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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 為替介入の解説(2)(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

為替介入の解説(2)(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

10/11/02

前回の話の中で為替政策としての金融政策に触れましたが、
今回は逆に為替介入が金融政策に与える影響がテーマです。

今回の為替介入については、不胎化をしないということが伝えられています。
不胎化とはあまり聞きなれない言葉かも知れませんが、
体の中でバクテリアなどが繁殖しないようにするという意味です。
為替介入を行う場合、政府や中銀は普通、自国通貨を対価に市場で
外貨を買ったり売ったりするため、例えば今回の日銀のような
自国通貨売り介入の場合には、決済日である2営業日後には、
政府が保有する外貨準備としての外貨(ドル)が増える一方、
市場に自国通貨である円が供給されることになります。
この市場に供給された自国通貨をそのままにしておくと、
通貨供給量が増えることで金利が低下して金融緩和効果があると同時に、
インフレになり易いということがあります。

一般に、固定相場制度を採用している途上国や新興国、
或いは貿易収支が悪化している国が自国通貨売り介入をする場合、
その結果としてのインフレは国内経済の安定の観点からも、また、
貿易政策面でもせっかく名目為替レートの上昇を介入で抑えても
実質レートは上昇するということからも、それを避けるために多くの場合、
市場から自国通貨を吸い上げるためのオペレーション(債券の売却)が行われます。
それが不胎化です。

つまり、不胎化による引き締め効果で為替介入の金融政策面への
影響を中立化させようとするものですが、もともと海外からの資金流入が
原因で自国通貨に上昇圧力がかかっているような場合には、
不胎化によって国内の金利が上昇し、却って資金流入圧力を強めてしまう
結果となることも少なくありません。固定相場制度を敷いている国では、
通常は資本規制でそうした資本流出入を制限していますが、
規制を厳しくしても資金の流入を完全に遮断することは困難です。
中国でマクロ的な金融引き締め策が効きにくい背景には、
こうした資金流入があると言われ、中国の為替相場政策を
柔軟化すべきという議論の一つの理由ともなっています。

日本でも日銀が円売り介入を実施する場合、通常は財務省が発行する
短期の政府証券(為券)を市中に売却することでその原資である円を調達するので、
外為市場で外貨を対価に円を供給しても、円の流通流は不変、
即ち不胎化される仕組みになっています。しかし今回は、
その政府証券を日銀が引き受けたまま市中に売却しなかったことで、
為替取引により円の供給が増加した、即ち非不胎化介入であったということになります。

こうした非胎化介入策が採られた背景には、金融危機から立ち直りかけていた
世界経済が再びスローダウンする兆しがある中で、EUやアメリカが
金融緩和政策を採っており、それが円高の背景となると共に、
我が国でも日銀に対して更なる金融緩和策を採るべしとの意見が
強まっていたことがあります。しかし、日銀はこの時点では
従来の金融政策の枠を超えて、非伝統的金融政策の領域に
踏み込むことには躊躇しており、そうした中で、今回は介入による円高阻止と、
非不胎化介入とすることで金融緩和効果を持たせるということで、
いわば1石二鳥を狙ったものとの見方ができます。日銀としても
敢えて資金吸収を行わなかっただけで、為替介入の一つの
バリエーションと言うことで、取り組みやすかったということもあったかと思います。

悪性のインフレに対する懸念から、日銀による公債の引受は
厳しく制約されていますが、現在のデフレ状況を脱するためには
日銀が実質的にはそれに近い形で、国債の購入を大規模に行って
通貨供給量をふやすべきだという議論が根強くあります。
今回の円高の原因として日本のデフレが挙げられていることもあって、
そうした議論が勢いを増しているようにも感じられまる。また、
今回の不胎化介入を受けて、非不胎化介入を通じて1石2鳥の形で
それを行うべしとの議論も出ています。ただ、日銀の金融政策の
在り方については、本来、為替相場や介入云々の話とは関係なく、
政府の構造改革への取り組みを促すような形で、また、
副作用の見極めを含めた形で、冷静且つ本質的な議論が望まれます。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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