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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日本企業の人材獲得戦略と国際化・グローバル化(国際企業戦略論/永池 克明)

日本企業の人材獲得戦略と国際化・グローバル化(国際企業戦略論/永池 克明)

10/07/29

私はこの放送を通じてこのところ、連続して日本企業の海外進出、
とりわけ新興国市場への進出について述べてきました。
最近の特徴は、これまで国際化を主導してきた電機産業、
自動車産業、機械産業はもちろんのこと、
これまで国内市場中心でやってきたいわゆる内需型産業までもが
積極的に海外に出るようになってきた、ということです。

その流れはさらに加速し、今やあらゆる業界に波及しつつあります。
それに伴い、海外で活躍する人材の確保が企業にとって最大の懸案となってきました。
国内の大学生の就職戦線はリーマンショック以降厳しさを増していますが、
それに加えて、人材獲得の多国籍化によって学生のライバルは
国内の同世代のみならず、世界中の同世代にまで広がりつつあります。
労働市場の国際化は今後、好むと好まざるとにかかわらず、
日本にとっても避けることのできない流れとなってきています。
以前から、海外の人材を確保する戦略の紹介などはありましたが、
実際に日本企業が採用計画や採用戦略を踏み込んで発表することは
ありませんでした。しかし、今は、本気で海外の人材の獲得を
考え始め、発表を行う動きが出てきています。

2010年版通商白書によれば、2020年のアジアの消費市場が
16兆ドルとなり、米国の15兆8千億ドル、欧州連合(EU)の
12兆6千億ドルを上回り、世界最大になる見通しです。
(現在の一番大きな消費市場はアメリカで、二番目がEUで、三番目がアジアです。)
新興国の中間所得層は15.4億人から20年には28.6億人に増え、
その内アジアが20億人を占めています。
日本の人口は今後頭打ちから減少に転じることは確実であり、
国内市場の成長はほとんど期待できません。
各社はビジネスチャンスを海外市場に求め対応を急いでいます。
縮小していく国内市場、1億2000万人を相手にするよりも、
むしろ20億人を相手にした方が、ビジネスチャンスが
大きく広がるという判断だと思います。


■最近発表された企業の事例(世界で戦える人材を作る)

海外で、そういった20億人を相手に商売ができる、ビジネスができる社員が、
今どうしても必要なのですが、国内中心の採用では追い付かないので、
広く海外に人材を求めようとしています。
現地のR&D、デザイン、設計、営業部門の幹部候補生として、
外国人人材を獲得しようとしています。
ここにきて、日本の大企業は、これから海外でどれくらい人を
採用していくのか、数字で出しているところもあります

最近発表された事例でいえば、

(1)三菱重工:海外のグループ会社の社員数を今後5年間で、約4000人増やし、
   2014年には15000人体制とする。一方、国内での新規採用は厳選主義とし、
10~14年度平均で2000人と現在の6割程度に抑える。

(2)ダイキン工業:中国でのエアコン開発者を今年40人から200人に増やす。

(3)パナソニック:来春までにグループ全体で前年度比5割増の1100人の外国人を採用する。

(4)東洋エンジニアリング:インドで正社員の技術者など約170人を採用。
グループ全体では11年までに採用する人員の85%が外国人になる。

(5)ユニクロ(ファーストリテイリング):来年新卒で採用する約600人の半数を
外国人にする。その後は毎年、倍々ゲームで採用する。
数年後の国内外の店長候補と位置付け、大半はまず地元の店舗に配属する。
日本人採用者は全員海外経験させる。

(6)楽天:国内では積極的に日本への留学生を採用。
2010年では398人中17人、2011年では500人中70人が留学生。
新規採用者(日本人)の場合、入社3年目程度でTOEIC 600点以上、
管理職級で700点、執行役員級で750点以上が求められる。


■世界規模での人材の教育・活用の場

外国人人材を幹部候補生として育てるような機関があるのか
という話をしたいと思います。幹部候補生の国際的な教育センターの例としては、
米国・GEのクロトンビルにある研修教育やサムスンのソウル郊外の山奥にある
経営幹部候補者訓練センターなどが有名です。
日本企業も従来から人材教育・訓練には熱心に取り組んできましたが、
これまでは基本的には国内で定期採用した学卒社員を対象としていました。
企業によっては外国人幹部社員の日本での定期的研修も行われていましたが、
最近の動きは、日本に加え、アジアや欧米など含めた幹部教育、
国籍や勤務地にこだわらない一体化した教育を目指す企業が増えています。
世界中の多国籍の幹部人材を一箇所に集めて、クロスカルチャーな中で
ディスカッションをやったり、そこでのリーダーシップを図ったり、
あるいは多国籍のプロジェクトマネジメントの訓練をしたりしています。
欧米企業に比べて大きく出遅れたグローバル規模での社員教育が
今後のグローバル市場での生き残り競争の死命を決するだけに、
日本企業もようやく本気になって取り組み始めたといえます。
日本企業は現在、海外市場重視を本格化していますが、
一般的に海外展開の拡大に優秀な人材に供給が追い付かない状況にあります。
海外で活躍できる能力を持つ日本人が足りない一方、現地人社員は
日本企業の中にある昇進に関する見えない壁の存在などから優秀な人材が
集まりにくく、就職しても定着率が悪く能力にもばらつきがあります。
そのような壁を乗り越えるための企業研修を行っている
日本企業の例を紹介したいと思います。


1)花王

花王はグローバル市場の中では、日本は「大きなローカルの一つに過ぎなくなる」
という問題意識のもと「グローバル一体運営」の人材教育を基本方針としています。
教育プログラムは経営幹部養成コースから始め、花王の国際戦略についての
共通認識を深め、異文化のメンバーとの議論を通して戦略を構築するプロセスを
学ぶとともに、日本人社員には言葉の壁を乗り越えさせています。
以前は、バラバラにやっていましたが、一箇所に集めてクロスカルチャーな中で、
色々な訓練をしているようです。また、外国人には研修をキャリア形成や昇進に
結びつける仕組みも構築し、トップマネジメントへの道も開けるようにしています。

2)東芝

海外子会社トップの45人はすでに外国人で、世界中の幹部候補を、
川崎にある合同研修センターで鍛えあげています。
また、東芝のビジネススクールもあるので、
そこに参加し、多国籍の環境で鍛えあげています。
また、海外のビジネススクールで1週間研究させるということもしています。

3)日立

総合職の50%を海外経験のある人材にしようとしていて、
若手中心に今後3年間で2000人を海外に送ることにしています。
新人も最低1カ月は海外に送り込みます。

4)パナソニック

新卒採用の約8割を海外で実施する予定です。
日本の新卒の学生の就職が厳しいようですが、国内だけでなく、
海外の同世代の学生たちがライバルであり、
また同僚になるというような時代になってきています。
また、幹部ポストの位置付けをグローバルで統一し、
国を超えた人材登用をグローバルに推進するとしています。

5)伊藤忠商事

世界人材・開発センターを国内外5都市に設置し、世界共通の評価項目で
人材データベースを構築しようとしています。
本社の営業部門に外国人を受け入れさせようとしています。


こうしたことに加えて、今後は日本本社の「内なる国際化」が必須になってきます。
グローバル経営のコントロールタワーである日本本社は、世界本社の役割もあります。
そこが今までのように、日本語で経営をする、日本人で固める、
といったことは、これからだんだん通用しなくなると思います。
日常業務の英語化、トップマネジメントの多国籍化がどれだけ進められるかも、
大きな鍵となると思っています。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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