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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 海外の水ビジネスの獲得 (国際経営/永池 克明)

海外の水ビジネスの獲得 (国際経営/永池 克明)

10/12/30

新興国では経済成長や人口増加で水不足が続いています。
特に中国やインドでは水問題が極度に深刻化しており、
世界の水ビジネス市場は今後急成長する有望市場です。
今回は、水ビジネス市場の現状について、
日本企業や日本政府の取り組みも交えてお話ししていきます。


■海外企業が先行
現在、水ビジネス市場ではフランスを中心としたヨーロッパの民間企業、
いわゆる「水メジャー」が先行し、高いシェアをもっています。
その他、アメリカのGEやドイツのシーメンス、
韓国の企業も政府と連携して積極的にアジアの新興国の水ビジネスに取り組んでおり、
水処理関連ビジネスを受注しています。
欧米諸国に場合、水ビジネスは過去に官営から民営に移管を済ませ、
今や民間企業が水ビジネスに携わることが多くなったことがその理由としてあげられます。

一方、日本企業は浄水化技術や海水の淡水化技術といった、
水ビジネスの要素技術では世界有数のレベルにあります。
例えば東洋エンジニアリングや栗田工業、川崎重工にクボタ、
最近ではJFEのエンジニアリング部門がその代表です。
また、水の浄化や海水淡水化に使う薄膜では東電工や東レ、
旭化成が世界市場でトップシェアを有しています。

それにもかかわらず、高い要素技術を擁する日本勢が、
水ビジネスで欧州勢や他の国の後塵を拝している理由としては、
日本の場合、水ビジネスが民間ではなく、官が行ってきた歴史があります。
すなわち、日本では地方自治体が国内で水道の管理運営を担当してきたという事情があります。
水道事業の個々の技術でみれば日本の民間企業は世界トップレベルの強みをもっていますが、
海外で水インフラをビジネスとして一括して受注するには、
水道施設の運営管理のノウハウも求められます。
しかし、日本国内では上下水道設備の管理運営の99%を自治体が行っており、
民営化率は1%未満です。
国内ではともかく、海外ビジネスの経験が全くない自治体が運営ノウハウを持っているために、
日本企業の海外進出が遅れているという状況が起きています。


■拡大する新興国の水ビジネス市場
経済産業省の予測では、水ビジネス市場は、
2025年には2007年の2.8倍の87兆円に拡大する見込みです。
そのなかでも最大規模の市場である中国では年率10.7%、
インドでは11.7%の急成長が予想されています。

インドの水に関するシンクタンクの担当者は、
将来水不足が原因で戦争が起きても不思議ではないと言っています。
実際、中国は黄河が干上がるという砂漠化の問題を抱えていますが、
その一方で高度経済成長と人口増を遂げています。
このように水の供給と需要の両方からダブルパンチがきいており、水の受給が逼迫しています。
世界の水ビジネス市場は極めて有望ですが、
人類の生存にも関わっているものであり、重要なビジネスであるといえます。


■日本の取り組み
新興国では水道設備を管理運営するノウハウや経験に乏しく、
施設全体をセットで受注し、管理運営も請け負うケースが多くみられます。
しかし、先ほども申し上げたように、従来日本では自治体が上下水道の管理運営主体となり、
設備の建造や機器の製作はメーカーが主導してきました。
しかし海外ではほとんど経験がありません。
日本政府もここにきて世界的に急成長を遂げている水ビジネスの獲得を、
国の成長戦略の中に位置づけ、官民連携による海外インフラ需要の獲得を盛り込みました。
海外での水ビジネス獲得に向け本格的に取り組み始めたのです。

日本の自治体が海外の水ビジネスに携わっている具体的な例としては、
北九州市の下水道の国際貢献活動があげられます。
北九州市はこれまでに中国など8カ国へ職員を派遣、
96カ国から研究員の受け入れを行ってきました。

また、日立プラントや東レといった地元企業と北九州市、横浜市や大阪市、
東京都の官民連携も始まっています。
官と民が組んでビジネスチャンスを手にしようということですが、
日本の場合には海外市場での企業と自治体の連携がカギとなってきます。

しかし、解決すべき制約や課題もあります。
例えば、自治体が公益法人を立ち上げる際には、
議会の承認や市民への説明責任が必要となってきます。
また、海外展開のリスクを誰が負い、誰が経営の舵を取るのか、
という問題に関してもまだ踏み込んだ議論は十分になされておらずこれからという状況です。

しかし、今や、新興国市場を中心に巨大なビジネスが開けており、
フランス、ドイツ、アメリカ、韓国等の外国政府と企業は連携して受注を決めています。
先行する海外勢との差を縮小させるためにも、日本の早期の市場参入が急務となっています。
日本にはあまり多くの時間は与えられていません。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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