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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 郵政見直し (財務戦略/村藤 功)

郵政見直し (財務戦略/村藤 功)

10/07/23

衆議院の総務委員会では5月28日に審議6時間半の、
強行採決に近い形で郵政改革法案が可決されました。
当初は、7月の参院選直後に臨時国会を開いて、
郵政改革法案を速やかに通過させる予定でしたが、
最近では2010年9月の民主党代表選挙後に、
法案を審議する本格的な臨時国会を開催しようというよう動きになってきています。

今日は郵政の見直しについて郵政改革法案を中心にみていきたいと思います。


■日本郵政の財務状況
日本郵政グループの郵貯とか簡保の規模は縮小しています。
もともと小泉元首相が郵政改革に取り組んだ時から、
財政投融資を縮小するという方針があったため、
ピーク時には250兆円あった郵貯残高も、2010年3月末で約176兆円になっています。

亀井氏や国民新党は郵貯の残高が150兆円になると赤字に陥ってしまうため、
郵貯マネーの流失に歯止めをかけ残高をもっと増やしていこうと主張していますが、
150兆円という額は3大メガバンクの東京三菱やみずほ、三井住友の規模とほぼ同等です。
郵貯がメガバンクを上回る残高を更に増やしていこうというのは、
メガバンクが「規模が小さすぎるので利益が出ない」と言っているようなものです。

なぜこれからまた大きくしなければならないのか、理解できません。


■郵政改革法案の内容
郵政改革法案は色々な見直しが行われています。
現在、郵政事業持株会社の下に、郵貯、簡保、郵便事業、郵便局の4つの子会社があります。
今回の改革法案では、郵便事業と郵便局は事業持株会社へ統合されます。
もともと郵便事業や郵便局を分けることに重要な意味があったわけでもなく、
統合することによる財政投融資改革への大きな影響もないため、これは特に問題ありません。

また、郵政改革法案は郵便貯金の預け入れ限度額は、
現行の1000万円から2000万円へ引き上げようとしています。
一時は3000万円にしようという話もありましたが、民間の金融機関から、
自分の銀行の預金が流出してしまうという声に配慮して、2000万円で決着しました。

しかし、この限度額引き上げをみると亀井氏が、
財政投融資で大きな政府を作ろうとしているのではないかと思えてきます。
つまり、税金不足を補うために、赤字国債を発行して、郵貯や簡保を原資に国債を購入するという、
過去の政治の仕組みの再現ですが、これはもうやめてもらいたいと思います。

また、親会社は特別法を適用され、
郵便や金融サービスを全国一律に適用するよう義務付けられ、
同時に、住宅ローンや中小企業向け融資など金融業務は民間並みに自由化されます。
全国一律のサービスを提供それ自体は当然かもしれませんが、
全国1778市町村の中で、民間金融機関が存在しないのは16町村と全体の1%未満です。
ユニバーサルサービスだと大騒ぎしていわれていますが、
実態としては民間金融機関のサービスの行き届いていない場所はそれ程多くはありません。


■ゆうパック遅配騒動
そういう意味では、今回のゆうパック騒動は象徴的です。
当初、ゆうパックとペリカン便は2009年中に日本郵便の子会社のJPエクスプレスへ、
事業統合される予定でしたが鳩山邦夫元総務大臣の反対で当初の統合案は破綻しました。

結果として、2010年7月1日付で日本郵便がペリカン便を引き取るという事になりましたが、
お中元時に引き受けて対応ができず計34万個もの荷物が届かないという騒ぎになりました。
生鮮食料品のように遅配で駄目になってしまったものについては損害賠償するとのことですが、
一体何やっているのかという話です。

配達事業自体は民間企業でもできることです。
官業であるために失敗するということも色々あります。
なぜ日本郵政に官業として貯蓄、保険や配達の全てをやらせなければならないのか、
理由が分かりません。


■政府の出資比率
今回の改革法案で、政府が持株会社の株式を保有し、
持株会社が郵貯や簡保の3分の1以上を持つことになります。
連立与党のうち、国民新党と社民党は持株会社の保有について2分の1超を、
民主党は3分の1を主張していました。

議論の結果、民主党案に落ち着き、ある程度民主党は過去の経緯を尊重したことになります。
しかし、郵貯も簡保も最終的には完全に民営化するというのがそもそもの構想です。

郵貯の残高は減ったとはいえ約180兆円と、巨額に上ります。
郵政としては国債の購入だけでなく、中小企業に対する貸し出しや、
住宅ローンを展開したいと考えているようですが、
郵政にはこれらの事業についてのノウハウはありません。
新銀行東京で不良債権の山を築いて、都民の税金を投入したという過去の大失敗の例のように、
新規事業についてノウハウを持たない郵政に巨額のお金を任せて安心できるはずがありません。


■郵便局の金融業務
民営化する前は、郵便貯金法の中に郵便貯金に関する政府の支払義務が規定されており、
郵便貯金に対して政府保証が付いていました。
現在では、法的な支払い義務はありませんが、
政府が株式の3分の1以上を持っている政府関連機関で、
預金を返さないことがありうるのかというと疑わしいところです。
暗黙の政府保証が付いているのではないかと誰しも考えてしまいます。

加えて、郵政グループ内の取引にかかる消費税は免除されますから、
民間金融機関に対する不正競争であるとも取られかねません。
また、郵便局の金融業務にかかる金融庁の検査・監督は、
政府が持株会社の大株主となるため、簡素化されます。

ノウハウも少ない危なっかしい郵便局の監査を、
簡略化するということに意味があるとは思えません。
郵政の見直しについては、このまま進めるべきでない部分も多く、
注意深くみていかなければならないと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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