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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 統計から見た企業活動(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

統計から見た企業活動(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

10/12/20

今日は統計から見た企業活動の話ですが、
日銀がまとめている資金循環統計というのがあります。
これは、政府、民間企業、金融機関、家計、海外などの各主体の
金融資産や負債の変動状況から国全体の資金の流れを示している統計です。
2009年度の資金循環統計を見ますと、民間企業(非金融)と家計の資金余剰、
政府と海外の資金不足、要するに家計と民間企業でお金の余った分が
政府と海外の資金不足を埋めるという、従来からの大きな構図には変化はなかったのですが、
さらにその傾向が強まって、長期の停滞状態にある我が国の経済構造が、
また一段と深刻の度合いが増している姿が見てとれます。

具体的な金額を挙げると、民間企業の資金余剰が17.2兆円と、
1年前の7.2兆円から大きく増加している一方で、政府の資金不足が
18.1兆円から36.3兆円へと倍増しています。リーマンショック前には
それぞれの余剰幅、不足幅が縮小しかけていたのですが、今回の金融経済危機を経て
ギャップの縮小の動きが逆転して再び拡大に向かっっています。
簡単にいえば、民間の非金融法人は投資を控える一方、内部留保を厚くして
金融資産を保有、あるいは金融機関からの借り入れを返済しており、
それが経済活動を全体的に低調なものにして、政府の税収減につながるばかりでなく、
景気刺激策のための財政出動の必要にも繋がって、
政府の負債が一段と増えるという関係が鮮明化しているわけです。

日本経済が比較的元気に成長していた頃、すなわちバブル以前の様子は随分と違っていました。
まず、民間企業は積極的な投資のために大きな資金不足の状態にあり、
資金の受け取り手だったわけです。それに対して家計の資金余剰が大きく、
法人企業部門の不足を補うとともに、経常収支が黒字である結果生じる海外部門の不足も
補っていました。
一方の政府部門はというと、余剰であったり、不足であったり、
全体としては均衡していました。
つまり家計の貯蓄を原資に企業が積極的な投資を行い、
それが再び個人所得を通じて再び貯蓄に向かい、また、
政府もその好循環から税収が増えて、それを公共投資などに使い、
企業のための需要創出にも貢献していたという流れがありました。

ところが、バブルの崩壊と共にこの構図は大きく崩れてしまいました。
全体の需要が急速にしぼむ中で企業は投資を抑制して借り入れの返済や
金融資産の積み増しに走り、リストラやコストカットにより雇用者賃金も頭打ちとなりました。
税収が伸びない一方、社会福祉負担は着実に増加していくので、
政府部門の赤字は拡大の一途を辿っています。
ただこうした変化はバブルが原因というより、バブルによって見えにくかったのですが、
むしろその前の2度の石油ショックを経て、日本経済が停止成長に転じた、
そういう意味では1980年頃から生じている変化と見るべきだと思います。

バブル崩壊によってさらに目立っていた企業部門の資金余剰拡大と
政府部門の資金不足の拡大傾向は2000年代の前半まで続きました。
その後はアメリカ経済の好調もあって企業が投資を一時増やしたので、
政府部門の不足幅も縮小に転じていたのですが、今回の金融経済危機後の
企業の投資活動の低迷で、ギャップが再び拡大に向かった訳です。

金融機関は一般には受け身なところがあり、家計部門や企業部門と
政府部門のギャップの拡大をつないでいる訳ですが、
企業に資金需要がない中でも融資返済や預金という形で集まる資金を
運用しなくてはなりません。金融機関は2009年度1年間で民間企業に対する
貸出しが18.8兆円減少したのに対し、国債等を17.2兆円も購入しています。

よく、銀行の貸し渋りということが取り沙汰されますが、これまで説明した変化についても、
銀行による局所的には貸し渋りや、BIS規制など、銀行にとって貸し出しの制約になる
要因の存在が影響した部分がないとは言い切れません。
しかし、同時に民間企業の投資活動に伴う、資金需要自体の変化をしっかり見ておかないと、
経済の構造的な変化を見誤るおそれがあると思います。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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