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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > アジア・パシフィック (財務戦略/村藤 功)

アジア・パシフィック (財務戦略/村藤 功)

10/12/03

最近、盛り上がりをみせているTPP(Trans Pacific Partnership)ですが、
TPPはもともとシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、
チリの4カ国が2006年5月に結んだ自由貿易協定(FTA)が発端となっています。
当初は参加国も少なくあまり注目されていませんでしたが、
2008年以降アメリカやオーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシア等が参加を表明し、
現在の交渉国は9カ国となっています。

ここに来て、アメリカとの関係強化をしたい日本の参加論が急浮上し、大騒ぎとなりました。
菅首相も所信表明演説でTPPへの参加の検討を表明しましたが、
アメリカだけでなく中国もTPPへの興味を表明していることがわかってきました。
今回はTPPを中心にお話ししていきます。


■TPPとは
TPPでは物品の貿易は原則として100%関税が撤廃されます。
農業関係者にとっては貿易の自由化は死活問題ですが、
従来のように特定の産業を保護するために、
2国間でFTAを結ぶという方法が通用しなくなりつつあります。
例えば韓国は既にアメリカやEUとFTAを結び、
巨大なマーケットを有する中国ともFTAを結ぶことを考えています。
そうなると、日本が得意とする自動車や家電でも韓国に追い抜かれてしまうかもしれません。
現状でも、サムソンやLGに日本の家電がシェアを奪われたり、
ソウルの空港や釜山の港のハブ化で日本が出遅れたりと、韓国にリードされています。

しかし、韓国も1997年のIMF危機までは、日本とそれほど変わらない状態でした。
ところが金融危機でIMFが乗り込んできて、
国際化を急速に進めた結果、韓国の状況も大きく変わりました。
その結果、あらゆる分野で日本は韓国に国際戦略で後れをとるということになってしまいました。

TPP参加の問題は農業だけではなく他の産業にも影響してきます。
TPPに参加しなかった場合、日本の自動車産業や家電が打撃を受けてしまうかもしれません。
日本のGDP約500兆円の内、自動車や家電によるものは約100兆円にのぼり、
そのうち6割の60兆円が輸出によるものです。
弱い産業を保護することは重要なことですが、
TPPに参加しないとなると農業生産約9兆円のために60兆円を犠牲にしてしまうことになります。
仮にアメリカやヨーロッパ、中国に輸出できなくなり日本の産業が壊滅してしまった場合、
従業員の雇用もなくなってしまいます。
さすがに菅首相も黙っていられなくなり、「平成の開国」としてTPPの参加の検討を表明しました。


■TPP参加の可能性
従来、ほとんどのFTAは2国間で結ばれてきました。
2国間ならば例外的に農業を保護するということが可能でしたが、
多国間となると農業製品も含めて例外無しに自由化しようという話になってきます。
農水省や農家としては、農業製品の自由化は何としても回避したいところですし、
日本政府も農家の人たちの動きを受けて、
取りあえずは農業を守るという方針をこれまでとってきました。

しかし、今回のTPPの場合には農業の反対側に、
自動車産業や家電産業という輸出産業があります。
農業よりも国際競争力で強みのある自動車産業や家電産業の存亡がかかっているとなると、
農業側の意見だけでTPP参加の判断をすることはできません。

民主党ではTPPについては意見が参加賛成派と反対派の二つに割れており、
現状では立場を明確にはしていません。
既に日本政府としても参加不参加を決めるための情報収集の協議を行うことは決めましたが、
その協議をしながらタイミングをみてTPPに入ろうとしているのではないかと考えられます。
仙石官房長官は、2011年6月の、
農業改革の基本計画の決定というタイミングで、判断すると表明していますが、
農業セクターの改革を進めることとセットでTPPに参加しようとしているとしか思えません。


■インフラ関連事業
これまで、アジアに山のようにインフラ・プロジェクトがあるなかで、
日本はほとんど参入することはありませんでした。
過去、日本のインフラはほとんどがパブリックセクターによって整備・運営されてきたため、
海外進出が非常に難しかったという側面があります。
例えば、東京や大阪の水道事業者が、
日本の総合商社と一緒にアジアに展開しようとしたとしても、
東京都や大阪府・大阪市の水道局ですから、
海外進出について東京都民や大阪市民から理解を得ることは困難です。

かつての日本道路公団も今や分割民営化されているので進出の見込みはありますが、
日本は完全にアジアのインフラでは出遅れたという状況です。
日本企業は、今までちゃんと取り組んでいたとは言いがたい、
アジアの巨大インフラ市場への進出をようやく考え始めたという状況です。

原子力発電では、東芝がウェスティングハウスを買収したため、積極的な動きがみられます。
しかし、日本が持っていった筈の新幹線について、
中国がアメリカに輸出しようとしているというような話もあります。
日本企業が海外のインフラ分野で本当に競争していけるかどうかについては、
かなり怪しいと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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