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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ロボット大国のはずが…(2) (産学連携マネジメント/高田 仁)

ロボット大国のはずが…(2) (産学連携マネジメント/高田 仁)

11/05/26

前回は、米国のロボットが福島原発で活躍し、産業としても伸びている一方で、
日本のロボットは出番がなかったことを取り上げた。
今回は、なぜそうなってしまったのかを技術経営(MOT)の観点から考えてみたい。

ロボットは、主には機械技術と制御技術から構成されている。
簡単なおもちゃ程度のものであれば、
出来合いの部品を外部から調達して組み上げれば作動するが、
災害用や軍事用はそう簡単にはいかない。

それなりの長い年月をかけて、機械と制御のコア技術を蓄積する「コア技術戦略」をとる必要がある。
コア技術の蓄積にはそれなりに長い時間を要する。
一方で、長期間をかけて技術開発に没頭している間に
技術そのものが時代遅れになるリスクも孕んでいる。

そこで、「コア技術戦略」では、
技術開発と市場投入を機動的に繰り返して相乗効果を出すことが重要になる。
つまり、コア技術にもとづく製品を世に出し、
市場からフィードバックを得てさらに技術開発を進め、
次の製品を世に出し、・・・といった具合に、
技術開発と市場投入を繰り返しながらスパイラル状に技術を高めていくのがコア技術戦略の根幹である。

判り易い例としてはシャープの液晶技術が挙げられる。
電卓に始まり、液晶ビューカムやアクオスシリーズの薄型TVなど、
コア技術である液晶技術を次々と製品開発に応用し成功を収めてきた。
あくまでも重要なのは、製品の市場投入を繰り返すことでコア技術を高め、磨きをかけることだ。

コア技術戦略を取ると、材料や部材、製品にまとめあげる擦り合わせ、
生産、品質、・・といった関連技術も強化することができ、
総合的により高い競争力を保持することに繋がる。
アイロボット社は、技術開発と市場投入を繰り返してきたため競争力を持ち得た。
コア技術戦略の王道である。

特に機械技術と制御技術の間には言葉や図面に落とせないノウハウが生まれ易く、
その分だけ参入障壁を築き易い。
日本でも、安川電機やファナックなどの産業用ロボットは世界的な競争力を有している。
この分野では、技術開発と市場投入をきちんと繰り返すことによって自らのコア技術に磨きをかけてきた。

では、なぜ災害用ロボットで同じことができなかったのか?
結局のところ、現場(市場)への投入機会が不足したため
コア技術に磨きをかけられなかった点が最大のボトルネックだったのではないかと考えられる。
現場(市場)にロボットを投入出来なかった理由としては、
(1)そもそも現場への投入機会(自然災害、原発事故など)は非定常的にしか発生しない、
(2)災害用や軍事用ロボットはオペレーター側にもそれなりのノウハウや訓練が必要だが、
その機会が十分ではなかった、
(3)現場(市場)投入頻度が少ないので売上も立たず、次の技術開発の原資が得られないという
負のスパイラルに陥っていた、といった点が挙げられる。

結局、コア技術戦略は「実行してなんぼ」の世界なのだが、
その肝心の「実行」が日常的に不足したために、
育つべき技術が育たなかったというのが日本の状況だった。
せっかく世界に冠たるものづくりの力を有しているのに、勿体ない話だ。

私が2009年にMITに滞在したとき、
耳にタコが出来るほど聞いた言葉に”Idea is Worthless, Execution is Worth.”という言葉がある。
アイデアだけでは意味がなく、実行して初めて価値が出る。
だから、皆よいアイデア(着想)を得たら、
それを出来るだけ早く実行して自らのアイデアの正しさを検証するという行動原理が徹底しているのだ。

日本は、昔から「職人技」とか「匠の技」とかを大切にしてきたが、
これらは「実行」を伴っている。
だから競争力があった。
それがいつのまにか、実行よりもアイデア(企画)に重きを置いたものづくりに
陥ってしまっていたのではないだろうか。
あるいは、企業の投資効率や行政の事業評価が、
「現場に出てやってみる」という意識や行動を阻害してしまっていたのではないだろうか。

日本のものづくり力を再考するには、
この点についてもう一度しっかり考えてみる必要があるのではないだろうか。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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