QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日本企業とイスラム金融(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

日本企業とイスラム金融(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

10/08/24

前回も触れましたように、イスラム金融は
「シャーリア」(人の道)に沿った金融で、利子の禁止など、
いくつかの制約がありますが、その中に、現物取引の前提があります。
現物取引、金融の世界では実需原則などともいいますが、
こういうことがあるために、実需から乖離し、金融工学がもたらした災禍
ともいえる今回の金融危機では、イスラム金融機関は
直接的な影響はあまり受けませんでした。

ところが、ベースとなる実需の投資先が、潤沢な石油マネーで膨らむ
不動産市場であったために、間接的な影響は大きく受けており、
2009年には中東の多くのイスラム金融機関が赤字に陥りました。
この過程で明らかになったのは、イスラム金融の市場における厚みのなさや、
金融安定化システムや倒産法制など、制度面での未整備の問題です。

例えば、倒産法制についていえば、イスラム金融による取引は
イギリス法に準拠をしているものが多いといわれています。
ただ、そこにイスラム的な解釈が採り入れられるという
ところに難しさがあるようです。こうした市場の厚みや、制度面の
整備については、まだ歴史が浅いこと、また、それ故に様々な
事象に遭遇した場合の蓄積に乏しいことが背景と考えられます。
つまり、未成熟であるが故に不確実性のリスクは高い
というのが実態だろうと思います。

ただ昨日も申し上げたように、市場の潜在的な大きさを考えると、
現時点でそうした不確実性があるからといって、このマーケットを無視するのも
逆にリスクが大きいといえるのではないかと思っています。

日本企業の中でイスラム金融に取り組むところは増えてきています。
銀行では、三菱東京UFJ銀行がイスラム金融の部門を立ち上げると共に、
CIMBという現地の金融機関とイスラム式金融、投資銀行分野で提携をしています。
ノン・バンクでは、イスラム金融を利用した資金調達を実施しているところもあります。
トヨタ自動車やイオンの系列の金融会社では、イスラム債である
スクークを使った資金調達を行っています。
両社共に現地での消費者ローンなどの販売金融をイスラム式で行っており、
資金調達面でもイスラム式で行う必要があったということですが、
金額も大きかったので、イスラム式の債権スクークを発行したといわれています。

広義の金融の分野に入る保険ですが、タカフルという
イスラム式の生命保険・損害保険があります。
ここでは日本最大の損保である東京海上日動火災が、イスラムビジネスに乗り出しています。
ホンリョンという地場銀行と合弁会社を設立して、
銀行の支店網を利用して証券商品や投信商品を販売しております。
証券関係でも野村証券がスパイス・ロードという名前を付けて
アジアのイスラム圏に注目しており、野村アセット・
マネジメントの子会社がイスラム運用業務のライセンスを取得して、
マレーシアでイスラム運用業務に参入しています。

こうした企業の取り組みの一方、日本政府のイスラム金融に対する
取り組みは、金融機関の海外での活動を縛らないように金融法制面の
制度改正を行うという、受け身なものに留まっています。しかし、アジアの
債券市場育成という観点からは、このイスラム金融により積極的に取り組む
べき理由があるのではないかと思います。

前回マレーシアがイスラム債の発行市場としては最大と述べましたが、
それはオイル・マネーなどの資金がマレーシアの市場を介して
地域の投資に利用されている可能性があることを物語っています。

日本はこれまでアジアの債権市場の育成を積極的に後押ししてきましたが、
それはアジア諸国が輸出によって獲得した外貨資金が
資金需要のある地場経済の投資にそのまま活用されることがあまりなく、
一旦ロンドンやニューヨークへ吸い上げられ、ヘッジファンドなどの手を介して
再びアジアに投資される形をとってきたことに対する問題意識があります。
こうした形でアジアに再流入する資金は、ファンド・マネージャーの
リスク認識一つや欧米の金融機関の信用不安などを背景に、
非常に不安定な出入りをするということがあります。
つまり本当に地域の成長に役立つような安定的な資金源になっていないのです。

その点、イスラム金融というやや特殊な形態をとったにしても、
地域の資金が地域の事業投資に向かう、あるいは、アジアにとって
自分たちが支払った石油代金を投資資金として、
安定した形で取り込めるということであれば、そのメリットは
小さくないのではないでしょうか。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ