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TPP (財務戦略/村藤 功)

11/01/28

TPP (財務戦略/村藤 功)
TPP(Trans Pacific Partnership: 環太平洋戦略的経済連携協定)について、
国内での検討が始まったということを以前お話ししました(2010年12月3日放送分)。
今回は、その後の進展についてお話ししていきます。


■農業とTPP
日本国内では、TPPへの参加の是非については対立が続いています。
TPPでは100%の関税撤廃が原則となります。

現在、日本は海外からの農産物に高い関税をかけて農家を保護しており、
例えば、輸入米では関税率は778%にのぼります。
この税率が0%になることで、アメリカやオーストラリアなどから安い農産物が流れ込み、
農業が破綻してしまうと農水省は危機感を抱いています。

一方で、TPPへ参加しなければ、農業だけではなく自動車や家電、機械産業といった、
日本が競争力を持つ分野も共倒れしてしまうのではないかという声も出ています。
例えば、韓国はヨーロッパやアメリカとFTAを結び、中国とも交渉開始を協議しています。
菅首相もTPPへの参加を「平成の開国」と強調していますが、
経産省は業界全体ではなく日本が強みを持つ分野を守るという立場で、
TPPへの参加には前向きです。

また、農業関係者の間でもTPPについては意見が2つに分かれています。
現在、日本の農業では生産者の高齢化が進み、
若手は将来のない農業には従事しなくなっています。
一方で、農家の中でもやる気のある人たちや若い人たちは、
農地の集約や、農協を経由しない流通、顧客の意向を聞きながら行う生産など、
従来とは違ったマーケティングの方法で消費者の需要をつかんでいる農家もあります。
このように、農業の中でも国際競争力を伸ばすことのできる部分があります。

菅首相も従来の農業保護から競争力拡大へ政策を転換し、
2011年6月の農業改革基本方針の策定を前提としてTPP参加を目指しています。


■TPPの参加に向けて
とはいえ、日本はTPPへの参加ではなく、
参加するかどうか検討するために情報収集するという中途半端な立場をとっています。
2006年に4カ国で発効したTPPに、アメリカを中心とした5カ国が参加を希望しており、
2011年11月にハワイで開催されるAPECの首脳会議で、
9カ国でのTPP交渉の妥結を目指しています。

日本も2011年6月からニュージーランドで行われる交渉への、
オブザーバー参加を要請しましたが、断られてしまいました。
そのため、日本が2011年11月にTPPへ参加する場合には、
9カ国の決めたルールや結果を丸呑みするしかありません。
TPPへ加わるのであれば、最初から参加するという立場を明確にし、
交渉へ出席してルールの協議に参加すべきであるという考えもあります。

また、日本だけでなくTPPに新しく加盟しようとしているアメリカやオーストラリアも、
参加については色々と問題を抱えています。
特に、アメリカでは砂糖や酪農製品の輸入自由化に反対の声が出ており、
ニュージーランドなどからは、アメリカが自由化しないのなら、
協定に署名すべきでないという声も出ています。
このように、そもそもTPP加盟国を4カ国から9カ国にするという段階で、
まだ議論が完全には終わっていないという状況です。


■人の移動の自由化
FTA(Free Trade Agreement: 自由貿易協定)の範囲をさらに拡大し、貿易だけでなく、
人の移動の自由化なども含めたものがEPA(Economic Partnership Agreement: 経済連携協定)
ですが、TPPも人の移動の自由化を想定しています。
そのため、今年の6月までに、
人の移動の自由化についても結論を出しておかなければなりません。

日本の人口は減少し、少子高齢化により働き手はさらに減少していきますが、
GDPを維持するために労働力として、
女性や高齢者の他に外国人を日本へ受け入れるということも考えられています。

一方で、島国で隔離されて同じような価値観を持った人の多い日本に、
全く価値観の違う海外の人たちが大勢やって来て、
社会が混乱するのではないかという懸念の声もあります。
多くの国からやって来た人たちが集まるアメリカでは、
彼らに大きな自由が認められていますが、日本への入国が自由化されてしまうと、
単一的な価値観を反映した日本のルールを守らない外国人が増えることになってしまいます。

また、日本の失業者が多い状況で、
これまでのように優秀な人だけを受け入れるというのではなく、
どんな人でも受け入れるということになった場合、
日本の失業者が増えてしまうのではないかということも危惧されています。

どういう形で日本への入国を認めるのか、日本の合意を形成しなければなりません。
一言でTPPといっても、農業以外にも色々な課題が山積しています。
菅首相は平成の開国と言っていますが、実際に開国するのかどうか、
これから議論が本格化していくところだと思います。
いずれにせよ、やはり開国しなければならない状況になりつつあるのではないかと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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