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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > APEC横浜ビジョンについて(ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

APEC横浜ビジョンについて(ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

11/02/10

昨日はAPEC Japanについてお話しました。今回はその続きで、「緊密な共同体」、「強い共同体」、「安全な共同体」の3つのキーワードで示される横浜ビジョンの内容について少し詳しくお話しするとともに、APEC加盟エコノミー拡大問題にも触れてみます。

■緊密な共同体 
まず、「緊密な共同体」については、地域の経済統合をより進化させるために、貿易・投資の自由化・円滑化を進めるということですが、その実現のためにこれまでのAPEC以上に強調されたのが、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)といわれるものの構築です。これは、現在、WTOのドーハ・ラウンド交渉が停滞していますが、一方では2か国間FTAの増加により、スパゲティ・ボール状態と呼ばれるように煩雑化した貿易事務が円滑な貿易の妨げとなっているとの認識から、これ等の打開策としてAPECワイドの包括的な自由貿易協定を実現させようというものです。

このAPECワイドのFTAに発展させるための母体としては、TPP(Trans-Pacific Partnership)や、ASEAN+3や+6などが挙げられているわけですが、ASEAN+3というのは、アジア通貨危機後に欧米中心の金融秩序に対してアジア内の地域金融協力のためにアジアとしての枠組みを作っていこうというために創生されたもので、金融協力の面では実績がありますが、貿易・投資面では日本もあまり熱心に取り組んできたとは言えません。それに対して、TPPはもともとチリ、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランドという、どちらかというと経済規模も小さい国の間のFTAだったわけですけども、2008年にアメリカが突如交渉参加を表明してから急速にその参加候補国が増え、これが今有力視されているのです。今般、菅政権は日本もこの交渉に参加するかどうかを6月には決定することを表明しています。

■強い共同体 
2番目の強い共同体については、均衡がとれ、あまねく広がり、持続可能で、革新的で、安全な、という5つの特徴をもつ成長を目指して、2015年に向けての成長戦略が策定されました。その成長戦略には構造改革、人材及び企業家精神の育成、グリーン成長、知識基盤経済、及び人間の安全保障などについての行動計画も含まれています。具体的な例を挙げれば、「あまねく広がる成長」ということについては、広い層への成長の機会を提供するということを目指して、中小企業支援、若年層、あるいは女性への機会創出といったことが織り込まれています。

■安全な共同体 
安全な共同体に関しては、テロやサイバーテロから地域経済システムを防衛し、セキュリティを向上するために必要な取り組みを特定し、それらを実施していくことや、自然災害や感染症への対応、保険制度強化、といったことについてのエコノミーの能力の向上が含まれています。更には食糧安全保障に関連して、人間社会にとって絶対的に必要なものであるという食糧の例外的な役割を念頭においた上で、飢餓輸出にもつながりかねない「農地争奪戦」的な農業関連の対外投資を避けて、投資受入れ国政府、現地の人々、投資家、この3者の利益の調和、最大化を目指す、「責任ある農業投資イニシアティブ」の支持などが含まれています。

■加盟エコノミー拡大問題 
こうした内容をもつ横浜ビジョンに加えて、今回の首脳宣言には加盟エコノミーの拡大について、1文が加えられました。それは、「利益」と「成果達成の効率性確保の必要性」に留意しつつ検討を継続するというものですが、加盟エコノミーの拡大によってより大きく享受できる利益と、加盟エコノミーが増加することによって成果につながる意思決定の効率性がそがれることによる不利益を比較しながら、加盟を希望しているインド、コロンビア、ラオス、カンボジアなどの問題を検討していくということです。

現状のAPECメンバーエコノミーというのは、そもそもAPECが形成された時の潜在的な成長地域としてみなされていた環太平洋諸エコノミーからなっているわけです。その後、BRICsの急成長や、成長地域のアジア、南米地域での拡大を考えると、インドを含めた新規加盟問題は当然、検討されるべき問題だろうと思います。逆に、インドを含まないAPECというのは、枠組み自体の将来の価値にも関わってくる可能性があるわけです。

今年はAPEC USA、アメリカが議長国で、ハワイで首脳会議が開催されます。アメリカ政府に近い人は、今年、アメリカはインドの加盟問題を提起するだろうということを述べています。しかし、そこには台頭する中国に対抗させる意図があるのではないかという穿った見方もあり、一筋縄ではいかない問題ではないかと思います。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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