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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 国際物流の環境問題1(国際ロジスティクス・国際経営/星野 裕志)

国際物流の環境問題1(国際ロジスティクス・国際経営/星野 裕志)

10/12/28

先月、九州大学で国際物流関連の学会が開催されて、
国際物流における環境問題がメインテーマに取り上げられました。
今回は、国際物流における環境問題についてお話したいと思います。


■日本のCO2排出量

少し古い数字になりますが、2005年の時点で世界のCO2排出量の内
13%が世界の輸送から生じるといわれています。
例えば、工場や発電所からCO2が出るということは、
誰でも容易に想像ができると思うのですが、
自動車あるいは船舶、航空機が排出する量も無視できません。
トラックや自家用車を含めた自動車の陸上交通機関からの排出が1番多く、
航空機が全体の13%、船舶が3%という排出量になります。

2007年のCO2の日本の排出量は、世界の4.3%、約13億トンといわれています。
以前、鳩山前首相が、全ての主要国が参加するという前提で、2020年までに
1990年比25%減少させるという非常に大きな数字を宣言されました。
達成できるのかなと疑問に思いましたが、より達成可能な数字としては、
京都議定書で出された1990年を基準年として
2012年までに6%の排出量削減という数字を求められています。
この数字であれば現実的に達成可能な数字かなと思いますが、
抜本的な取り組みをしなくてはいけないことは間違いありません。

日本の中での輸送の占めるCO2の割合は若干高く、全体の18.9%になります。
世界の平均が13%であるのに対して、日本は若干高く、
内訳は自動車からの排出量が圧倒的に高くて87%を占めます。
続いて、船舶が5%、航空が4.4%です。
日本は、海外との貿易(輸出・輸入)は全ての量が航空機と船舶に
頼っているので、この量は今後どんどん増えていくと思われます。
ところが、CO2は抑え込まなければいけない、CO2排出量を
下げなくてはいけないとなると、簡単なことではありません。


■船舶が引き起こす環境問題

船舶は、重油を燃焼させてエンジンを動かすので、
船舶のCO2はこの排気ガスから出ます。
排気ガスは、CO2だけではなく、硫黄酸化物のSOx、
窒素酸化物のNOxも含んでいて、CO2だけが問題ではありません。
更に、CO2の排出量だけがよくクローズアップされますが、
船舶はそれ以外にも環境に問題のある部分があります。

一般の方には馴染みがありませんが、船舶を安定して
航行させるために海水を船底に張っています。
水は、空の船の時には入れる必要がありますが、積荷を入れると
重心が下がって沈むので、この海水はいらなくなります。
そうすると、出発した時に大量の水を、例えばコンテナ船でいうと
全貨物の積載量の3割くらいの海水を注入して、現地に行って貨物を
積み込んだ時には、持ってきた海水を現地の海水の中に全部排出します。
もちろん、どちらも海水なので、大きな影響はなさそうに見えますが、
実は違う場所で積んだ海水なので、最初の積み込んだ水を現地で排出すると
その中に様々な浮遊性生物といわれているプランクトン、藻、ヒトデが
含まれていて、これが現地の生態系を狂わせているそうです。
例えば、オーストラリアでは、アジア近海で積み込んでいた水を
現地で排出したことで、現地にあるホタテや蛎などの色々な貝が
死滅したという話もあります。

更には、船底に蛎殻、藻、貝類が付着すると、その分が抵抗になって、
船舶のスピードが落ちてしまうので、出来る限り付かないように、
船底塗料といわれる特殊な塗料が塗ってあります。
以前は、この塗料に毒性のある有機スズ化合物を使っていたので、
少しずつこれが海に溶け出し、水中生物に影響を与えることもありました。
また、船舶の最大の汚染は、流出した油による海洋汚染です。
タンカーや貨物船が、座礁、衝突したことによって流れ出す重油が、
経済的にも、環境にもはかり知れないダメージを与えます。
以前であれば、海洋の浄化作用によって、ある程度浄化できていましたが、
現在これだけ船が大型化して、かつ数が増えているので、
海洋の浄化能力を超えていて、大きな問題になっています。


■環境問題を防ぐイノベーション

船舶が引き起こす環境問題を、イノベーションで
どこまで防ぎきれるか、そのための色々な新しい技術が、
最近の新聞などでも取り上げられているのを目にします。
例えば、甲板に全部太陽光パネルを貼って太陽光を使って
発電することによって、使う重油の量を少しでも減らす技術や、
ちょうど帆船をイメージするような帆船の帆のようなものを
貨物船に付けて、自動制御で風の力をアシストしながら
進むことによって、燃費を向上させる技術もあります。
古くて新しいような発想ですが、車や新幹線が流線型に
できているように、船の形も流線型にすることによって、
少しでも空気抵抗を減らすことも考えられています。
また、船が航行する際に、船底と海水の間で摩擦が起きるので、
その船底と海水の当たる部分の間に空気の気泡を発生させて少しでも
海水の摩擦を減らして、スムーズに進むような技術も実用化されています。

貨物の輸送に欠かせない船舶ですから、この需要これから先も
ますます大きくなるので、今回ご紹介した新しい技術で、
どこまで環境配慮に貢献できるかというところが大きな問題になります。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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