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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日航と更正法 (財務戦略/村藤 功)

日航と更正法 (財務戦略/村藤 功)

10/08/13

■更正法適用の申請
JALは2010年1月に更生法の適用を申請し、法的手続の中で再建に取り組んでいます。
しかし、JALの再生を支援している企業再生支援機構と民間銀行の間で意見が対立しています。

企業再生支援機構は特別損失1兆1300億円を計上して、
JALを約9500億円の債務超過にするという作戦をとりました。
その際に、企業再生支援機構は民間銀行に債権放棄を要請しましたが、
7000億から8000億円と金額が大きかったため銀行団は激怒しました。

もともと銀行は巨額の債権、優先株等で損失を被ることを恐れ、
JALの法的整理ではなく、私的整理を希望していました。
結果として政府の意向により法的整理になり、銀行は債権放棄させられるということで、
銀行団は業績が確実に好転する確証が得られない限り追加支援には応じない構えをみせています。
怒る民間銀行をなだめるために、企業再生支援機構は債権放棄の要請額を減額しており、
債権放棄額は上がったり下がったりしているという状況です。


■JALの新経営陣
JALの西松社長は経営責任をとって辞任しました。
後任として、会長には京セラの稲盛氏が、
社長には日本エアコミューター社長の大西氏がそれぞれ就任しました。

一度は赤字体質の国際線からの撤退も囁かれていましたが、
稲盛氏の判断で国際線の継続が決定しました。
また、JALはアメリカン航空やブリティッシュ・エアウェイズとともにワンワールドのメンバーです。
ところが、JALに対してアメリカのデルタ航空が、
同社の率いる航空連合への参加を条件に資金支援を申し出てきました。
JALや国土交通省は、日米路線やアジア路線を多く持つデルタと提携することで、
収入増とコスト削減が期待できるとみていましたが、
支援決定後に稲盛氏はワンワールドに残留することを決定しました。

このように稲盛氏がいくつかの戦略的決断を行ったものの、
どの程度損失を出すかという問題は残っています。

どの程度、国内外の便数を減らし、人員を削減し、
将来の赤字を食い止めるかということで、
徹底的にやってしまいたい企業再生支援機構側と、
なるべく回避可能な負担は避けたい民間銀行側との間で激しい戦いになりました。


■財務の現状
JALは以前から自己資本の不足が指摘されてきました。
2006年には公募増資で1400億円、
2008年には優先株で商社や金融機関から1500億円を調達しています。
しかし、今回1兆1300億円の特別損失を計上したことで、
追加した自己資本も消し飛んでしまいました。
上場廃止となったことで、JALの株式はただの紙切れになってしまい多くの株主は怒っています。

JALの株主には個人や会社が多かったため打撃も相当なものです。
また、銀行も相当数の優先株を保有していましたが、
それ以前にもちろんJALに対する多額の融資をおこなっています。
5200億円強(87.5%)の債権放棄ということで落ち着きましたが、
金額が上がったり下がったりということで交渉は難航しました。

銀行側は債権放棄の額があまりにも多ければ、融資に応じないという姿勢もみせました。
どちらかというと、企業再生支援機構は政府と組んで、
多少無理をしてでもメガバンクからお金を引き出そうとしているので、話は結構大変だといえます。


■JAL再建案
世界的に航空機業界は苦境にあります。
更に、アジアの航空会社の格安路線も就航し、簡単に利益を上げることが出来ない状況で、
JALは当初の31路線から積み増して2010年度下期だけで国内30路線、
国際15路線の合計45路線を廃止することを決定しました。
政治路線が就航している地方空港にとっては、JALの路線が撤退することは大きな痛手になります。

路線を廃止することで、それに関わっている人員の削減や飛行機の売却が必要となってきます。
そのため、飛行機の売却や、早期退職制度に応募する人たちの退職金積み増しで、
特別損失が更に膨らむことになってしまいます。

また一時、JALの企業年金が話題となりましたが、
この時にJALは、OBには3割、現役社員には5割の年金減額を求めました。
始めはOBからの同意が得られませんでしたが、
同意が得られないと最終的に3割を越える削減になるという話が明らかになったことで、
3分の2以上の同意を得ることが出来ました。
これを受けてJALは厚生労働省に年金制度の改定を申請しました。

本当に達成できるかどうかは分からない部分もありますが、
企業再生支援機構は、2010年度中のJAL早期黒字化を目指しています。
最初は従業員の約7000人が人員削減される予定でしたが、
最終的に総従業員数の3分の1にあたる1万5000人まで削減数は増えました。
縮小する時や撤退する時のモチベーションの維持はとても難しいものです。

そういう意味では、再建後に本当にJALがやっていけるのかどうかは、
その時になってみないと分かりません。
JALの人たちには頑張ってもらわなければなりません。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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