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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 水ビジネスの多国籍化 1 (国際経営・国際ロジスティクス/星野 裕志)

水ビジネスの多国籍化 1 (国際経営・国際ロジスティクス/星野 裕志)

10/09/27

糸島市では来年度から上下水道事業の市民サービス業務を
民間委託することが発表されました。
市民向け業務を全面的に民間委託するのは福岡県内では初だそうです。
民間のノウハウを生かした質の高いサービス提供とコスト削減によって、
上下水道料金の改定に反映させたいと報じられています。
水というのは公共事業と考えられていて、水道法で、
「原則として市町村が経営する」とされる水道事業を民営化すると聞くと
少し違和感を覚えますが、海外では水道事業については
一部の業務の民営委託どころかいくつかの民間企業による多国籍化が進行しています。


■多国籍化する背景

水ビジネスが多国籍化する背景には、
今後予想される世界的な規模の水不足と施設の更新や代替需要があります。
後者は、既にある水道のインフラストラクチャーを更新する時期に
そろそろきているので、それに民間事業が参入するということなのです。
まず、世界的な水不足ですが、石油や天然資源と同様に、
世界では水の偏在という問題があります。
つまり世界のどこでも、安心で安全な水が必ずしも手に入るのではないということです。
ただ水があればいいわけではなく、飲める水となると極めて限られています。


■水はタダではない

かつて、「水と安全はタダ」と指摘をされた日本では、現時点で飲料水に不足は感じませんし、
海外に水自体を輸出することが検討されたこともあります。
オイル・タンカーで輸送したり、巨大なエアバッグのような袋を使って
タグボートで牽引するといった方法も実際に試されました。
一方で別の局面からは、日本が海外から大量に輸入する穀物自体が、
日本で必要な水を海外で大量に消費していることとも問題視されています。
そう考えると日本も、世界の水問題については、無関係ではないということになります。

地球温暖化によって世界各地で進行している旱魃や砂漠化の問題もありますし、
開発途上国の人口増加や水源の汚染によって、今後ますます深刻な問題が起こり得ます。
実際にWorld Water Councilという非営利組織が、1997年から3年おきに
世界水会議を開催し、予想される危機的な水不足に対して、
世界で連携して取り組むことが討議されていますが、
現実は予想を上回るスピードで進行しているといえます。


■世界の水問題

例えば、中国は急速な経済発展と共に水の使用量が増加すると同時に、
河川などの水源の汚染によって、水の絶対量の不足が問題となっています。
汚染処理と再生利用、新たな水源の確保と環境汚染の防止が
急ピッチで進んでいますが、使用量の増加といたちごっこです。

またかつて、マレーシアからのパイプラインによる水道の供給に
全面的に頼らざるを得なかったシンガポールは、
まさに国家の水の安全保障の観点から海水の淡水化を検討したり、
家庭の排水を浄化して飲料水とする「ニュー・ウォーター」を開発し、
来年までに国内の全需要の3割をまかなうことを目指しています。
以前にシンガポールに出張した際に、たまたまその日に完成したばかりの
ニュー・ウォーターを飲んでみせる担当大臣をTVで見ながら、
この国ではトイレの排水まで飲むのかと考えたことがありましたが、
実はそんな時代もすぐそこまで来ているということでしょう。

水不足の深刻化のお話をしましたが、もうひとつは上下水道の施設の問題があります。
開発途上国では、水道管で供給される水道の水漏れ、いわゆる漏水率が
非常に多く、水不足とあいまって十分に供給ができない状態にあります。
上水・下水道の完備にもまだまだ時間がかかります。


■日本の水問題

一方で、日本を含めた先進国では、水道施設は比較的行き渡っているものの
それらの施設が更新時期を迎えているという問題があります。
日本の場合では、厚生労働省の試算で、2020年から2025年ごろに、
国内の既存の水道施設に対する更新に要する投資額は
新規投資を上回ることになるそうです。
今後の少子高齢化の進行で税収も減る中で、今後の巨額な
インフラストラクチャーへの投資が困難になるとすれば、
別の方法を考える必要も出てきます。
その選択肢のひとつとして、民営化があり、多国籍企業の存在があります。

明日は水ビジネスの多国籍企業化についてお話をしたいと思います。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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