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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 円高と金融緩和 (財務戦略/村藤 功)

円高と金融緩和 (財務戦略/村藤 功)

10/11/12

2010年9月14日に菅首相が代表として再選された翌日の9月15日に、
政府は外為特別会計を使って2兆円の為替介入を行いました。
先進国では金融緩和をおこなっていますが、
日本だけが外為特会という特別会計を持って為替市場に直接介入しています。

今回は、円高と金融緩和の状況についてお話ししていきます。


■日本の介入
今回の為替介入は、一時82円87銭まで円が買われたことを受け、
輸出企業にとって致命的である円高の更なる進行を食い止めるためのものでした。
介入の結果、1ドル85円くらいまで一時持ち直しましたが、
欧米が協力してくれないという状況もあり、
10月末の時点で1ドル80円近くにまで再び上がってきてしまいました。
こうなってしまっては、そもそも介入に効果があるのかどうか疑問に感じてしまいます。

現在、外国為替全体では1日2兆ドルの為替が取引されています。
うち、ドル円外為市場規模に限ってみると1日50兆円になります。
今回は2兆円の為替介入でしたが、
50兆円のうちの2兆円ということを考えるとそれ程大きな額でもありません。
介入することで一時的には相場を動かすことはできても、長期的な効果は期待できません。

現在、日本政府は約100兆円のドルを保有しています。
10%円高になると、国民の税金を10兆円分損することになってしまいます。
こうした日本の為替介入は他の国から批判を受けています。
日本の輸出企業からは政府に為替介入を望む声が出ていますが、
そういう考え方自体がそもそも誤ったものであると思います。


■企業と円高
2010年5月には95円だった円ドルレートは10月末には80円になってしまいました。
円高になると国内企業の輸出競争力は落ちてしまいます。
例えば、一円の円高で営業利益がトヨタでは300億円、
キャノンでは47億円下がるといわれています。

一方で輸入中心のニトリやユニクロを展開するファーストリテイリングは絶好調です。
中には円高還元セールを実施している企業もあり、
円高がいいのか悪いのか本当はよく分からないところではないかと思います。

私がビジネススクールで教えているコーポレートファイナンスからみると、
国ごとのインフレ率の差は為替レートの変動となって表れてきます。
バブル崩壊以降10数年にわたって日本経済がデフレに直面しており、
日米を比較するとアメリカのほうがインフレ率が高く、
日本の方はどちらかというとデフレ気味です。
ここ数年は、日米でインフレ率に約3%の開きがあります。
仮に、2000年に1ドル110円、日米のインフレ差が3%あった場合、
経済の理論上10年後には1ドル82円になることになります。
そのため、実は現在のレートはそれほどおかしなものではありません。

とはいえ、2010年5月まで1ドル95円だった為替相場が80円になってしまったということで、
輸出企業としては非常に困っているという状況です。
企業は想定為替レートを決めた上で、活動を行っていますが、
1ドル80円に近い状況が長引いているため、ホンダやリコー、
TDK、運賃収入がドル建ての日本郵船、
それから海外売上比率が高い武田薬品といった大手企業の間では、
2010年下期の想定為替レートを80円程度にする動きが出始めています。


■製造業の海外移転
また、円高の時には日本国内の製造工場が海外に移転するという構造的な変化が起こります。
要するに日本から輸出したのでは、海外企業と競争しても勝てないということで、
アジアに工場が移転してしまうのです。
1985年のプラザ合意の時には1ドル235円でしたが、
1995年には80円を切り、10年間で3倍くらいの円高が起こりました。

従来はどちらかというと国内に生産拠点を置くことの多かった日本企業は、
円高であっという間にアジアに出ていきました。
そういう意味では、日本国内の雇用は一体どうなってしまうのか、心配になります。
しかし、円高というのは海外の企業を買収する好機でもあります。
日本企業はこれまで、高く買って安く売るという悲しいパターンを多く繰り返してきました。
安く買って高く売るという、あたりまえのパターンを是非やって欲しいものです。


■FOMCの動向
これまで、FRBのバーナンキ議長は金融緩和を進めてきており、
その影響を受けてドルが安くなり円高が進むということが続いてきました。
FRBは11月2日、3日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、
市場の5000億ドルという予想よりも1000億ドル多い、
6000億ドルのアメリカ国債を追加購入することを決定しました。
当初の予定よりも多い額の国債を買うということに驚いた声もありましたが、
これで為替が発表前の1ドル80円、81円から大きく動いたかといえばそうでもありません。

また、FOMCが金融緩和を推し進めることで円高が更に進行した場合、
日銀に介入するよう批判の声が相次ぐのではないかということで、
日銀もFOMCの直後にミーティングをセットしていました。
アメリカが急激な金融緩和を行った場合には、
日本もそれに対応しようと構えていたわけですが、
今のところそれほど大きな変化は起こっていません。

欧米各国は金融緩和を進めてきていますが、
簡単には景気回復しないのではないかと思います。
特に日本の場合、かつての高度成長期並の成長が、
再び戻ってくるというのはあり得ないと思います。
これからの人口減少を考えると、
日本は経済を維持できればまずまずといったところではないでしょうか。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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