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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 韓国の国家長期ビジョンと日本の対応策(国際企業戦略論/永池 克明)

韓国の国家長期ビジョンと日本の対応策(国際企業戦略論/永池 克明)

10/07/28

韓国も日本と同じく少子高齢化をむかえていて、これから先、
それを乗り越えていくための明るいビジョンを、最近発表しました。
韓国は、日本よりも少し遅れて、2015年辺りを境目にして、
人口が減少、労働力が減少していくそうです。それを踏まえて、
これからどういう長期ビジョンを描くべきか、あるべき姿を発表しました。


■未来企画委員会が展望した「2040年の韓国経済」

6月11日、李明博大統領直属の未来企画委員会は青瓦台にて開かれた
「第7回未来企画委員会」で「未来ビジョン2040」を発表しました。
未来企画委員会が提示した2040年韓国経済の姿は
「国民所得6万ドル、国内総生産(GDP)2兆8000億ドルで
世界10位の経済圏に飛躍、但し、人口の高齢化による労働力の
供給不足が国家的な懸念」としています。

未来ビジョン2040では、韓国経済の持続可能な成長のためには、
システム改革が重要と指摘しています。すなわち、人口高齢化、
資源枯渇などのリスクがある中で、量的投入より
質的成長のためのシステム改革を行うとしています。
開放的社会基盤の上に、創造性のあるグローバル人材育成や、
成長をけん引出来る科学技術養成と持続可能な福祉体制構築の
必要性を強調しています。これは、非常に大胆な提案をしています。


■複数国籍を許容し労働力を拡大すべき

2040年韓国経済GDPは、現在水準より3倍増の2兆7900億ドルになる
と予測されています。但し、人口増加率低下などで経済成長は鈍化し、
2020年からは年平均成長率が2%台以下に低下するとの展望を示しています。
このため、経済再飛躍の鍵は労働投入増加にあると未来企画委員会は指摘しました。
複数国籍を許容し海外の優秀人材を誘致して、人口高齢化による
生産可能人口の減少に対応していくべきだとの主張をしています。
福祉支出急増で国の債務比率も2040年にはGDP対比110%まで
上昇すると未来企画委員会は展望しています。
財政支出増加に対する対策がなければ、財政健全性が危うくなるという指摘です。
既に、李明博政権は、多国籍の留学生を今積極的に大学に入れて、
奨学金などの手厚いサポートをしています。
実際、非常に今、アジアからの韓国への留学生が増えています。


■無規制、無関税障壁国へ変貌を

2点目として、未来企画委員会は2040年には朝鮮半島を
グローバル経済圏時代の中心地として飛躍させるという戦略を持っています。
グローバル経済圏とは、各国間の労働、商品、資本等の移動が
自由なグローバル経済空間をいうと定義しています。
朝鮮半島を「無規制、無関税、無言語障壁」の
国際経済自由地域へと変貌させるという計画です。
言葉が違っていても許容する、あるいは、英語を共通語にしていき、
国際経済自由地域を定着させようと考えています。
特に、埋立地セマングンを未来先端産業の中枢拠点として定着させ、
新しい文明の発生地として台頭することが出来ると展望しています。

この他に2040年に韓国は空港、港湾、鉄道、道路など
陸海空の国際交通網を基盤に世界的物流、旅客の中枢拠点(ハブ)として
飛躍できると未来企画委員会は見通しました。
特に、仁川国際空港は2040年には年間利用客が1億5000万人に増加し、
韓・中・日を中心に「東アジア1日生活圏」が定着すると期待を寄せています。


■韓国の国家長期ビジョンの評価

壮大なビジョンですが、李明博大統領が経済に明るい大統領であるので、
きちんとした裏付けがあると思います。
しかし、私の所感では、問題点も多いと思います。
2040年を展望した韓国の国家長期ビジョンは意欲的で、
このビジョンを実現するには、韓国の持つ今後の潜在成長能力
(ポテンシャルGDPの伸び)をどう見るかにかかっています。
潜在成長力は資本ストック(毎年の民間設備投資の累計額)と
労働力と要素生産性(技術革新力)の掛け算で決まるといわれています。

資本ストックは、民間企業(国内外企業)が
今後どの程度国内で設備投資を行うかということです。
韓国は国内市場が狭く輸出依存度が高いこともあり、
今後国内投資以上に海外直接投資が増加しそうです。
海外からの投資も呼び込まないと、外で投資しても、
経済成長率への寄与率が少ないので、外国からの
直接投資をどういった形で確保していくのかが問題です。

また、予想では1950年代以後ずっと増えてきた韓国の人口増加率が
2015年にはゼロに近づき、2020年以降「マイナス人口時代」を迎えます。
やはり、一番のネックは、労働力を確保できるのかということで、
多国籍の人をどんどん受け入れるといいますが、
具体的にどうやっていくのかというのかは見えません。

もう一つの問題は技術革新力です。
サムスンの李ゴンヒ前会長(近く会長に復帰といわれている)は
「韓国サンドイッチ論」韓国は下からは中国に追い上げられ、
上からは日本からの巻き返しを受け今後厳しくなるだろう。
と盛んに危機意識を唱えているように、自主技術、オリジナル技術、
世界標準となれる技術がまだほとんどありません。
この問題をどう解決するかがカギです。
労働力の頭打ちについて「複数国籍を許容し海外の優秀人材を誘致して」とあり、
現に李明博政権はアジアや世界の優秀人材の韓国誘致
(留学生の積極的受け入れ策)を推進中です。
また、通商貿易に関しては、「無規制、無関税障壁国へ変貌」を唱え、
自由貿易の促進を積極的に行いアジアのハブ機能の獲得も唱えています。


■日本のあるべき対応策


日本政府も6月19日に、新成長戦略を発表し、
「強い経済、強い財政、強い社会保障」の3本柱の実現を目指しています。
これらのうち、韓国の長期ビジョンに対応した部分でいえば、
日本も同じような課題があり、可及的速やかに手を打たなければなりません。

①人口問題では日本は韓国と同じように今後減少に転じます。
  国内の人材不足とどう補うか。
  やはり世界中の人材を呼び寄せなければなりません。
  純血主義にこだわらず雇用の国際化、人材の国際化を目指すべきです。

②また、通商国家としてアジアとの連携を強めることが大事です。
まずは日中韓トライアングル間のFTA(自由貿易協定)の締結を急ぎ、
EPA(Economic Partnership Agreement)を進めることが必要です。
企業が製品・サービスを売りやすい環境を作ることが大事で、
日中韓で連携して市場を開放することが必要です。
今後欧米は保護主義的な行動に出る可能性もあり、日中韓の関係強化を軸に
アジア地域との連携を強め、進化させることが必要です。

③法人税率引き下げと研究開発や投資分野での減税の実施による企業競争力強化

④環境・エネルギー分野等日本が強い分野でのアジアや
BRICs諸国との協力関係強化によるビジネスチャンスの取り込み
などを官民一体となって推進すべきです。

日本はこのような新成長戦略を出しましたが、
総花的で明確な柱が不明確な印象があります。
韓国、中国らの非常に力強い長期ビジョンに対して、
日本は活力ある成長を前面に出して、本気でやっていかないといけないと思います。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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