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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 人民元の変動 (財務戦略/村藤 功)

人民元の変動 (財務戦略/村藤 功)

10/07/16

■G20首脳会議と人民元
2010年6月19日に、中国の中央銀行である中国人民銀行は、
人民元の相場を弾力化すると発表しました。
これにより、6月26日、27日にカナダで開催されたG20首脳会議では、
為替相場についてのアメリカから非難をうけることもなく、
オバマ大統領と胡錦濤主席も穏やかなやり取りで会議を終えました。

中国は2008年の金融危機以降、人民元を1ドル6.83元に固定していました。
今回これを、ドルに対して元高で相場が推移する可能性を認めると、
人民銀行が表明したことになります。

日本もかつては1ドル360円という固定相場制を採用しており、
1973年に変動相場制に移行した後もドルに対して円安で推移していました。
これが1986年のプラザ合意で円高にシフトしたことにより、輸出の伸びが止まってしまいました。
現在の中国も日本と似たような状況で、
中国の経済成長は人民元安が影響しているという批判があります。
その人民元を強くして貿易黒字を減らすようにアメリカが圧力をかけているという状況です。


■人民元高の影響
日本は、1980年代後半に為替相場が円高にシフトして以降、
国内工場で製造した製品を輸出しても利益をあまり生み出せなくなったため、
中国やASEAN諸国といった海外に製造拠点を移す企業が増えています。

もし、同じように人民元が高くなってしまうと、
中国にある日本企業の製造拠点の競争力が少し弱まることになってしまいます。
こうなると、中国から他の国に工場を移転するという可能性も出てきます。

消費の面では、人民元が高くなることで、
中国の人たちが日本のものをより安いと思って買ってくれることになるため、
日本から中国への輸出が増えるということも考えられます。

また、最近、中国人に対するビザの発給要件が緩和されました。
人民元高との相乗効果で、たくさんの中国人旅行者が日本に来るということも予想されます。
今までは高年収でなければビザは発給されませんでしたが、
緩和により中所得の人の個人旅行も可能となりました。
日本国内でも中国からの旅行者をターゲットにしたツアーなど、
様々な企画が進んでおり、これから楽しみなところです。


■人民元の推移
1994年には人民元レートは30%切り下げられたというように、
人民元の推移には何度か大きな変化があります。

最近では、それまで1ドル8.28元に固定されていた人民元レートが、
2005年の7月から管理変動相場制に移行したという一大改革が行われました。
これにより、ドルやユーロ、円、香港ドル、イギリスポンドというような、
通貨バスケットを参考にして、為替相場を管理することになりました。

これが、2008年の金融危機以降、あまりに多くの国の経済が混乱したため、
中国の輸出産業への影響が懸念され、
バスケットを参考にするという管理変動相場制度を一度やめて、
人民元は1ドル6.83元に固定されました。

そして今回2010年6月の中国人民銀行の発表で、
このドルに固定するという緊急措置は取りやめとなり、バスケット制が復活したわけです。
バスケット制への復帰は、中国経済が2009年の秋頃から回復してきているということも影響しています。

とはいうものの、中国の輸出部門は必ずしも回復しているとはいえません。
特に対ヨーロッパ輸出が減少しています。
先日、ギリシャ危機についてお話ししましたが(2010年6月11日放送分)、
ユーロのレートはドル高ユーロ安で推移しています。
人民元はドルにリンクしてきたため、人民元高ユーロ安となりました。
結果として、ヨーロッパに対する中国からの輸出競争力が落ちてしまい、
これがヨーロッパに対する中国の輸出減の原因となっています。
今回、ドル固定をやめたことは、ユーロや円のような他の通貨に対しても、
ある程度は元相場が変動することになるため、
為替のバランスをより柔軟に取れるようになったといえます。


■海外への影響
人民元が切り上げになったことで、
中国の外から購入する場合には安く買えることになるため、
輸入中心産業にとっては有利になります。
日本でも円高になった時には、例えば海外から輸入した家具が安く買えるようになりました。

つまり、ある企業を輸入中心か輸出中心かということでみると、
輸入中心の企業は人民元高で得することになります。

また、人民元高ならば海外では現地通貨に両替してたくさん使えるということで、
より多くの中国人の海外旅行に出かけるようになります。
貿易黒字のため中国ではドルが余っている状況で、
中国の2010年3月末の外貨準備高は2兆4471億ドルと世界一です。
加えて、政府は人民元相場が急上昇しないようにするドル買い元売り介入しているため、
国内のカネ余りと不動産・株式バブルが発生することになります。
今まで中国人民銀行は外貨準備高の約7割をアメリカ国債等のドル資産で運用していましたが、
他のものにも色々使おうということで、分散運用しはじめました。


■ASEANと人民元
1997年の通貨危機まで、アジア通貨はドルや円と連動していましたが、
最近では、アジア通貨は人民元との連動性を高めています。
例えば、中国の製品とASEANの製品が競争することになった場合に、
ASEANの通貨と人民元がリンクしていれば、
ASEAN通貨高のためにASEAN製品が中国製品よりも売れないということも起こりにくくなります。
このように、産業競争力への為替動向の影響を弱くするために、
ASEAN諸国は人民元を前よりも意識しているといえます。

2010年には中国のGDPは日本のGDPを上回る見込みです。
いずれ中国のGDPがアメリカのGDPに追い付くという時代が来ることを考えると、
人民元もその存在感を増してきます。

長らく、中国政府は中国本土以外での人民元による決済を禁止してきました。
しかし、2009年以降、香港やマカオ、それから大都市の企業の貿易の支払については、
人民元での決済が認められるようになりました。

世界中で人民元を使って色々なことをするという機会がこれからどんどん増えてくることになります。
日本円は世界通貨になろうとしてうまくいきませんでしたが、
これから人民元が世界通貨へ近づいていくという局面を迎えているということだと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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