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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 中国の半導体産業の構造的課題(中国経済と産業/国吉 澄夫)

中国の半導体産業の構造的課題(中国経済と産業/国吉 澄夫)

10/07/14

■危機からの脱出が遅れた中国半導体産業

国際金融危機の影響で世界経済が大きく落ち込んだ中で、
2009年には中国経済の急回復がアジアや世界の景気回復を
牽引したという言い方がよくされますが、政府発動の景気刺激策によって、
中国経済のすべての分野がV字型に回復したわけではないのです。

今日取り上げる中国の半導体・集積回路の世界は、
危機からの脱出が一番遅れた分野です。
2009年中国の集積回路の市場は、他のエレクトロニクス産業が
軒並み高成長に回復したにも関らず、マイナス5%と、初めて対前年を下回りました。
それには、中国のIC産業の構造的問題があるからといえると思います。


■伸びない国産化比率

中国市場のICの市場規模は、2009年は5676億元(日本円約8.5兆円)
(対前年-5%)と減少したものの、世界市場における中国市場の比率は
2009年で38.6%と世界市場の3分の1以上を占めています。
ところが、世界の工場・中国における電子機器の生産が拡大する中で、
IC等基幹部品の供給の多くを中国外からの輸入品に頼っている構造になっています。
そのため、中国市場でのIC販売においては、製品別では
パソコン用、デジタル機器用(テレビやDVD)、通信用(携帯電話)などですが、
販売トップ10はCPU(パソコンの中央演算装置)を製造しているインテルを先頭に、
ほぼ外資系企業に占められており、唯一「中国系」と呼ばれるのは
台湾の(MediaTek)というデジタルICのメーカーが販売シェア第8位に
入っていますが、中国の地場の企業はトップ10に入っていません。

一方、販売に対して生産は、というと、インテルや韓国のハイニックスなどの
外資系企業と並んで、SMICやTSMCなど台湾系半導体メーカー、
華虹NECなど中国地場メーカーも存在感を高めていますが、
国産製品の占める比率は、市場の需要の20%前後ですから、
5~7年前とほとんど変わっていません。
市場は成長しているのですが、中国企業がその成長に、
なかなか追いついていけていないようです。

つまり、中国国内で生産される電子機器向けのICの供給能力が
不十分なため、必要なICの80%が海外から輸入され、
国内電子機器メーカーで実装されて“made in China”として出荷されている訳です。


■IC回路設計産業の育成強化

こうした構造は今に始まったことではなく、10年前に
中国が「世界の工場」と言われ始めた頃から変わっていません。
中国の政府の上の方は、「世界の工場」といわれていることに対しては、
必ずしも、潔しとしているわけではなく、
何とかして基幹部門の産業力をつけさせようとしています。
政府の情報産業部門は、原因が半導体の前工程生産と回路設計の
ソフトウェアの弱さにあるとみて、2000年に「18号文件」と呼ばれる
国産化優遇政策を打ち出したのですが、自国半導体産業にとって
不利と見た米国が、「外国メーカーに不公平な法令である」として、
WTOへ訴訟したため、2004年に法令自身が廃止に追い込まれました。
現在、中国政府は見直し法令を準備中と言われますが、
「回路設計」の力を中国企業がどう付けるか大きな課題です。

中国半導体行業協会のトップの人が電子専門紙でこう語っています:
(政府で様々な要職を経験した人が、協会のトップになっています。)

「我が国IC産業は大きな困難に直面しているが、その主要な原因は、
中国のIC産業が国外への依存度が高く、核心技術、投資、注文など
海外に頼っていることである。この数年の核心技術とキー設備は
みな輸入であり、製造と組立テストの約80%の加工注文は国外から。
またIC投資の約80%が海外からである。
さらに国内IC製品の需給の80%以上、特にハイエンドICの
ほぼすべてを輸入に頼っている一方で、多くの製造、組立テスト企業が
国外からの中低級IC製品の受託製造・組立テストを主としている。
こうした状況は出来るだけ早く変えなければならない。」

氏はこうした状況の打開のために、IC設計産業の
政策的な強化の必要性を強調しています。
即ち、「中国半導体業界は自主創新能力が低いため企業規模は小さく、
IC回路の科学研究、生産、応用、市場のバランスの取れた結合と
発展が政策的に必要」とし、既存のIC設計専門企業の育成と並んで、
通信や家電の電子完成品大型企業にIC回路設計への参入を強く推奨しています。

昨今、華為(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)、海爾(ハイアール)、
海信(ハイセンス)、長虹(チャンホン)等の大手企業が、
内部にIC回路設計部門を設立し始めているのも
こうした構造的課題解決への動きだろうと思います。

分野: 国吉澄夫教授 |スピーカー:

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