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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 発明資本市場と産学連携(2) (産学連携マネジメント/高田 仁)

発明資本市場と産学連携(2) (産学連携マネジメント/高田 仁)

11/02/03

前回は、新しいビジネスの概念といえる「発明資本(インベンション・キャピタル)」を取り上げ、
産学連携によって「世界の大問題」を解決しようとする取組みが行われていることを説明した。
ただ、「発明資本」に参加すべきか否か、大学は頭を悩ませている。

2010年に、韓国の朝鮮日報が、
「インテレクチャル・ベンチャーズ社が、サムスンを特許侵害で訴えた。
同社の特許ポートフォリオにはソウル大学の特許も含まれていた」という報道を行ったことで、
韓国は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
朝鮮日報の報道によって、
韓国の世論は「韓国の代表的企業であるサムスンを訴えている
インテレクチャル・ベンチャーズ社はパテント・トロールであり、
トロールに加担したソウル大学はけしからん!」という方向に動いた。

「パテント・トロール」とは、
特許を保有して大企業から法外なライセンス料や
損害賠償金を獲得しようとする個人や企業のこと。
当然ながら、真っ当な企業からは目の敵にされている。

インテレクチャル・ベンチャーズ社は、
世界中から約3万件の特許を集めていることは前回述べたが、
それらは「世界の大問題」を解決するためだけに使用されるのではなく、
大企業にライセンスして収益を得ることにも利用される。
これによって、同社は5000億円のファンドに対して、
既に1000億円のリターンをもたらしたと言われている。

実際、12月に韓国を訪問して関係者に取材したところ、
朝鮮日報の報道自体は誤報であることがわかった。
また、インテレクチャル・ベンチャーズ社が
サムスンにライセンスを持ちかけたポートフォリオには、
ソウル大学の特許は含まれていなかったようである。
また同社は、「我々はトロールではないし、トロールのような訴訟はしない」と明言している。

その後、2010年11月に、正式に同社とサムスンとが
包括ライセンス契約を締結した旨がプレス・リリースされたが、
そこには金額など条件面について一切の記載はない。
韓国の取材先では「サムスンは特許侵害訴訟を回避するため、
仕方なく契約せざるを得なかったのではないか。
もともと、サムスンに対して3万件の特許ライセンスを持ちかけ、
その実施料が莫大だったためにサムスンが拒否感を持ったのが
朝鮮日報の報道の背景にあったのだろう」とコメントするところもあった。

一方、この騒ぎに巻き込まれたソウル大学は、
国内で激しいバッシングに晒されたため、
「発明資本」への参画意識がすっかり冷めてしまっていた。
他の大学も、インテレクチャル・ベンチャーズ社が「パテント・トロール」化して
韓国企業の事業を阻害しないかどうか、見極めようとしているようだ。

この状況は、日本の大学にも当てはまる。
インテレクチャル・ベンチャーズ社が提唱する「発明資本」によって
「世界の大問題」を解決するという主旨は素晴らしいし、
その実現方法を練り上げるプロセスは大学の科学者にとって
極めてエキサイティングであることは想像に難くない。
また、大学が保有している未利用特許の活用を促し、そこから収益還元を受ける可能性もある。
一方で、大学の発明特許が、「パテント・トロール」行為に使われると、
大学は社会的信頼を一気に失墜してしまうことになりかねない。

現在、インテレクチャル・ベンチャーズ社は、
保有特許をどこにどのような条件でライセンスしたかといった一切の情報は、
ライセンス先との守秘義務を理由に開示出来ないと主張している。
もしそうだとすると、国民の税金で維持されている国立大学の場合、
大学の研究成果がどこでどう使われているか説明責任を果たすことができない。
少なくとも、ライセンス先との契約内容を大学がモニタリング出来るような手だては必要だろう。

「発明資本」という新しい概念が今後どのような発展を遂げるか、
引き続き要注目だ。大学の知的活動とうまく整合する形で発展して欲しいものである。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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