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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 自動車業界 (財務戦略/村藤 功)

自動車業界 (財務戦略/村藤 功)

10/09/10

アメリカでは、2010年の秋から年末にかけて、
GMのIPO(株式公開)が予定されていますが、
今日は自動車業界の動向についてお話しします。


■アメリカの自動車会社
2010年に入って、GMの業績が回復してきています。
2009年の第4四半期まで、GMは赤字続きでした。
しかし、2010年の第1四半期には最終当期利益が8.7億ドルと、3年ぶりに黒字となりました。
続く、第2四半期も13.3億ドル(約1100億円)の黒字でした。

2009年3月には500億ドル(約5兆円)あった有利子負債も、
同年6月に始めた破産法のチャプター11という法的整理を経て、
6分の1以下の82億ドルにまで削減しました。
この再建ペースは非常に早いものです。
日本としても、JALの再建がGMのように早く進むものかどうか、気になるところです。

GM以外のアメリカの自動車会社も黒字化しています。
フォードは法的手続きをとっていませんが、
2010年の第1四半期は最終損益が21億ドルの黒字でした。

クライスラーは、2010年の第1、第2四半期ともに営業黒字を達成していますが、
政府融資への金利支払いで、いずれの期も最終的には当期赤字となっています。
とはいうものの、業績自体は改善してきており、2011年中のIPOを目指しているという状況です。


■日本の自動車会社
日本の自動車市場に目を向けると、売上や販売台数が回復してきています。
この状況はエコカー補助金の影響を大きく受けていますが、
2010年9月にエコカー補助金は終了してしまいます。
10月以降の自動車販売は、これまでの駆け込み需要の反動で落ち込む見込みです。
そのため、これからどうなるのか、はっきりとした見通しは今のところ立っていません。

また、アメリカや中国も電気自動車に本格的に着手してきています。
ガソリン自動車に強みのある日本の自動車会社は、
電気自動車に移行してしまうことで、
競争力を失ってしまうのではないかという疑惑の声もあります。

現時点では、三菱商事と三菱地所が、
電気自動車用の充電インフラの整備に乗り出しています。
大都市を中心に約100箇所しかない充電器を、
1000箇所程度に増やすというものですが、
100キロ走るのに30分充電が必要だということですからまだまだ改善が必要なようです。


■自動車会社の提携
現在、多くの自動車会社は他の会社と連合を形成しています。
例えば、スズキはGMの頼みで、GMの保有していたスズキ株19.9%を買い取りましたが、
これをフォルクスワーゲン(VW)に引き受けてもらい、スズキ・VW連合が出来ました。
スズキはインドで、VWは中国でシェアナンバーワンということで、
新興国市場に強く、VWとスズキを合わせると世界一の販売規模になります。

また、かつては三菱自動車と提携していたダイムラーですが、
今では日産、ルノーと連合を組んでいます。
ルノーは日産に44.3%、日産はルノーに15%をそれぞれ出資しています。
そのため、ルノーの売上げの方が日産より高いように思う人も多いかもしれませんが、
売上げはそれぞれ、ルノーが4兆円、日産が7兆円、ダイムラーが10兆円となっています。
ダイムラーとしては、自社で開発した小型車「スマート」の調子が芳しくないため、
ルノーに提携を申し入れ、今回の話となりました。
とはいうものの、ルノーも赤字続きで大変な状況にあります。

そのルノーはフランスの会社ですが、フランスにはもう一つ自動車会社があります。
それが、プジョー・シトロエン(PSA)です。
ダイムラーとタッグを解消した三菱自動車はPSAと資本提携の交渉をしていました。
三菱グループは、グループ全体で4400億円の三菱自動車優先株を保有しており、
PSAが三菱自動車に出資することで、このお金が戻ってくると期待していました。
ところがPSAの2009年12月期決算は約1400億円の連結赤字で、
格付けも投資不適格のBB(ダブルB)でした。
結局、PSAとの資本提携は条件が折り合わず破談となり、三
菱グループも優先株を処理できず、三菱自動車のトラブルは解決していないという状況です。

また、単独ではトヨタが、自動車売上げで世界一ですが、
スズキ・VW連合といったグループでみると、トヨタは3番手になります。
トヨタも、日本の自動車会社とは色々と手を組んではいますが、
世界規模での連携というものではありません。


■GMの回復と再上場
アメリカの国内では、GMとトヨタが1位を争っている状況が続いています。
しかし、2010年に入って起きたGMの業績回復が、
GMが本質的に改善したことによって起きたことなのかどうかについては、
よく考えてみる必要があります。
アメリカや中国は経済が回復してきていますが、
ヨーロッパはギリシャ問題の影響もあり、調子はあまりよくありません。

GMの稼ぎ頭はピックアップトラックや大型車ですが、
長期的に考えると、地球温暖化を背景に環境車への需要が拡大するということで、
自動車メーカーは生き残るために、
低燃費の小型車やハイブリッド電気自動車の開発を進めています。
しかし、GMはその開発で先頭に立っているというわけでもありませんし、
業界の中で今後どうするのか最終的な生き残り戦略を打ち出せたわけでもありません。

GMが再上場すると、61%のGM株を保有しているアメリカ政府にお金が入ってきます。
最近は、オバマ大統領も、失業率が改善しない等で支持率が落ちこんでおり、
GMを再生させることで盛り返したいようです。
しかし、GMに約5兆円のお金を注ぎ込んで、
どのくらい政府に戻ってくるのかというのが、そもそも問題です。

今回の上場で、政府が保有する株式を全て売却しても、
投入した資金の全額を取り戻せそうにないため、
アメリカ政府は保有する株式を部分的に売却する予定です。
上場したことで、GMの株価が将来的に上昇しないと、
投入した資金が戻ってこないため、これからどうなるかは、はっきりと分からない状況です。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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