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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > APEC Japanを振り返る(ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

APEC Japanを振り返る(ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

11/02/09

■昨年のAPEC Japanについて 
これまでも何回かAPECに関連した話をしてきましたが、昨年はAPEC JAPANイヤーだったわけです。11月に横浜でその締めくくりとなる首脳会議で行われましたが、その首脳会議を前にした9月以降、民主党の代表選、あるいは尖閣諸島の中国漁船問題、それからロシア大統領の北方領土の訪問など、議長国日本のお膝元、あるいは他のAPECメンバー国との間で政局、或いは外交上の問題があるなど不安要素もありました。しかしながら、菅首相が議長を務めた首脳会議本番では、それまで1年間かけて事務レベル、閣僚レベルで議論し、合意を積み上げてきた成果を「横浜ビジョン」という形で採択して、日本は無事議長国としての務めを果たすことができました。

■APECとボゴール宣言 
貿易、投資の自由化・円滑化のための協力のための枠組みとして始まったAPECですが、今回議長国を務めた日本には、特別な役割が与えられていました。つまり、APECでは1994年に「ボゴール宣言」というものが合意されていて、そこで2010年までに先進国、それから2020年までには途上国も含めて自由で開かれた貿易投資を実現するという目標を掲げられました。以後、その目標がAPECの活動の1つの重要な軸になってきましたが、そのボゴール宣言における先進国の目標達成年が2010年、つまり去年でした。従って、昨年のAPECではその評価と、ボゴール目標に続く将来への方向付けについて合意することが期待されており、それを纏めるのが去年の議長国としての日本の役割として期待されていた訳です。

前者(評価)については、現状ではWTOのドーハ・ラウンドも停滞しているような状況ですので、先進国についても自由で開かれた貿易・投資が完全に達成できたということにはなりにくいわけですが、他の国際機関の基準なども援用しながら、「課題は残るものの顕著な進展を遂げた」と評価をし、その上で、後者(将来への方向付け)について、「地域経済統合」、「成長戦略」、「人間の安全保障」等について議論を行った上で、「緊密な共同体」、「強い共同体」、「安全な共同体」を3つのキーワードとする「横浜ビジョン」をとりまとめました。

中でも、将来に向けた成長戦略に関連した議論の一貫として、「強い共同体」として、あまねく成長が広がる共同体を作るために、APECで初めて女性企業家サミットというのを10月に岐阜で開催しています。また、「安全な共同体」を作るための議論の一貫として、同じくAPECでは初めて食糧安全保障担当大臣会合を10月に新潟で開催するなど、新たなビジョンに沿ったAPECの活動、議論のコンテンツとなる新基軸も打ち出しました。

APECは貿易・投資の自由化、円滑化からスタートしていますので、今回の評価に基いて先進国は残された課題を、また、途上国もボゴール目標達成のための努力を、WTOドーハ・ラウンドの促進を含めて行っていく必要がある訳です。同時にBRICsやアジア新興諸国の急成長などがもたらす経済環境変化により、より幅広い課題に対処することが必要となっているアジア太平洋地域の経済協力のあり方について、APECとして今後どのように応えて行くのか、横浜ビジョンはそのための土台が示せたということになります。

■APECの日本にとっての意味 
今回のAPECは、メンバー国としての日本自身についても大きな意味を持ったと思います。即ち、横浜ビジョンの3つのキーワードの最初の「緊密な共同体」を作るための「地域経済統合」について、日本自身がTPPに参加するかどうかという問題について、菅政権に提起する機会を与えたということです。このTPPの問題は大きな問題ですので、改めてテーマにすべきだと思いますが、単に賛成、反対ではとどまれない問題です。新興国の成長により資源・環境制約などが激変する中で、日本としても矛盾が拡大している農業の問題についてどう対応していくべきか、将来の食糧安全保障をどう考えるか、こうしたことに答えを出すための議論が必要です。

APECについては、非拘束、コンセンサスメカニズムに基づくユニークな枠組みであるがゆえに、内容が具体性に乏しく効果がよくみえないという批判はよくあります。しかし、全世界のGDPの5割、人口、貿易の4割強を占める規模をもつ21の、大きさも発展段階も異なるエコノミーが、長期の課題や目標で合意して、お互いにピア・プレッシャーをきかせながら共に成長を図るような取組みは重要だと思います。特にこれからは、新興国の成長により世界の政治・経済の地図が大きく塗り替えられ用としています。そうした中で、例えばG7がG20に枠組みが変わると、国際的な合意を作っていくのはますます難しくなります。そういう中ではAPECはそのユニークさゆえに、補完機能としても重要な役割を果たせるのではないかと思います。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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