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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > オープン・イノベーション①(イノベーションマネジメント/永田晃也)

オープン・イノベーション①(イノベーションマネジメント/永田晃也)

10/09/08

私は以前この番組で「イノベーション・マネジメント」に関するお話を
18回に亘っていたしましたが、平成20年度から21年度にかけて
文部科学省の科学技術政策研究所という研究機関に行っておりましたため、
しばらくお休みを頂いておりました。
この間にも、イノベーションに関する新しいトピックは
朱先生などが紹介されていましたが、こうして私がお話しするのは暫くぶりですので、
ここ数年の間でイノベーション・マネジメントについて
注目されてきた話題を、まず2回くらいに分けて取り上げてみたいと思います。
それは「オープン・イノベーション」と呼ばれる取り組みです。

オープン・イノベーションとは、ハーバード大学やカリフォルニア大学バークレー校で
教鞭をとってきたヘンリー・チェスブロウという研究者によって提唱されたコンセプトです。
チェスブロウ自身の定義によると、
それは「企業が自社のビジネスにおいて社外のアイデアを今まで以上に活用し、
未活用の自社のアイデアを今まで以上に他社に活用してもらうこと」を意味しています。
なぜ、このような取り組みが必要になってきたのかについては、
一般的な理解が成立しています。
つまり、技術開発コストが益々増大する一方で、
市場での競争が激化しているために製品のライフサイクルは益々短縮しており、
自前主義のやり方では、イノベーションに対する投資から
十分な利益を上げることが困難になっている、というものです。

実際、このような状況に直面した企業が、
イノベーションのプロセスをオープン化することによって
問題解決に成功したという事例も報告されています。
例えば、それは一般消費財メーカーのP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)です。
この企業では、かつて売り上げに貢献する新製品の開発に伸び悩みが生じ、
2000年には株価が半減するという危機に見舞われましたが、
アラン・ラフリーという人物がCEOに就任し、
「コネクト・アンド・ディベロップ」と呼ばれる戦略を展開した結果、
V字回復を果たしたことが知られています。
コネクト・アンド・ディベロップ戦略とは、
社外にある優れたアイデアを発掘し、それを社内に取り込んで改良し、
新製品の迅速な投入に結びつけていくというものです。
すでに一定の成功を収めているアイデアを探索するので、
これはイノベーションの外部委託ではありません。
また、探索の対象は、自社の能力を活かせそうなアイデアに絞り込まれます。
同社のバイス・プレジデントであるラリー・ヒューストンとナビル・サッカブが、
ハーバード・ビジネス・レビューに寄稿した
コネクト・アンド・ディベロップ戦略に関する論文では、
冒頭で「プリングルズ・プリンツ」というヒット商品が紹介されています。
それはポテトチップの一枚一枚に様々な情報をインクジェット方式で印刷した商品ですが、
その印刷技術のもとは、すでにイタリアの大学教授が開発していたものだったそうです。
そのような技術を社内で開発するのではなく、社外で探索した結果、
上市するまでに2年はかかっていた筈の期間が1年足らずに短縮され、
開発コストも大幅に削減されたと報告されています。

これは、「社外のアイデアを今まで以上に活用する」という側面での成功事例です。
Open Innovation in Global Networksという報告書が
2008年にOECDから発行されていますが、
そこで提起された分類方法に従うと、
「アウトサイドイン型」のオープン・イノベーションということになります。
一方、チェスブロウの言う「自社のアイデアを今まで以上に他社に活用してもらう」という側面、
すなわち「インサイドアウト型」のオープン・イノベーションの取り組みについては、
しばしばIBMが事例として取り上げられてきました。
同社も、かつては深く垂直統合された技術に基づくビジネスモデルを展開していましたが、
1992年の財務的な危機を契機に、社外からルー・ガースナーがCEOに迎えられ、
新たな収益源を社外との連携の中に見出していくようになります。
例えば、半導体生産ラインを他社製品の製造工場として提供するとか、
知的財産権の積極的な使用許諾などが行われてきました。

P&GとIBMでは事業ドメインが全く異なりますから、
このような事例を並べてみると、オープン・イノベーションという取り組みは、
様々な状況に適用できる方法のように見えます。
しかし、チェスブロウはただ「オープン・イノベーション」というコンセプトを、
イノベーションのパターンとして提起しているに過ぎないので、
そこには「何をオープンにすべきか」、「どのような場合にオープンにすべきか」、
「どの程度オープンにすべきか」といった具体的な質問に答えられるような理論は用意されていません。

次回は、これらの質問について、私なりに考えるところを述べてみたいと思います。

分野: 永田晃也教授 |スピーカー:

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