QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 運転資本を構成する在庫と売掛、買掛それぞれの管理 (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

運転資本を構成する在庫と売掛、買掛それぞれの管理 (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

10/08/04

前回(2010年8月3日放送分)、今回と運転資本の管理についてお話していますが、
今回は、その運転資本を構成する在庫、売掛、買掛、
それぞれの管理についてお話したいと思います。


■在庫の管理
まず在庫ですが、製造業を例にとると、
種類としては、「原材料」「仕掛品」「製品」、
それから製造過程で発生するスクラップなどの「屑、陳腐化品」、
間接生産資材や潤滑油、修理部品など「貯蔵品、補給品」などいくつかの形態があります。

企業がこれら在庫を保有するのには、それぞれ目的があります。

例えば、「原材料」や「貯蔵品、補給品」であれば、
緊急時やサプライヤーからの調達不能時にも、
在庫を保有することで製造プロセスを止めないで製造を続けることができます。
あるいは大量購入による経済性の追求や、
サプライヤーがある纏まった量を1つの販売単位としている時の妥協、
こういったことも理由としてあげられます。
また「製品」の在庫であれば、顧客の要望に迅速に応え、
顧客のニーズ、商機を逃さないというのが、最も重要な目的となります。

しかし、在庫保有には問題もあります。

在庫保有のための資金負担が利益を圧迫するということばかりでなく、
在庫を保管しておくための倉庫代、保険料、
それから在庫管理のための人件費といった管理費がかかります。
それに加えて、在庫は時間の経過とともに陳腐化していきますので、
それをある程度のところで値引きして処分するという、
そういった処分費用もかかることになります。

製品在庫であれば、その顧客の要望に答えるということを犠牲にしつつ、
どれだけ在庫を絞るかということになりますが、
どの程度の在庫が適正かということについては、一概にはいえません。

原材料についていえば、一つの考え方として、
サプライヤーのリスポンス・タイムやデリバリーの遅延・発注内容との齟齬などを考えた時に、
持っておくべき最低限の在庫である「安全在庫」と、
発注から次の発注までの間に増減する部分である「パイプライン在庫」に、
分けて管理することがあります。
安全在庫については、過去のサプライヤーの実績や季節要因が勘案され、
パイプライン在庫については、年間の消費量、一回の発注にかかる発注費用、
在庫を持つことでかかる維持費用、これらから計算されます。


■JITシステムによる在庫の管理
こうした考えとは全く違う発想で、サプライヤーに非常に短いサイクルで、
自社の工場が継続的に稼動するために必要な最低限の量だけを納入させる、
いわゆる、「ジャストインタイム(JIT)システム」をとる企業も増えています。

この場合、サプライヤーに長期の生産計画を提示して、
それをある程度反映する形でサプライヤーに生産してもらい、
必要に応じてデリバリーしてもらうことで、在庫の徹底的な効率化を図るものです。
しかしながら、保有目的のところで述べたように、デリバリーが止まると即、
製造を止めなければならないというリスクがあります。

先ごろ、中国の自動車部品工場がストライキで止まった際に、
自動車車体組み立て工場も操業停止に追い込まれていましたが、
まさに部品供給が止まると即座に製造プロセスが止まるという、
脆弱性の実例ではないかと思います。


■売掛金の管理
続いて売掛金です。売掛金は、信用販売をすることで発生します。

掛売を行う目的は専ら営業上のものです。
競争相手の提示する条件に劣後しないために、
新規の顧客開拓のため、あるいは既存の顧客により多く買ってもらうためなど、
様々な売掛の状況があり得るかと思いますが、
同時に業界の慣行として日数までほぼ決まっているケースもあります。
一般に伝統的な産業では、長い日数の売掛が慣行となっているようですが、
小売業、例えばスーパーマーケットなどでは、現金販売が主流です。

もちろん売掛にも問題はあります。

売掛では回収までの間、資金負担という資本コストがかかるのはもちろんのことですが、
人件費、データ管理費、回収費などの管理コスト、
さらには債務者の倒産による貸し倒れのリスクなども負うことになります。
この売掛金の管理で重要なのは、どういった相手に信用取引を行うのか、
また、どの程度の期間の支払いを猶予するか、ということです。
それらの点については、「貸し倒れ防止」という資金コストと「販売機会獲得」のトレード・オフ、
即ち両者のバランスで決まります。

そのため、個々の企業の経験に基づいた信用基準を設定して管理することが必要です。
そこでは「貸し倒れが滅多に出ない」というような、
非常に保守的な水準となっているのが良いことのように思えますが、
それではやや厳しすぎる可能性があります。


■買掛金の管理
最後は買掛金です。

買掛金は運転資本の負担の軽減になりますので、
その期間を長くするのは望ましいということになります。
しかし、サプライヤーにとってみれば買掛は売掛になるわけで、
逆の立場で考えてみることも必要です。
即ち、買掛期間を短縮する、あるいは、現金で購入した場合に、
どれだけディスカウントが受けられるか、そういったことを比較して考えてみることも必要です。

企業にとっては、質の良い材料を調達して、確かな技術で生産を行い、
大きな利益を見込んで販売するということは重要なことですけれども、
同時に仕入れた原材料の支払いをきちんと行い、在庫をきちんと管理し、
また商品の販売代金を取り残すことなく回収するということで、初めて企業の活動は完結します。

従って、こうした運転資本の管理に係るシステムなどにも、
それなりに資金を投入することが必要なのではないでしょうか。
また、運転資本の管理は、一概に、数式で解決できる問題ではなく、
経験がものをいう世界でもあろうかと思います。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ