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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 厚労省の行方 (財務戦略/村藤 功)

厚労省の行方 (財務戦略/村藤 功)

10/12/17

厚生労働省は、2、3年という短期的な話ではなく、
10年、20年先の先を見据えて、
将来的な議論を行わなければならないような問題を多く抱えています。

■社会保障改革
一橋の小黒准教授の試算によれば、
2010年時点で、20歳未満の人の税金、
社会保障関係の生涯収支は8000万円のマイナス、
60歳以上の人の生涯収支は4000万円のプラスになるそうです。
1億2000万円にのぼる収支の差が生じていることになりますが、
このような世代間の不均衡を放置するわけにはいきません。

民主党は消費税を財源として基礎年金を導入しようとしていましたが、
菅首相の消費税発言による2010年夏の参院選大敗で、
消費税の増税が厳しくなり財源の確保は難しくなってしまいました。

現状では、年金、医療、介護等の社会福祉全般を担当する厚生労働省に、
毎年国の予算の半分以上が投じられています。
そのため、担当すべき部門が多岐に渡る厚生労働省は、
一つの省としては大きすぎるのではないかという声も出ています。
長妻元厚生労働大臣も野党の頃の年金問題での活躍で、
大臣に就任した時には国民の期待を集めました。
しかしあまりに守備範囲が大きすぎ、
長妻氏は年金以外の医療、介護、保育園、
雇用などにはあまり手をつけられなかったのではないかという見方もあります。

菅改造内閣では、厚生労働大臣は長妻氏から厚生労働副大臣だった細川氏に代わりました。
日本では総理大臣が頻繁に交代しますが、ある程度の期間、
厚生労働の行政に関わっていないとその仕事内容が分からないということも問題となっています。


■保育所の問題
最近は、保育所の考え方も大きく変わりつつあります。
これまでは昼間に働いている母親でなければ保育所を利用することができませんでした。
一方、幼稚園に子供を通わせる場合、
お昼を過ぎると子供を迎えに行かなければならないということで、
母親はなかなか働くことが出来ません。

しかし、子供が生まれるとすぐに保育所に子供を預けて働きに行くことが普通となり、
幼稚園には子供を通わせたくないという母親が増えてきました。
その結果、2011年中に法改正を行い、保育所の利用要件が変更される予定になっています。
この法改正が通れば、昼間に働いている母親だけでなく、
パートや専業主婦でも子供を保育所に預けることができるようになります。


■厚生労働省分割案
財務省は、高齢化で社会保障費が拡大して財政が厳しくなっていることから、
薬価の見直しや後発医薬品の普及など歳出を抑制しようとしてきています。
もちろん、財務省も社会保障が重要だということは承知しており、
社会保障に予算を優先的に配分しています。
とはいえ、社会保障を政府が全て行うという仕組みを、
厚生労働省が維持しようとしていることには問題があります。

もともと2001年に厚生省と労働省を統合して、
総員5万人を超す厚生労働省が設立されました。
年金、医療、介護、保育、雇用等の社会福祉と労働問題全般を厚生労働省は担当しています。
2007年度の厚生労働省の予算は、国の予算の半分以上にあたる91.4兆円に上りました。

麻生元首相は、首相在任時に厚生労働省を、
社会保障省と国民生活省への分割を突然発表しましたが、
この時には、官僚のみならず閣僚や自民党も慎重だったため、
たった2週間でその構想は立ち消えとなりました。

麻生氏が厚生労働省の分割論を打ち出したときの厚生労働大臣は舛添氏でしたが、
舛添氏は同省を年金、厚生、労働の3つに分割すべきだという持論を持っていました。

民主党に政権が移ってからも、2009年秋当時で行政刷新担当大臣だった仙石氏が、
厚生労働省を文部科学省と合わせて、「子供家庭省」、
「教育雇用省」、「社会保険省」の3分割する案を表明しています。

このように、同省を分割しようとする議論は以前から何度も行われています。
厚生労働省を分割することは意味のあることだと思いますが、
以前から何度もお話ししているように、
成長産業である社会保障を官が全て行おうとすることは問題です。
社会保障を官だけで丸抱えしていると、
少子高齢化社会の日本では財政的に立ち行かなくなり、
消費税の増税ということになってしまうかもしれません。
規制緩和して民間にも参入させ、市場を拡大して民間で雇用を増やすことができれば、
消費税を上げる必要もなくなります。


■制度再構築の問題
日本は明治初期に様々な制度を海外から輸入して、自国の制度を作り上げました。
日本は民法をフランスから導入しましたが、
そのフランスを普仏戦争でプロイセンが破ってからは、
ドイツの制度を多く導入するようになりました。
そのため、ドイツ首相ビスマルクの社会政策に倣い、
戦前に国民皆年金制度や医療の国民皆保険制度が確立され、
その結果日本は世界一の長寿国となりました。

しかし、最近では、少子高齢化の進展により、
年金や健康保険が破綻するのではないかと危惧されています。
もはや働いている若者が高齢者を支えるという制度自体が限界にあり、
制度設計をやり直さなければならないという状況にあります。
制度再設計の方向性は明らかですが、この場合問題となってくるのは、
議論に時間を要するということだけでなく厚生労働省の頭の固さです。

例えば、病院は公的なものであると考える厚生労働省は、
医師が病院を変わる時に自己資本を自治体や政府、
医療法人に返還させる新医療法人制度を導入しました。
医師からすると、自分が頑張った結果を、
最終的に召し上げられるということになってしまいます。

私が経済同友会にいた時にも、厚生労働省から来た役人が、
この新制度の導入について褒めて欲しそうに話していましたが、
その時には民間企業の社長たちから財産権の侵害ではないかという批判を受けていました。
厚生労働省の行方については早急に取り組まなければならない部分も多く、
日本の将来にとって非常に重要な問題です。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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