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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 新技術の収益化の難しさ(その2 3Mの新CEOの方針)(産学連携マネジメント/高田仁)

新技術の収益化の難しさ(その2 3Mの新CEOの方針)(産学連携マネジメント/高田仁)

10/09/14

前回は、キャノンのSED事業撤退を取り上げて、
新技術の収益化の難しさについて話をしたが、
今回は、イノベーションで有名な3Mがどのような戦略を有しているかについて紹介したい。

3Mは、スコッチテープやポストイットで有名。
コリンズの「エクセレント・カンパニー」にも登場するイノベーティブな会社である。
イノベーションを進めるために、
有名な「15%ルール(勤務時間の15%は自由に使って良い)」や
「汝、アイデアを殺すなかれ」というアイデアの尊重、
プロジェクト発案者が社内の人材を集めてミニカンパニーで事業化をすすめる
「プロダクト・チャンピオン」、所属組織でプロジェクトが認められなくても
隠れて継続出来る「ブートレッギング(密造酒づくり)」など、
自主性を重んじるユニークなシステムを有している。

一方で、売上に占める新製品(発売4年以内)の割合を30%にするなど、
厳しい目標も掲げている。

ただ、90年代の3Mは成長が停滞した。
そのため、2001年に歴史上初めて外部からCEOを招聘し(GE出身のMcNerney氏)、
一連の改革(2X/3X、NTI, NPI, シックスシグマ、中央研究所復活)を行った。

3M関係者によると、シックスシグマの導入はほぼ全社内に行き渡った
(全社員のほとんどが最低でもグリーンベルト資格を保有しているとか)。
それによって、以前の3Mが武器としていた
『自由』に一定の『リズム』が持ち込まれた。
また、社員が会社の方向性を意識し、外部の風を感じるようになった。
更に、用語が全世界の事業所で共通となったので、コミュニケーションが効率化したという。

では、現在のCEOであるBuckley氏は
3Mをどのような方向に向けて経営しているのか?
今年3月のウォール・ストリート・ジャーナルでは、
R&D予算を売上比5.6%に固定する一方で、
「sexyなプロジェクトだけでなく、製造コストを削減し、
既存の製品の延命に貢献するようなBottom of the pyramidの開発にも
目を向けるべきだ」とのCEOの表明が紹介されている。

Bottom of the pyramidにも目を向けることによって、
華々しいプロジェクトは減るかもしれないが、
そのようなプロジェクトは得てしてなかなか大きな収益には結びつかないのが問題だ。
キャノンのSEDは典型的だが、技術革新のサイクルが早く、
技術も多様化が激しい今日、新技術の収益化は益々難しくなっているのだ。

Buckley氏は製造部門で豊富な経験を持っている。
そのため、「ケーキのトッピングばかり目を向けないで、
ケーキの8〜9割を占めるベースの部分(=製造コストを削減し、
既存の製品の延命に貢献する)に目を向けるべき」とメッセージを社内に出し、
収益力の向上を目指しているのである。
「ケーキのベース」部分は、
改善や延命に要する費用は少なくても収益化が比較的楽に実現出来る。
ただ、社内の技術者に言わせれば「技術者としての楽しさは半分」だという。

また、ケーキのベースの部分に注力しすぎると、
新しい革新的なアイデアを生み出す力を弱めてしまうかもしれない。
どこでバランスさせるのが正しいかは判らないが、
どこかでバランスを保たざるをえないことがメーカーの命題となっている。

イノベーションをウリにする3Mが今後どのような進化を遂げるか、これからも要注目だ。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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