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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > デザインとイノベーション(イノベーションマネジメント/永田 晃也)

デザインとイノベーション(イノベーションマネジメント/永田 晃也)

11/03/16

 研究開発の重要性について何回かに亘ってお話してきましたが、今日は研究開発を伴わないイノベーションはないのかという論点について吟味してみたいと思います。
 実は近年、各国のイノベーションに関する調査結果の中で、Non R&D Innovationの活動が注目されています。企業は自ら研究開発を行わなくとも、外部から要素技術を調達して、自社の製品・サービスに応用することもできるわけですが、そのようなNon R&D Innovationのプロセスにおいて特に注目される機能のひとつがデザインです。
 例えば、今日、携帯電話には非常に様々な機能が搭載することが技術的に可能になっていますが、実際にユーザーにとって必要な機能は限られています。そこで、これは周知の事例ですが、韓国のメーカーなどは技術的なスペックを犠牲にしてデザインの自由度を高め、ユニークなデザインで市場における競争優位を獲得しています。
 以下では、デザインとイノベーションの関係に論点を絞ってみましょう。

 最近、デザイン・ドリブン、すなわちデザイン主導型のイノベーションの重要性を説く議論を頻繁に聞くようになりました。アッターバックらが2007年に著した「デザイン・インスパイアード・イノベーション」の邦訳書は、広く読まれていたと思います。
 科学技術政策研究所の長谷川光一研究員と私は、それ以前にデザイン・ドリブンのイノベーションに関する学会発表を行っています。当初は事例研究を踏まえて、そのようなコンセプトを提唱するに至ったのですが、その後、私たちが平成20年度「民間企業の研究活動に関する調査」を実施した際、デザインのマネジメントに関する基礎的なデータも収集しました。

 デザインという言葉は、意匠、設計、構想など様々な意味で用いられますが、そもそもデザイン・マネジメントに関する統計調査には前例がありませんでしたから、私たちは調査上の概念定義を明確にすることから、はじめました。
 まず、デザイン活動を最も広範に捉えた場合の概念を、「モノや情報に関する構成要素の配置を計画的に決定する行為」と定義しました。その上で、具体的なデザイン活動の類型を5つに区分して提示しました。
 第1に製品等の外観に関する意匠です。これには製品や構造物の外形、色や素材などに関する工夫が例として挙げられます。
 第2に、製品とその外部、すなわち他の機能部品やユーザー等とのインターフェースに関する構想です。例えば、ユーザーの使い勝手を考慮した操作端末の設計などが含まれます。
 第3に、製品などの外形を規定する技術的な内部構造に関する設計です。製品の小型化を図るための機能部品の配置設計などが、これに当たります。
 以上の3つは、主に製造業で取り組まれるデザイン活動ですが、つぎにサービス産業におけるデザイン活動を考慮した類型を2つ挙げました。
 第4の類型は、サービスを提供する空間や媒体の外形・配置などに関する考案です。これには、店舗の内装、商品の包装などに関する工夫が含まれます。
 第5に挙げたのは、顧客満足度の向上を目的としたサービスの提供方法やプロセスの組み替えです。例えば、デリバリーを迅速化するための受注フローの変更などが挙げられます。

 以上のように定義すると、私たちが通常「デザイン活動」という言葉によって表象する多様な活動をカバーすることができると考えました。
 このように定義に基づいた調査を実施したところ、この年の調査に回答した企業のうち約67%では、何らかのデザイン活動が行われていることが分かりました。

 この調査は、資本金1億円以上で研究開発活動を実施している企業を対象にしていますので、そもそも全く研究開発活動を伴わず、デザイン活動のみを行っているというケースは含まれません。しかし、デザインと技術がどのような関係にあるのかについては詳細に把握しています。
 自社の製品・サービスにおいてデザインと技術的な機能・性能の間にどのような関係があるのかを質問したところ、約3割の企業がトレードオフの関係にあると回答し、7割の企業は相互補完的であると回答しています。
 つぎに、両者の間にトレードオフの関係があると回答した企業に対して、自社の研究開発プロジェクトではどちらが優先される傾向にあるのかを質問したところ、88%の企業は技術的な機能・性能が優先されるとし、デザインが優先されるとした企業は12%に止まりました。
 しかし、興味深いことに、プロダクト・イノベーションの実施状況を比較したところ、技術とデザインの間にトレードオフ関係が存在する場合、デザインを優先している企業の方が、技術を優先している企業よりも、イノベーションの実施割合は有意に高かったのです。
 この調査でいうプロダクト・イノベーションは、「技術的に明らかな新規性を持つ新製品・サービス」として定義されていますから、デザインを優先するという方針は、本来この意味でのイノベーションを抑制する筈です。これを、どう考えたらよいでしょうか。
 ひとつの可能な解釈は、デザインを優先する研究開発プロジェクトでは、独創的なデザインの製品を可能にするための新技術の開発が促進され、それがイノベーションの創出に結びついているとみることです。つまり、デザインを優先する戦略が、結果的に研究開発を促進しているのであって、イノベーションの創出にかかる研究開発の機能を、デザインが代替しているわけではないと考えられます。

分野: 永田晃也教授 |スピーカー:

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