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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 国際財務報告基準(IFRS)について② (財務会計/岩崎 勇)

国際財務報告基準(IFRS)について② (財務会計/岩崎 勇)

10/12/15

前回お話ししましたように、
日本では2012年に国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards: IFRS)の
採否について決定がなされます。
今回はIFRSの持つ様々な特徴について詳しくお話ししていきます。


■原則主義
まず、「原則主義」とは「細則主義」に対応する言葉です。
この原則主義では、基本原則と最低限の解釈指針のみが示され、
具体的な判断基準としての金額や比率等は全く示されません。

例えば、連結子会社かどうかの判断に50%超基準という形式基準を用いたとします。
しかし、このように明確に比率を示すと、
議決権を49%にすることによって連結外しが起こってきます。
この連結外しを防ぐために、支配している会社は比率に関わらず連結させるというような、
基本的な方針・原則だけを定めるのが原則主義です。

この原則主義の長所は、会計基準が少なくて済むという点です。
現在、アメリカの会計基準は細則主義に基づき数千ページにも上り、
その都度コンピュータ等で必要な部分を探す必要があり、
非常に実務が大変なものとなっています。
そこで、イギリス式に原則主義を採用してできるだけ会計基準を少なくしていけば、
そのような手間もかかりません。


■概念フレームワークアプローチ
次に、例えば、棚卸資産や固定資産のような個別の会計基準を設定する場合には、
それを整合的に作るための基準を設定する必要があります。
これは言うなれば会計の憲法のようなものですが、
「メタ基準」として概念フレームワークを作成し、それに基づいて
整合性ある会計基準を設定していくアプローチが「概念フレームワークアプローチ」です。

そして、個々の会計基準が概念フレームワークに基づき、
一貫性のあるものとして設定できることが、このアプローチの長所として挙げられます。
一方で、特定の理論で概念フレームワークが設定されてしまうと、
実務に悪い影響がでる可能性があるという短所があります。
例えば、現在も導入されていますが、
公正価値が概念フレームワークに取り入れられ深く浸透していくと、
企業の経営が安定性を失うことになることが懸念されています。
また、年金についても、数理計算上の差異等を、
期末時点ですべて計上することになってしまうため、
確定給付型年金が維持できなくなり、確定拠出型年金等に移行することに伴って、
これまでどうり年金のことを心配せずに、
安心して働くことができなくなるというデメリットがあると考えられます。


■貸借対照表アプローチ
そして、IFRSでは、従来の「損益計算書アプローチ」に代わって、
「貸借対照表アプローチ」を採用し、損益計算書よりも貸借対照表を重視しています。
企業の主要な目的の一つとして利益の追求がありますが、
従来、日本では、この利益を損益計算書上で収益と費用との差額として計算するということで、
損益計算書を重視するという損益計算書アプローチの立場が取られてきました。
逆に、アメリカを中心とする金融資本主義の国では、
貸借対照表の資産や負債を重視するという考え方に基づいて貸借対照表を重視しています。
このように貸借対照表で利益計算等を行おうとする考え方が貸借対照表アプローチです。


■公正価値の重視
また、従来、金融商品である有価証券やデリバティブ等について、
その評価基準として「公正価値」の導入が進んできました。
これに対して、IFRSでは金融商品を中心として、
それ以外にも非金融資産である固定資産にまで公正価値による評価の範囲が拡大されています。
そして、公正価値で評価する場合には、
勿論、取得原価ではなく期末の時価で会計処理をします。
そのため、期末の実態をよりよく反映することになり、
投機家・投資家にとっては、公正価値は大きなメリットとなります。

この場合、金融商品等を時価評価することには特に問題ありませんが、
他方で固定資産等の事業用資産を時価評価するということは、
特に日本のように製造業を中心としたような国の場合には、好ましくないと思われます。


■包括利益の重視
さらに、「包括利益」とは、一期間に生じた全ての利益のことを指します。
すなわち、IFRSは貸借対照表アプローチを採用するので、
資産から負債を差し引き、差額として持分つまり資本を計算します。
そして、この資本の期首と期末の差額を包括利益として計算します。
例えば期首に100あった資本が、期末に150に増えていた場合、
50の利益が生じたことになります。

このように、包括利益は貸借対照表というストックから利益計算していくアプローチですが、
この包括利益に対応するものとして、
現在、日本も含めて世界的に使われている「純利益」があります。
この純利益は損益計算書上フローである収益から費用を差し引いて利益計算するという考え方です。
そのため、損益計算書から計算される利益から貸借対照表で計算されるものへ、
利益の概念が変わってくることになります。


■信頼性の軽視
最後に、IFRSでは、貸借対照表アプローチと公正価値測定を重視するあまり、
概念フレームワークにおいて従来主要な質的特性として規定されていた「信頼性」を削除し、
「忠実な表現」へ変更しました。

公正価値評価を行う場合に、市場価値があるものであれば問題ありませんが、
市場価値のないものを評価する場合には話は別です。
すなわち、公正価値を計算する場合、そのデータは、
信頼性の程度に応じて高い順からレベル1からレベル3に分けられますが、
信頼性の最も低いレベル3を公正価値の測定数値として使わざるを得ないこともあります。
このように、信頼性が低いものでも公正価値で測定表示できるように、
信頼性を概念フレームワークから除外し、
忠実な表現というものに置き換えたということになります。

それ故、IFRSの財務諸表は、
投資家が本来求めている信頼性を必ずしも持たない(すなわち信頼性に欠ける)
という側面を持っているということを意味し、注意すべき問題点です。

分野: 岩崎勇教授 |スピーカー:

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