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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 成長市場へのアプローチ③(国際経営・国際ロジスティクス/星野 裕志)

成長市場へのアプローチ③(国際経営・国際ロジスティクス/星野 裕志)

10/08/16

7月中旬に、ノーベル平和賞・福岡文化賞を受賞された
グラミン銀行で知られるムハマド・ユヌスさんが、
福岡に来られていたのをご存知の方も多いと思います。
滞在中に何度か会議でご一緒させていただきましたが、
確か70歳だったと思いますが、地球上から貧困問題をなくすための
余りにも精力的な活動に感銘を受けました。
これから「福岡をアジアにおけるソーシャル・ビジネスのハブ(拠点)」として、
福岡市、九州大学を含めて、福岡ではさまざまな取り組みが行われることになります。


■BOPビジネス

ところで、以前のBBIQモーニング・ビジネススクールになりますが、
「成長市場へのアプローチ」というタイトルで、開発途上国などの
これからの成長が期待される市場に向けた企業の戦略について、
解説をさせていただきました。具体的成長が期待される市場とは、
ブラジル・ロシア・インド・中国の4カ国のBRICsに続いて、
ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチンの5カ国を、
そのイニシャルから「VISTA」とくくってみたり、
さらには世界人口を所得構造からピラミッドにみたてて、
その下の部分に位置する40億人を「ベース・オブ・ピラミッド=BOP」と読んで、
今後企業が開拓をしていくということでした。

お話をさせていただいたのは、わずか半年か少し前のことでしたが、
日本企業が本格的にBOPにアプローチするのはいつになるのだろうと思っていました。


■ファーストリテイリングの取り組み

ところが、そのような成長市場への企業のアプローチの動きは、
最近急に加速しています。世界の多国籍企業の動きも活発ですが、
日本企業の中にも具体的な動きが出始めています。

例えば、ユヌスさんの来日中に正式調印されたことですが、
ユニクロのファーストリテイリングが、バングラディシュに
100%出資の子会社「ユニクロ・ソーシャル・ビジネス・バングラディシュ」を設立して、
現地で衣料品の企画・生産・販売をするという構想です。
単価約1ドルで、衣料品を貧困層に販売することや、
現地人の人たちの雇用機会を初年度は250人、
3年後には1,500人から2,000人の規模で創出するという計画です。

さらにその構想に続いて、ファーストリテイリングと東レの間の
戦略的提携を強化するべく、東レが海外企業との合弁で
ファーストリテイリング向けの衣料品の一貫生産工場を
バングラディシュに設立することが発表されました。
さらにこの構想は、両社によって拡大の可能性もあるようです。

ただそうなってくると、前者のファーストリテイリング、ユニクロは、
「ソーシャル・ビジネス」といっていいと思うのですが、
東レが合弁企業で生産を始めることは、慈善性ということではなくて、
まさに「BOPビジネス」なのです。
つまり、同じ企業の成長市場へのアプローチにしても、
「ソーシャル・ビジネス」の形態の慈善事業としての意味合いの強い事業と
収益性を期待しての「BOPビジネス」といわれる事業とが混在していて、
なかなかわかりづらいことになっています。
特に最近の新聞で報道される企業の動きも、
どのような意味合いなのかわかりにくくなっています。
さらには、もうひとつ国連などの国際機関や各国政府や
民間の援助機関による開発途上国の援助を目的とした活動に
企業が関わる形の事業もあります。
そうすると、企業がソーシャル・ビジネスとして開発途上国に
アプローチするのか、ビジネスとして、BOPとしてアプローチするのか、
あるいは援助の一部としてアプローチするのかと、
この3つの形があるということで、非常に分かりづらくなっています。


■ソーシャル・ビジネスとBOPビジネスと開発援助の違い

なかなか厳密には難しいのですが、
これらの違いを簡単に仕分けしてみたいと思います。
まず「ソーシャル・ビジネス」の定義として、
経済産業省のソーシャル・ビジネス研究会では、
①社会性、②事業性、③革新性の3つのポイントが言われています。
解決が求められる社会的課題の解決に向けて取り組むことが社会性ですが、
単なるボランティア活動ではなく、経済的な活動のための財源を
確保できるだけの事業性をもつこと、新しい商品・サービスや、
それを提供するための仕組みやプロセスを開発するということがいわれています。
ビジネスが成功しても、投資に対する収益を持ち帰るのではなく、
現地での事業に再投資するということは、
収益を目的とする企業の本来の姿とは少し異なります。
ビジネスではなくて、企業の社会的責任(CSR)に
基づく行為といってよいかと思います。

一方で企業の「BOPのアプローチとしての事業」は、慈善事業ではなく
あくまでも新規市場における収益性を目的とした事業展開ということになります。
ソーシャル・ビジネスと同様に、現地の人たちと協働しながら
価値を創造するということになりますが、それは必ずしも目的とすることではなく、
購買力のない現地での販売方法や生産の手法などのプロセスに、
従来の先進国での経験を持ち込むのではなく、現地の事情にあわせた
新たな創造を図るということになります。

三番目は、2000年9月の国連ミレニアム・サミットで採択された
国連のミレニアム開発目標では、2015年までに世界の貧困層を
半減させるということがうたわれています。
2015年といえばあと5年のうちに、世界の貧困層を半減させる
というのは壮大な計画です。
その計画に向かって、国連開発計画(UNDP)などの国連機関や
米国の海外援助を行う政府機関である米国国際開発庁(USAID)などの
各国の政府機関、NGOなどの民間団体が企業と協働して、
発展途上国の環境、貧困などの社会的な問題の解決や
インフラ整備などについて、資金や技術やノウハウなどを結集して、
事業を推進することです。
これらは企業の投資や収益性とは異なる考え方の援助の枠組みで考えられます。
ですから、ソーシャル・ビジネスともBOPとも違うアプローチになります。
次回もこの続きをお話したいと思います。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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