

JALのその後 (財務戦略/村藤 功)

11/05/13

JALの2011年3月期の営業利益は、
更生計画で目標としていた640億円を大きく上回り、
1700億円超となる見込みです。
しかし、3月11日に起きた東日本大震災後、
JALの旅客数は3月28日段階で、国内線が28%、国際線で25%と、
3割近く落ち込んでいます。

今回はJALの経営再建の動きについてお話ししていきます。


■更生手続き
JALは2010年1月に会社更生法の適用を申請しました。
その後、8月に更生計画を東京地裁に提出し、11月に認可を受け、
2011年3月28日に更生手続きが終了しました。

この間、2010年2月には株式の上場廃止を行いました。
また、銀行団からは5215億円の債権放棄を受けました。
特に、債権放棄はJALにとっては債務免除益となるため、
約5200億円の利益が一時的に出たことになります。

そして、12月には支援機構が3500億円を、
JALの稲盛会長が創業した京セラが50億円を出資しました。

2012年末には株式を再上場し、2013年1月には支援機構の支援期間が終了する予定です。


■事業・組織の変更
事業内容にも大きく手が加えられました。
赤字路線は全廃となり、国内30路線を含む国内外45路線から撤退しました。
リゾート路線も、日本人の利用者が多いホノルルとグアム便に特化することになりました。
路線廃止に伴い、人員も16000人を削減しています。
また、航空機についても、ボーイング747など燃費の悪い老朽化した103機を全機退役させました。

ところで、1つの座席を1キロ運ぶのにかかる費用をユニットコストと呼びます。
このユニットコストは、JALが12円、シンガポール航空は半分の6円台、
マレーシアの格安航空会社(LCC)のエアアジアは3円を切るといわれています。
そのため、事業内容の見直しでJALが競争力を回復したかといえば、
そうとも言い切れない部分があります。


■地方空港と国土交通省
競争力の低下については、日本政府の方針にも問題があります。
国土交通省は空港整備勘定を運営しています。
この空港整備勘定によって全国98の空港が整備されてきました。
地方空港の中にはそもそもニーズが低いにも関わらず建設されたものもあります。
これまで、国は利益率の高い羽田の発着枠で配慮することにより、
赤字の地方路線を航空会社に維持させてきました。

しかし、JALは国内の赤字30路線から撤退してしまいました。
これは、国土交通省が航空会社に無理やり地方空港に国内路線を就航させて、
採算のとれない地方空港を維持していくという仕組みの行き詰まりを意味しています。
そもそも、国土交通省は空港ごとの財務諸表を作成していません。
そのため、赤字だということが何となく分かっていても、どの程度の赤字なのか、
その金額までは見えない状況です。
普通であれば、財務諸表を作って情報を開示しますが、
多くの地方空港が赤字だという現状では、
意図的に作成していないのではないかと疑われます。

ソウルやシンガポールの空港使用料は1機あたり約10万円ですが、
羽田空港では4倍の40万円です。
また、日本では航空機燃料税として、航空機燃料に税金が課せられています。
これは海外では唯一アメリカが導入していますが、日本の税率の20分の1程度のものです。
国土交通省は、航空機燃料税について2011年度予算の概算要求で、
3年期限で4割下げることを盛り込んでいますが、そもそも廃止したほうがよい税金だと思います。


■航空会社を取り巻く環境
全日空は、JALと比べると民間的な方法で経営を行ってきました。
2011年2月には、香港のヴィクター・チューが率いるファンドの、
ファースト・イースタン・インベストメントや海外航空会社と共に、LCCを設立しています。

また、航空自由化で、海外から日本の航空市場への参入が容易となりました。
JALも含めて国内航空会社への影響は大きいとみられています。

アメリカの航空大手は、金融危機以降、減便や路線統廃合、
人員削減等を進め、旅客需要の回復も影響して、
赤字続きだったデルタ航空やUAL、USエアウェーズも一時は黒字化しました。
しかし、その後中東の内紛による原油高を背景に燃料費が高騰し、
アメリカの大手航空4社は2011年第1四半期には最終赤字に転落しました。

格安航空会社と主要航空会社の対決となった時に、
多くの主要航空会社は厳しい立場に置かれています。

取りあえず債務は無くなりましたが、
JALがこれから本当にやっていけるのかどうかは、結構怪しい状況です。
少なくとも、航空機燃料税をとっている場合ではないと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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