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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 運転資本の管理 (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

運転資本の管理 (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

10/08/03

今回と次回の二回に分けて、企業の運転資本の管理についてお話したいと思います。


■運転資本とは
運転資本を英語でいうと"Working Capital"(ワーキング・キャピタル)になります。
モノを製造する企業を例にとって、単純に言うと、
「企業が行う仕入れ・製造・販売の基本的な流れにかかる資金」あるいは、
「その原材料を購入してその支払いを行って、製造した製品を販売して、
その代金を受け取るまでに必要となる資金」と言うことができます。

通常、企業がこうした事業活動を行う場合に、
原材料の代金の支払いをするためにお金が必要となりますが、
その原材料を用いた製品の売上代金が入ってくるのは、もっと後のことになります。

その間、企業は資金を負担したままということになりますが、
その間に仕入れた「原材料」は、しばしそのまま原材料として倉庫に置かれていたり、
製造ラインに乗って「仕掛品」という状態になったり、
あるいはその製造工程を終えて「製品」になってからも、
販売までの間は引き続き「在庫」という、色々な形の資産として存在します。

更に、販売された時点でも、即座に現金が入ってくるというケースはむしろ少なくて、
多くは「掛け」と言う形で販売されます。
その場合、現金が回収されるまでの間は、「売掛」という資産の形で留まり、
企業は現金の回収を待たなければならないことになります。
つまりこの在庫、売掛という資産の形で存在する間は、
原材料購入のための資金がかかったままの状態になります。

もっとも、その原材料購入の場合も、
現金での仕入れではなくて「掛け」が用いられることがあります。
その場合は現金の支払いが行われるまでは「買掛」という負債が存在することになり、
購入した原材料は在庫という形で存在していても、
支払い自体のお金がかかっていない状態ということになります。


■企業活動の中の運転資本
典型的な製造業の場合の事業の流れは、今の述べたような形になりますが、
企業は通常こうした一連の流れを継続的に行っています。
つまり原材料在庫がラインに乗せられて、仕掛品になる頃には、
新たな原材料が仕入れられますし、また、製品として販売される頃には、
また新たな製品がラインから生み出されます。
同時に、前に販売された製品の売掛金の回収の時期も近づいてくるといった具合です。

こういう企業の活動を、ある平均的な操業が続いている状況で、
例えばカメラを使って、スナップショットを撮るようにみると、
企業には一定の在庫、一定の売掛金、そして一定の買掛金が存在していることになります。
このことは、この企業にとって、在庫と売掛金の部分に運転資本が使われ、
買掛金の分だけ軽減されているということを示しています。
もちろん、製造のためには一定の頻度で設備の購入や更新が必要になりますが、
これは毎日というわけではありません。

運転資本はその点では、仕入れに伴う支払いから、製造を経て、
販売代金の回収に至るまでの企業の毎日の活動、
最も基本的な活動に関わる極めて身近なモノということになります。


■運転資本管理の留意点
そのため、その管理ということについても、常識的なことが多いのかもしれません。
しかし、以下に述べるように企業にとって重要性をもっていることから、
ここで押さえておきたいと思います。

第一に、在庫や売掛金などの運転資本項目は、直接的には収益を生まない一方で、
資金が必要となるため、資本コストというコストがかかります。
従って、運転資本を圧縮しても同じだけの売上が得られるのであれば、
小さく圧縮するほど経営効率が改善して、利益の増加につながるということになります。

第二に、運転資本の内訳の在庫、売掛、買掛は、それぞれに管理コストがかかります。
こうした管理コストを完全になくすことはできませんが、
在庫や売掛の金額を減らすことで、管理費も少なくすることができます。

第三に、運転資本は資金負担そのものなので、その大きさ如何は、
その会社のキャッシュ・フローに直接的に影響します。
例えば、若い会社で売上が急速に増えているような場合、
増加する売上を支えるだけの在庫を持たなければならず、また売掛金も増加するため、
売上が増えていても運転資本の増加によって資金繰りに窮するというようなことがよくあります。

そして第四に、適切な水準の運転資本は、商機を逸しない、
すなわちそのビジネスチャンスを逃さないために重要となります。
つまり、商品をお客さんに選んでもらったり、
またはお客さんの資金繰りの都合に合わせてでも購入してもらうためには、
一定の運転資本が必要となります。


■キャッシュ循環サイクル
財務の観点から運転資本を管理する場合、
在庫、売掛、買掛といった貸借対照表項目の数字を把握しておくことはもちろん必要ですが、
同時に個々の取扱商品ごとに原材料の仕入れから仕掛品として生産過程に滞留し、
更には製品としてのデリバリーといったモノの流れと、買掛決済と売掛決済の関係、
すなわちキャッシュの流れとを両方理解しておく必要があります。

後者はキャッシュ循環サイクルといいますが、その商品ごとに、
在庫保有日数と売掛金滞留日数の合計から買掛金滞留日数を差し引くことで、
支払いから資金の回収までの期間の長さ、その間の日数が計算されます。
これを把握しておくことが、運転資本管理の第一歩です。

次回は、その運転資本の個々の項目である、
在庫、売掛金、買掛金の管理について説明したいと思います。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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