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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > イスラム金融について(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

イスラム金融について(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

10/08/23

今回と次回のテーマはイスラム金融です。

イスラム金融と言っても、日本に住む一般の人々にとっては
ほとんど触れる機会がないので、あまりピンと来ないかもしれません。

しかし、世界のイスラム人口は約15億人といわれ、
宗教人口としては世界で2番目です。
世界の人口の4人から5人に1人はイスラム教徒という計算になります。
また近年、資源価格の高騰により中東には巨額の石油マネーが積み上がっています。
即ち、イスラム圏における金融は人口の面でも、
また滞留する資金の面でも大きな潜在性を持っており、
実際にイスラム金融は急速に成長しつつあります。

イスラム金融とは何かといえば、イスラムの教えによる「シャーリア」(人の道)
に従った金融ということで、何らの役務を伴わず時間の経過だけによる利得として
利子が禁止されている他、現物取引の前提、取引をする双方による損益リスクの共有、
あるいは、摂取が禁じられているアルコール等に係るビジネスの排除
といった特徴があります。

利子が禁止されているので、通常の預金や貸付けは行われませんが、
かわりに「ムダーラバ」という、事業投資のための資金の信託の見返りに
事業収益の分配を受ける信託金融や、
「ムシャーラカ」という、事業へ出資のみならず
経営への参画を行う形での出資金融、
さらには「ムラーバハ」という商品を介した信用取引、
「イジャラ」という通常のリース取引などの取引を扱っています。
また、これらの取引を利用することで、実質的には通常の
預金や貸付に近いことも可能となっています。

イスラム教に沿った金融ということで、歴史も長いと印象を受けがちですが、
始まりは1970年代といわれています。
約40年と歴史が浅い分、金融取引全体の中に占めるシェアは限られています。
中東地域でさえもイスラム銀行の資産の占めるシェアは一般銀行の資産に遠く及びません。

保険などのビジネスを合わせた広義のイスラム金融でみても
2005年に世界全体で1兆ドル程度といわれていますが、
世界のGDPが55兆ドル、世界の金融資産は2008年で147兆ドル
といわれていることからすれば、まだまだ限定的です。
しかし、拡大のペースは急速で、リーマンショック前後の2007年から
2008年にかけては資産成長率が30%前後にも及んだといわれています。

背景には、湾岸諸国の原油収入の拡大だけではなく、イスラム圏の
人々によるムスリム化、より教義に忠実に従う順法精神の重視ということがあります。
イランやスーダンといった厳格なイスラム教国では、
金融資産のほとんどがイスラム金融によるものといわれています。
それに対して、他の多くの中東諸国ではイスラム金融機関と
普通の金融機関が混在していますが、
近年、イスラム金融の利用が顕著に増えてきています。

更に注目されるのが、中東地域以外による積極的な
イスラム金融センター化のための動きです。
私たちにとって比較的身近なアジアでも、イスラム化を国是として進めてきた
マレーシアが1990年代からイスラム金融の育成を図ってきています。
同国はスクークというイスラム式債権の発行額では世界1位で、
イスラム金融センターとして中東のバーレーンと競っています。

世界最大のイスラム教の人口を抱えるインドネシアでも、
出遅れたイスラム金融を活性化することで、インドネシアの金融市場全体の
活性化を図ろうということで、中銀などが熱心に動いています。

さらに、非イスラム圏でもイスラム金融の潜在性に目を付けて、
ロンドンを擁するイギリスやシンガポールでは、
政府がイスラム金融センターとしての発展を積極的に後押ししています。
前出のイスラム債権、「スクーク」の2007年の引き受け実績を見ると、
トップ10にイギリスの銀行が3行、シンガポールの銀行も1行入っています。

もうひとつイスラム金融の潜在性という意味で注目すべきは、
ハラル産業全体としてのネットワーク効果です。
ハラルとはイスラム教で許されたものを意味しており、
イスラム金融もハラル産業の一環です。他の例では比較的
知られている分野に食品があります。イスラムでは豚肉や血液、
アルコールなどを食することが禁じられていますが、
こうしたものの使用を避け、決められた処理手順に従って製造された食品は
「ハラル食品」として認証を取得できます。

このハラル食品産業は日本企業の参入も含めて急速に拡大していますが、
ハラル産業では、金融面ではイスラム金融の利用が推奨されます。
こうしたイスラム的なコンプライアンスが、ハラル産業間の
結びつきを強めることになれば、ハラル産業に係る企業の間で
ハラル事業の相互利用が進み、それがイスラム金融を利用する
企業の増加要因として働くことが考えられます。

次回は金融危機との係りや、実際にイスラム金融ビジネスに
参入している日本企業の活動などをお話します。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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