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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 資源と鉄鋼業界 (財務戦略/村藤 功)

資源と鉄鋼業界 (財務戦略/村藤 功)

11/03/11

国内鉄鋼トップの新日鉄と3位の住友金属は、
2011年2月3日に合併に向けた検討をはじめたことを発表しました。
今回は鉄鋼業界の動向についてお話ししていきます。


■新日鉄と住友金属の合併
2002年から提携していた新日鉄と住友金属ですが、
両社はそれぞれ神戸製鋼に3.4%の出資を行っています。
しかし、神戸製鋼は今回の交渉から外され、合併の対象には含まれません。
神戸製鋼は合併発表直前にこのことを知らされ、ショックを隠せないようですが、
今後どうやって生き残るのか戦略的選択肢の検討が必要となってきています。

また、新日鉄が約10%を出資する高炉5位の日新製鋼は、
2010年末に新日鉄から合併について打診を受けています。
こちらは社内調整を理由に断っていますが、
やはり将来の経営戦略について考える必要があります。

また、JFEは2002年に川崎製鉄とNKKが統合して発足しましたが、
合併の目的は国内で支配力の強い新日鉄に対する対抗軸の形成でした。
当初は対抗できていたものが、新日鉄と住友金属が合併してしまったために、
JFEにとっても合併新会社にどう対応するのか検討が重要となってきます。
JFEの林田社長は両社の決断に敬意を表していますが、
心中は穏やかではないはずです。
合併から漏れた神戸製鋼や日新製鋼に、
JFEが提携を持ちかける可能性も十分にあります。


■鉄鋼業界の動向
新日鉄と住友金属は、双方を合わせると国内粗鋼生産で約4割のシェアになります。
しかし、世界シェアに換算すると単純合計で3.1%となり、
約6%シェアを持つアルセロール・ミタルの約半分程度に過ぎません。

現在、企業別世界の粗鋼生産の1位はアルセロール・ミタル、
2位が河北鋼鉄集団、3位は宝鋼集団、4位は武漢集団、5位は韓国のPOSCOで、
新日鉄は世界6位、住友金属は23位です。
世界の中で、地位が徐々に下がってきているという状況で、
新日鐵としては危機感を抱いています。

国別でみると世界の粗鋼生産の44%が中国産で、
2位から5位の国の生産量を合わせても中国に届きません。
鉄鋼の需要もグローバル化しており、
日本国内だけでなく海外の市場でも競争していかなければならない状況になってきています。

また、中国は2009年、2010年と2年連続で自動車販売が世界一となっています。
海外市場の拡大を受けて、日本の鉄鋼大手も、約4000億円を投資し、
2013年には自動車用鋼板の海外生産能力を、
現在の2倍に当たる年間約1300万トンに増やす計画です。
これまでの輸出主体から現地生産に転換することになりますが、
日本勢が得意とする、軽量で燃費向上につながる高級鋼板を量産し、
世界的に拡大する環境車の需要を取り込む予定です。


■原料価格の高騰
日本の鉄鋼会社の再編の理由の1つとして、原料価格の高騰があげられます。
鉄鋼会社は、鉄鉱石や石炭を買い付け高炉で鉄を作っていきますが、
近年、原料価格が乱高下しています。鉄鉱石や石炭価格の激動も、
中国による買い占めが原因ですが、
日本勢の決めた値段がそのまま世界の値段となっていた時とは違い、
今や価格支配力は完全に中国の方に移ってしまっています。

そのため、2010年には新日鉄とトヨタの間で、
2010年度上期(4-9月)の鋼材価格を、
2009年度の価格から1トン当たり1万9000円を引き上げるという合意が結ばれています。
新日鉄としてはもう少し引き上げたかったようですが、
トヨタにとっては車1台について2万円弱の鋼材調達費用の上昇になるため、
この価格に落ち着いたようです。

日本の企業は材料の調達価格が上がっても、
それをなかなか販売価格に転嫁させてもらえません。
しかし今回の新日鉄とトヨタの価格交渉では、
新日鉄が限界にあるということで、
鋼材価格上昇分の8割が販売価格に転嫁されました。
とはいえ、2割は新日鉄が吸収していることになります。
新日鉄と住友金属が提携を結んだ2002年の時点で、
いずれこうなるだろうとは大方予想されていましたが、
両社の合併は、規模の拡大で経営基盤を強化し、
世界市場での生き残りを狙ったものだといえます。


■独占禁止法
しかし、合併のためには独禁当局の認可が必要となります。
以前であれば、独禁法に基づいて、
国内でシェアが5割や7割を越えるようであれば規制の対象となってきました。

しかし、グローバル産業について、
世界シェアで考えずに国内シェアで考えていたのでは、
国際競争で勝ち残ることはできません。
政府も対応を進めていますが、
新日鉄と住友金属の合併の審査には約10ヶ月かかるとみられています。

不当な競争が行われないように独禁当局の審査が必要なのは理解できます。
しかし、世界1位のミタルが世界シェア6%の鉄鋼市場で、
合併後に両社合わせてシェア3%になるという話ですから、
あまり審査が長期化しないようにして欲しいと思います。

また、新日鉄は八幡、住友金属は小倉に工場があります。
生産品目は異なりますが、原料調達や物流でシナジーが見込めるため、
工場間での協力についても検討中だとみられています。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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