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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 銀行規制 (財務戦略/村藤 功)

銀行規制 (財務戦略/村藤 功)

10/08/20

主要国の銀行監督当局は金融への規制を強める動きをみせています。
今日は、自己資本比率への規制の動きを中心に、銀行規制についてお話しします。

■自己資本規制強化
これまでは、リスク資産に対して国際業務を行う銀行は8%、
国内業務のみの銀行は4%の自己資本比率が必要であると定められてきました。
ところが2008年に金融危機が爆発した際に、
世界中の銀行が自己資本を不良資産処理に投じたために自己資本不足に陥り、
貸し出しが出来なくなったことで経済危機に拍車がかかってしまいました。

このことの反省として、2009年の秋以降、より多くの自己資本を銀行に持たせるために、
リスク資産に対する自己資本比率を8%から12%へ引き上げることが、
バーゼル銀行監督委員会によって議論されています。

また、現在許されている自己資本の中には優先株や劣後債のように、
本当に自己資本かどうかよく分からないもの(Tier2キャピタル)も含まれています。
そこで、これらを除いた普通株や剰余金を中心とする中核的自己資本(Tier1キャピタル)を、
一定割合確保することの義務付けも同委員会では検討されています。

こうなると、基準を満たすためにアメリカ、ヨーロッパの銀行は、
自己資本を2、30兆円ずつ調達しなければなりません。
また、日本でも十数兆円の規模で株式の発行が必要になるということで、騒ぎになりました。
ところが、なかなか景気が回復しないため、規制を強化すると自己資本が不足し、
銀行が貸し出しに慎重になり、景気回復がさらに遅れかねないということで、
2009年から2010年にかけて、強化を緩やかにしようという考えも出てきています。

中でも、日本やドイツは規制に慎重な立場です。
当初、世界中で2012年から新規制を導入という話がありましたが、議論を経て、
2020年代前半以降の完全実施まで10年くらいの移行期間を設けるということになりました。
移行期間が10年となると、自己資本発行でなくとも、
利益を貯めていくという対応も一応は可能です。


■金融規制法成立
自己資本比率のように全世界の銀行に一律に関わってくるグローバルな話だけではなく、
アメリカの金融規制法や、ヨーロッパの銀行をどのように監督するかという、
国別や地域別の話も一方で盛り上がっています。

アメリカでは金融規制法が2010年の7月15日に成立しました。
アメリカ国民の間でも議論にもなるくらいの大きなトピックでしたが、
金融業界、特に投資銀行業界にとっては厳しい結果となりました。
これまでは、コマーシャルバンクも、投資銀行のように、
プライベートエクイティーファンドやヘッジファンドに出資をしたり、
あるいは顧客の取引やリスクを回避する取引ではなく、
自己勘定でトレーディングしたりして儲けていました。
金融資産はどんどん膨れ上がって大きくなっていたわけです。

今回の金融規制法ではプライベートエクイティーファンドやヘッジファンドへの出資は、
中核的自己資本の3%に制限されることになります。
こうなると、ゴールドマンサックスは自己勘定を使った投資を、
現在の7分の1にしなければなりませんし、
モルガン・スタンレーも今までの3分の1にしなければなりません。
今まで約4000兆円まで膨れあがっていた金融資産を約3000兆円へ、
金額にしてアメリカのGDPに相当する約1000兆円を落とさなければなりません。
これから一体どうやってやるのかということで、慌ただしくなりそうです。

また、アメリカでは住宅金融の問題が大きな影響を与えました。
連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディーマック)が、
住宅ローンの証券化を行い、それが破綻しそうになったため、
2008年にアメリカ政府が十数兆円を投入し、現在も両公社は政府管理下にあります。

一方で、連邦準備銀行の準備預金は最近では1兆ドルと、
金融危機前の約100倍に膨らんでいます。
お金を大量に供給したにもかかわらず、銀行からの貸し出しに回らずに、
連邦準備銀行に戻って来ているのが理由です。
このように、アメリカ経済でお金つまり血液が循環しないため、
思うように経済が回復していないというのが現状です。


■CEBSによる資産査定
ギリシャの粉飾に始まり南欧のポルトガルやスペインも、
財務状況が少し危ないという話になっています。

欧州銀行監督委員会(The Committee of European Banking Supervisors: CEBS)が、
2010年7月に域内20カ国の銀行91行の資産査定を行ったところ、
7行の中核的自己資本比率が6%を切っており、
4000億円の資本不足であること明らかとなりました。

とはいうものの実際にはもっと多くの銀行がもっと多額の自己資本不足であるとみられています。
例えば、JPモルガンは自己資本が不足しているのは7行ではなく17行で、
4000億円ではなく4.4兆円の自己資本が不足していると分析していますし、
ゴールドマンサックスも17行よりも更に多い25行近くが、約4兆円の資本不足にあるとみています。

一方で、64兆円近い損失が発生しているとの声もあり、
一体どのくらいの損失が発生しているのか、見当も付かないという状況です。

ただ、CEBSの見積もりが過小評価であるというところでは一致しています。
CEBSは政府がよくやるようにできるだけ小さい数字を発表して、
あまり不安を煽らないようにしているのだと思われますが、
EUの一部政府の財務が破綻して債務不履行になった場合の損失は、
CEBSが言うよりはるかに大きいようです。


■日本の銀行の状況
世界で自己資本比率が8%に規制されるようになったのは、
日本の銀行がバブル期に色々と活動し過ぎたからだという、
穿った見方が日本の中にはあります。
日本の銀行にとって8%は相当な縛りでしたが、
バブル崩壊後の不良債権処理でその自己資本が足りなくなってしまいました。
その上、増資をしようにも誰も普通株を買ってくれないということで、
優先株や劣後債を発行して何とか凌いできました。

ところが今回の新規制では、優先株や劣後債を除いた、
中核的自己資本というコンセプトが新たに作られます。
中核的自己資本で新たに規制が加わるということで日本の銀行は慌てています。
みずほ銀行や三井住友銀行辺りは、8000億円くらいをとりあえず調達しておこうということで、
普通株を発行しましたが、それに見合ったリターンは得られるのかという声もあり、
株価は下がってしまいました。

世界中で銀行は結構大変なことになっていますが、
中核的自己資本比率は2010年9月に行われるバーゼル委員会の会合で固められる方針です。
中核的自己資本比率については、英米が6%、日独が4%を主張しています。

日本としてはバーゼル委員会で、アメリカやイギリスの委員を説得しないと、
厳しい状況になっていると思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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