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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > タイの投資環境(国際経営・国際ロジスティクス/星野 裕志)

タイの投資環境(国際経営・国際ロジスティクス/星野 裕志)

10/10/12

つい先日タイのバンコクとその周辺に出張してきました。
ASEANは2015年に経済共同体(AEC)の設立を目指していますが、
それに向けて海外からタイへの投資はどのようになるのかを
検討する上で、現状を把握することが目的でした。
今日と明日の2回で、タイへの投資環境の現状と
タイのビジネスの位置付けについてお話ししたいと思います。


■タイへの活発な投資

タイと言えば、日産自動車がマーチの日本国内での
生産をやめて、今年の6月30日からは全てタイから
日本に逆輸入を開始したことで話題になりました。
タイと九州の自動車の生産台数は、100万台から120万台程度で
このところ競っていたのですが、九州の昨年の自動車生産は
86万台と100万台を大きく割り込む一方で、今年のタイは過去最高の
160万台に届くと言われていて、大きく溝を空けられています。

また、タイの流通企業が展開するセブンイレブン
(本家はアメリカで、日本で急成長したコンビニチェーン)の店舗数は、
日本とアメリカに次ぐ3番目とのことです。
意外にも、中国ではなく、タイが世界で3番目に
このコンビニチェーンを展開していることになります。
バンコク日本人商工会議所に登録している日本企業は、
現時点で1,300社を超えており、実際に中小企業などの
非加盟の企業を入れるとその倍の約2,600社とのことです。
非常に活発に企業が進出し、現地に直接投資を行っていることになります。


■政治的な不安定性というリスクの実情

一方で、今年の4月から5月にかけて、バンコクでは
死者もでる大規模なデモが発生したのは、記憶にも新しいところで、
政治的な不安定性も懸念されるところです。
実際に5月のデモでは、伊勢丹や紀伊国屋や欧米の高級ブランドの
入居していた市内でも最も規模の大きいニューワールド
というショッピングセンターがデモ隊に放火されて全焼しましたが、
いまだにそのままの状態になっていました。
また現在タイ国内では、5人以上の集会は禁止になっているはずですが、
滞在中は、タクシン派の赤シャツの運動員数十人が集まって、
警察が包囲している場面に遭遇しました。

そう考えていくと、政治的な不安定性というリスクは、
海外からの旺盛な投資に影響しないのだろうか
と当然ながら考えることになります。
今回様々な業種の企業へのヒアリングを実施し、
タイの大学の研究者のお話を聞く限りでは、1990年代の通貨危機や
一昨年のリーマンショックの時期と比べても影響は少ないとのことでした。
実際にデモの続いている間でも、観光業と小売業には
少なからず影響が出たものの、工場の操業には特に影響はなく、
通常通りのビジネスが行われていたとの事です。
日本で報道されていた過激な、深刻な内容との温度差を感じました。
全般的には、タイの投資環境は極めて良好で、多くの企業が
まだまだ進出、拡大をしているというのが現状のようでした。


■タイの持つ利点

これほどまでに日本企業を筆頭に、タイへの直接投資を積極的に
進める理由を考えてみると、タイのもつ様々な利点が見られます。
まず、第一に、アジアにおいてもカントリー・リスクが小さく、
大きなぶれがないという事が挙げられます。
今回の大規模デモを考えても、その政治・経済的なリスクは
相対的に低いという事になります。
第二に、産業基盤や産業の裾野が広い事です。
自動車産業を例にとると、サプライヤーなどの
産業クラスターが出来上がっており、部品などの現地調達が
ほぼすべて可能である事に加えて、現地の企業も
十分に育ってきていることも大きな利点です。
三番目は、タイの位置する戦略的なロケーションです。
インドシナ半島はもとより、ASEAN全域や東南アジアの
中心的な位置づけは、タイ自体の内需に加えて、
輸出にも輸入にも高い競争力があります。
さらには、進出企業にとっては、衣食住などの
生活環境のレベルの高さもあげられます。
また仏教や文化の影響もあるのか、タイ人の温厚さと親近性は、
日本企業にとっては進出先として安心ができることもあるようです。


■ベトナムとの比較

タイを代表する国立のチュラロンコン大学のアジア研究の専門家によると、
最近成長著しいベトナムがタイの地位を脅かすのではないか
との質問を良く受けられるとのことです。
確かに中国への投資リスクを回避するべく、
「チャイナプラスワン」などともいわれ、国民の勤勉性から、
近年ベトナムの重要性も指摘される事が多くなってきました。
その問いに対しては、タイへの外資系企業の投資の歴史の
長さからくる蓄積やインフラストラクチャーなどの基盤のレベルにおいて、
まだまだベトナムは足下にも及ばないとのことでした。

明日は東南アジアの要衝として、海外からの投資を受け入れてきた
タイの今後のポジショニングについて、お話ししたいと思います。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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