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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 社会人は経済経営をどう勉強すればいいか(1)(経営学/久原正治)

社会人は経済経営をどう勉強すればいいか(1)(経営学/久原正治)

10/07/12

歴史的見方の枠組みを身につける

今日は、リスナーの社会人にぴったりの内容かもしれません。
社会人は、経済経営をどう勉強すればいいかというテーマです。
私自身、社会人から研究者という形で経済経営を研究していて、
社会人に必要な重要なことが2つあるので、それを1つずつお話します。

まず1つは、社会人は、世の中を見るのに、自分の歴史的見方の枠組みを
是非身に付けて欲しいということです。
これは現在起きていることは、よく見てみると
必ず同じようなことが過去に起きているということです。
過去に何故そういうことが起きて、それがどうなって、
その背景に何があったかということをきちっと頭で考えておけば、
これから起きることについても、ちゃんとしたサラリーマン、
あるいはウーマンとしての見通しができるということの重要性です。

具体的に、まず最初に夏目漱石が考えていたことをお話しします。
これは今から150年くらい前のことですが、漱石は
日本が、これからどうやって西洋の中で生きていくのかということを考えていました。
日本は安普請国家であるが、その中で、自分は、
英文学という訳の分からないものを勉強しなくてはいけない、
本来自分は日本の江戸文化の中で育ったのに、
この英語をやらないと日本では生きていけないと考えました。
150年前の文明開化当時、多くの人は、何でも西洋で起きていることは進んでいて、
それを勉強しなくてはいけないということを、いわれていました。
彼自身、英文学を勉強しろといわれたけど、自分は日本人なのに、
何で英文学を勉強するのかということで随分悩みました。
それでイギリスに留学に行って、ノイローゼになってしまいました。

その中で彼が分かったことは、自分はやっぱり日本人であるから、
日本人としての自立的な思考を持った上で、外から何か持ってくるのだったら、
それをきちっと自分の中に入れて理解して出して行けばいいということです。
つまり彼の言葉を借りれば、『西洋人ぶらなくても良いという、
動かすべからざる理由を、立派に皆の前に投げ出せばいい』ということです。
これは彼が悩んだ末に気が付いたことで、それを彼の文学の中で表していったのです。
つまり、『日本人が皆、西洋、西洋といって、人の借り着をして威張っていても、
実は非常に不安で仕方がない』という日本の運命を、彼は150年前に見抜いていたということです。
西洋人ぶらないといいながらも、我々は恩恵も受けていたりするので、
それが今の問題につながっているわけです。
こういうことで、まず歴史的な見方の第一には夏目漱石があると思います。

2番目に、日本は一体どのようにして先進国になったのかを考えた、
大野健一さんという開発経済学の学者の人がいます。
この人が、有斐閣から「途上国日本の歩み」という本を出だしていますが、
日本は、海外のものを模倣したのですが、それをうまく日本のコアに
あるものに適合させて発展してきたということを非常に分かりやすく書いてあります。
彼のポイントは、日本は教育と柔軟性で色んなことを
翻訳的に取り入れていったということです。
これはまさに日本のことをよく理解できる1つの歴史の考え方でしょう。

日本は延々と西洋から入ってきたものを、
うまく日本文化、日本の習慣に溶け込ませてきました。
シンガポールには、ラーメン屋、カレーライス屋、豚カツ屋などの
日本食専門店がありますが、ラーメンは中国のもの、
カレーライスはインド人のもので、豚カツは、
カツレツだからフランスのものです。
どうしてこれらを日本食として食べているかといったら、
日本がオリジナルを越えたものに作り変えたからでしょう。
それを日本食としてアジアの人が食べているということです。
日本の強みはそこにあることが、大野健一さんの
歴史の考え方をみるとよく分かります。
これからも日本は外から何か取り入れていきますが、
それを日本の中でもっと優れたものとして
外に出していく能力というのは絶対あるでしょう。

次に3番目に、時代は戦後に移っていきますと、中公新書のベストセラーで、
猪木武徳さんという京都大学の先生が、「戦後世界経済史」という本を書いています。
そこで猪木さんが言うポイントは、
日本の歴史には、第一にマーケットと公共部門とのバランスがあるということです。
どっちに振れてもまずいので、うまくマーケットと公共部門と
バランスさせるということが大事だということを言っています。
第二に、その中で日本の土壌に合うマーケットの制度をどのように設計し、
その制度の中で日本人同士の信頼をどう築き上げるのかを論じています。
その2つが、戦後の世界経済史の中で日本を見た時に重要な点だと言っています。

最後に、ここ20数年くらいの歴史を見ていくと、
ITが台頭してきて、経済の世界は随分変わりました。
ここで大事なのは、野口悠紀雄という人は全く変わらずに、
ITと金融革命だといっていることです。
金融革命がサブプライム危機以降、世界の経済を駄目にしたと言われていますが、
根幹のところでは情報革命と金融革命が、21世紀の世界をリードしていくことに
変わりはなく、なぜITという仕組みが出てきて、それをうまく活用できる国が
脱工業化の中で発展していったか、そして金融をうまく使う国が、
経済を支える金融という役割を非常に改革していったかを
彼は歴史的に分析しています。ただそれがいき過ぎたところで
失敗というのは生じていますが、ベースのところは変わらず、
ITと金融がきちんと理解されるためには、国として
一番大事なのは教育投資だということを論じています。
野口さんは、日本が戦後の経済成長で思い上がって、
そういう教育投資を怠ってしまったことが問題だといっています。

この4人の先人の日本の歴史の見方は大変に勉強になります。

分野: 久原正治教授 |スピーカー:

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