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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 中国のプレゼンス増大をどう考えるか(2) (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

中国のプレゼンス増大をどう考えるか(2) (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

11/05/03

前回はアンガス・マディソン氏の研究を引用しながら、
市場ベースではなくて購買力平価ベースでみると、
中国のGDPと日本のGDPの相対的な大きさは、
随分と違って見えるということについて説明しました。

つまり、最近の一時期を除けば中国は世界のGDPにおいて大きなシェアを維持しており、
今再び、そうした存在に返り咲きつつあるということなのです。

今回は、そうしたやや意外な展開となっている世界のGDPシェアの、
変化の背景について考えてみたいと思います。


■1820年以降の急成長
「紀元後2000年」といってもその前半、
即ち紀元1年から1000年の千年紀には世界の人口は僅か18%の増加で、
1人当たりGDPに至ってはほとんど進歩していないと推計されています。

それに比べると次の千年紀、つまり紀元1000年から2000年の間には、
世界の人口は23倍に増加し、人口1人当たりGDPも13倍となりました。
その結果、世界のGDPは300倍となっており、大きな変化のあった千年紀でした。

この千年紀をもう少し詳しく見ると、紀元1000年から1820年まで、
つまり2回目の千年紀の大半の期間、
1人当たりGDPの伸びは全世界平均で50%程度、人口は4倍の伸びでした。
結果として、世界のGDPは6倍となりましたが、
大きな変化があった千年紀の中では、期間が長い割には相対的な変化は少ないものでした。

より急速な変化があったのは1820年以降です。
人口1人当たりGDPはこれ以降に、9倍以上となり、
人口も6倍なり、GDP全体は50倍以上増加したことになります。

つまり、GDPの変化は1820年以降の200年弱に急速に起こっており、
この時期にどのように対応したかで、国、地域の、
相対的な経済力の大きな差が生じたということになります。


■欧米と中国の逆転
欧州の1人当たりGDPが中国に追いついたのは14世紀のことです。
その後、15世紀から16世紀にかけて、
ルネッサンスや啓蒙運動など思想のパラダイムシフトが起こり、
更に15世紀末から16世紀に植民地経営や貿易拡大を通じた富の蓄積により欧州は躍進しました。
それでも、実質GDPの増加の大半は人口増加を支えることに費やされました。
つまり、1人当たり実質GDPの伸びは緩やかだったということになります。

一方、中国は明の一時期を除くと、交易は限定的で、植民地経営も行わず、
農業生産力の増加は戦争や疫病により阻害されていました。
そのため、1人当たりGDPは停滞していましたが、
中国の人口の伸びは欧州のそれを上回っており、
1820年になっても中国の実質GDPは西欧やアメリカの合計を大きく上回っていたのです。

ところが1820年以降は、西欧で1人当たりGDPがより急速に増加しました。
これは20世紀初頭にかけて起こった産業革命が大きく影響しています。
これにより技術進歩が加速し、物的資本ストックの急速な伸び、
労働力の教育水準と熟練度の向上、国際分業による資源配分効率化が起こりました。

また、1910年以降1950年代にかけて、自動車や多くの家庭用品分野で、
アメリカが大量生産をリードする形で生産性を上昇させました。

さらに第二次大戦後は西欧、アメリカ、日本の間で、
先行する地域の生産性向上をキャッチアップするというパターンが成立しました。

その結果戦間期に躍進したアメリカと西欧が、
世界のGDPの半分以上を占めるという結果になりました。

一方、中国では1840年から1940年の100年間にかけて、
実質的に経済が破綻した状態でした。
外国の侵略に対する軍事衝突や中華思想、技術的鎖国政策、
列強による植民地化がその原因です。
さらに1978年までは、国家の所有と管理の下で、
自給自足的鎖国政策による停滞期を迎えました。
また、文化大革命で成長率が他の共産圏を下回ることになり、
1人当たりGDPは停滞、減少していきました。


■中国のキャッチアップ
しかし、中国も1978年以降の経済自由化、
農業に対する国家管理緩和、地方小企業の興隆、自給自足の放棄、
外国貿易の地方分権化、経済特区、自由貿易地域といった改革、
開放への資本主義的な政策転換によりキャッチアップ過程に突入します。

キャッチアップ過程における生産性の上昇を決めるファクターとして、次の3つがあげられます。

①キャッチアッププロセスにおける位置、
 つまりキャッチアップする余地がどれだけ大きいか
②キャッチアップするにあたって、
 新技術をどれだけ取り入れる姿勢があるかという、新技術の利用度
③市場の柔軟性

これら全ての点で、現状の中国は生産性をさらに大きく向上させる余地があります。
また、現時点で相対的に生産性の低い農業部門従事者が多いということから、
中国に潜在的な生産性向上の余地があるといわれています。

しかし、今後を展望すると、インドなども含めて、
人口の大きい国が既存の技術の模倣による成長を続ければ、
資源・エネルギーや食糧、環境など地球的制約に強く直面することになります。
既に、エネルギー価格の上昇などにその一端が顕著な形で顕れています。

即ち、先進国が急成長期に必ずしも抱えずに済んだ、
こうした問題にも対応しなければならない訳で、
その点ではキャッチアップ過程とは言い切れない、
難しさを抱えているということもできるでしょう。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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