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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 海外の医療ツーリズム産業集積と日本、そして九州(国際企業戦略論/永池 克明)

海外の医療ツーリズム産業集積と日本、そして九州(国際企業戦略論/永池 克明)

10/10/05

■アジアを中心とした新たな医療拠点の整備

代表的な医療拠点を挙げると、済州島のヘルスケアタウンがあり、
中近東には、ドバイにヘルスケアシティがあります。
ドバイでは、世界各国から最先端の医療を集積し、
中東における最新医療センターを目指しています。
具体的には医療、医療教育、健康診断、スポーツ医学、
ヘルスケアサポートなどで、潤沢なオイルマネーをもとに
医師も世界中から呼び集め、最先端の医療機器を導入しています。
それからもう1つは、中国の北京に燕達国際健康城が出来つつあります。
これは世界最大規模の国際総合医療施設ということで、
病院であり、外国人も受け入れる国際老人ホームでもあります。
それに加えて医学研究院、国際会議センターもあり、ベッド数が3千床あります。
中国では民間企業では初めてこのような取り組みを始めています。


■日本の動向

アメリカでは、ピッツバーグ大学の周辺、
テキサスメディカル・センター(テキサス州)などの医療ツーリストを
受け入れる医療産業が集積した地域があります。
しかし、日本には、医療メディカルサービスクラスター
のような地域はまだなく、遅れをとっています。
しかし、最近、日本でも取り組みが加速してきて、2009年12月に
閣議決定された政府の「新成長戦略(基本方針)に盛り込まれました。
(私自身、2010年3月4日に経済産業省貿易振興課長から
成長戦略と九州に関し、福岡でヒアリングを受け、
九州の医療ツーリズム拠点化を提案しました。)
そのような意味で、去年から医療ツーリズムの話は、本格化してきていて、
官庁では、内閣府、経済産業省、厚生労働省、観光庁、外務省、
民間では、日本経団連も打ち出そうとしていますが、
まだ具体的な話は進んでいません。


■日本に対する潜在的な需要

医療ツーリズムの潜在的な需要としては、いわゆる新興国の富裕層、
特に中国、ロシア、中近東の人たちの中で、日本のいわゆる最先端の
エックス線装置、内視鏡の治療、MRI、人間ドッグノウハウといった
非常に効率的なメディカルサービスというのを望んでいる人は多くいます。
ただアジア諸国がもう既に先行的に300万人くらい患者を
受け入れているので、日本としては技術優位性と価格競争力によって、
特徴を出していくかが難しいところです。
世界的に見ても、日本はコストが高いですから、そこをどのように克服し、
差別化して、アジアの高所得者層を迎え入れるかが鍵になります。
日本政策投資銀行が調査した日本に渡航する医療ツーリズムの潜在需要は、
2020年時点で年間43万人。医療ツーリズム(含む観光)5,500億円。
経済波及効果は2,800億円と試算しています。

■条件整備が必要

外国から人が来るということで、韓国では、医療ビザが設置されていて、
タイ、インドネシアにも、医療ビザがもう既にあるのですが、
日本はその医療ビザの新設を検討中です。
海外からの患者を受け入れるためには、医療ビザ以外にも条件整備が色々必要です。
そして、受け入れる患者さんの国の、現地国の政府のニーズを聞く必要があって、
どういう人がどういうことを望んでいるかを調べる必要があります。
また、日本から世界へ情報発信しなければいけませんし、
医療サービスを外国人向けに行うので、医療通訳者の育成や、
医療機関を中心に、異文化や多言語化への対応が必要になってきています。


■期待できる効果

医療ツーリズムの体制が整うことは、経済成長に寄与し、
観光と医療を通じて幅広くその地域に人がきて、お金が落ちることで
他産業への波及効果も期待できると思います。医療機関にしても、
国際競争に巻き込まれることで、経営改善を一生懸命行うと思います。
また、医療機関と自治体の連携ということを通じて、
地域の経済の活性化にも通じるのではないかと期待されています。


■九州への効果

私が、2008年に執筆した
『グローバル経営の新潮流とアジア:新しいビジネス戦略の創造』
という本の中でも、既に九州での医療ツーリズムの可能性を述べていました。
九州には、九大をはじめ国立大学、私立大学の医学部が多く存在し、
しかも温泉、リゾート地、観光地もたくさんありますから、
まさに医療ツーリズムの場所になれる可能性が十分にある地域だと思っています。
また、アジア・中国に近く、東京・関西に比べ
生活コストが安いことにも、魅力があると思っています。

しかし、問題点は色々あります。医師会の方々、既存の中小の開業医、
地方の医療機関では、医療ツーリズムを行うことで、国民皆保険の原則が
崩壊するのではないかと心配されています。
医療ツーリズムのような公的医療保険に依存しない民間市場が拡大すると、
これはちょっと問題だという危惧が1つあるようです。
それから医療とツーリズムという、営利目的の組織的な医療行為
というのはいかがなものか、という倫理的な抵抗感もあるようです。
海外のお客さまも大事ですが、まずは自分の国の人たちに、
充分に医療を受けられない人たちがたくさんいるところに、
海外の金持ちだけをたくさん呼んで高級な医療サービスをするのは
どうなんでしょうか、と危惧する人もいます。
それから、もう1つは、海外を受け入れる病院は当然限られているので、
優良・高価格な病院、大きな病院に人材(医師)が集中してしまい、
小さいところや過疎地、地方に人が集まらなくなってしまい、
人材が偏ってしまうのではないかというような危惧もあるようです。
しかし、国際的な眼でアジア等海外諸国の取り組みを見ると、
うかうかしていられない、残された時間は少ない。
このような問題を、トータルとして国を含め、関係者を動員して
コンセンサスをとる必要があります。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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