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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 水平分業と企業化機会(イノベーションマネジメント/朱穎)

水平分業と企業化機会(イノベーションマネジメント/朱穎)

11/01/19

■水平分業と企業家機会
水平分業と企業家機会という、イノベーションマネジメントの基本的な要素も含んだ話をします。まず言葉の定義からスタートしたいと思います。水平分業というのは、中間財市場の形成によってこれまで1つの企業内部で行われていた業務活動が専門化され、独立したマーケットへと分離されることと定義されています。例えば伝統的な大企業モデルでは、開発と生産は全て1つの企業内で行われていましたが、水平分業というのはむしろ開発をそれに専門化した企業、更に製造をそれに専門化した企業へと、それぞれ独立した機能に基づいて業務活動が行われるようになったという流れがあります。

水平分業のメリットは、コストの低減によって新しい企業家機会が誕生するということではないかと思います。市場メカニズムの論理に従えば、従来は需要と供給のバランスが崩れることによって、新しいマーケットに企業家機会が誕生するということが言われていました。しかし、こうした市場メカニズムの想定は、そもそも全ての状況において成立するとは限らないという問題があります。むしろ企業家個人として、いかにこうした新しい機会を探索していくのか、その探索活動の方がより重要ではないかと言われています。更に技術革新のプロセスと関連付けて考えると、水平分業のように既存のマーケットにおける、例えば製造と生産の機能分化によって、新しい技術機会として新規参入も促進されると考えられます。

■ファブレス企業とファウンドリー企業
論理的な話、流れというのは以上のようになります。次に具体的にどういう事例があるのかということをお話します。今日は、半導体産業におけるファブレス企業とファウンドリー企業の生成について見てみたいと思います。ファブレス企業というのは、そもそも設計のみ行われる企業という定義に対して、ファウンドリー企業というのは製造のみ行われている企業です。こうした流れを歴史的に見ていきますと、半導体産業における水平統合の主な原因として、まず設計、専用技術と製造専用技術の普及によって促進されたと言われています。

半導体産業の生成期としまして、例えば50年代から70年代においては、製造と生産現場におけるいわゆる濃密なコミュニケーションと相互作用が非常に重要という時代がありましたが、こうした濃密なコミュニケーションによって品質が向上したという時代背景がありました。ただし80年代以後になりますと工程の自動化が進み、更に特定の技術は専用機械に具現化されるようになったということです。製造に必要な設備投資が非常に巨額になり、高い稼働率が当然求められるわけですから、そうした中で、やはり1つの企業内で設計と製造を同時に行っていくということがとても難しくなってきました。それで機能分化という流れになっていくわけです。

更に先程申し上げましたように、製造機械の進化によって、技術は持たなくても機械を買えば製造できるというような技術的な変化もありましたが、その結果として、ファウンドリー企業と呼ばれる製造のみを行われる企業が増えてきました。これに対して、例えば製造設備を持たずに設計のみを行われるという企業体系は当然出てきます。主にアメリカの企業が中心に行われていますが、その設計回路を知的財産としてライセンスすることによって、そのライセンスを色んな企業に売っていくというようなビジネスモデルが誕生しました。

基本的に、こうした大きな技術変化によって、既存企業の能力が大きく変えられたということが必然的な結果になります。例えば50年代半導体の揺籃期においてアメリカの例でみると、軍事関連企業やテレビ製造企業、テレコミュニケーション企業の方がより支配的でしたが、LSIの時代になると企業構造は非常に大きく変わりました。
現在、半導体販売の世界ランキングを見ますと、上位にランキングされているファブレス企業は実は多いです。また半導体の企業を調査しますと、2005年の販売上位の35社の中で24社は70年代以後に誕生した、いわゆるアントレプレナー型企業です。もっと例をいいますと、ザイリンクスという84年に創業した比較的若い企業は、現在PLDデバイスという分野において世界の60%のマーケットシェアを持っているという非常に大きく成長した企業です。
ファウンドリー企業とファブレス企業のどちらがより上位にきているのかというと、やはりファブレス企業の方が非常に上位にランキングされています。ファウンドリーに関していうならば、OEMで生産されているケースが多いので、実は台湾企業は非常に活躍しているのですが、全体のランキングを見ますと、まだまだそこまでランクされていないというのが現状です。
その他半導体産業の事例を見ていっても、やはりこういう垂直統合から水平統合に変わっていくというのは、今の主流と言ってもいいでしょう。IT系企業に関して言うと、やはり製造と設計の分離によって新規参入の機会が非常に促進されましたが、伝統的な製造系企業に関して言うと、必ずしもそうではないというのが現状です。
この辺りははっきり解明されていないというか分析し尽くされていないわけです。どちらかというと企業能力とか、あるいは既存顧客との関係とか、そういうアプローチによって分析されているのですが、逆に例えば企業能力が非常に高くて実は失敗した企業も多いのです。それは一体何なのかと考えると、やっぱり企業のキャパビリティのみでは解決できないということです。むしろマネジメント能力、更にマネジメントの認識というのが最も重要ではないかなと考えております。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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